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プレスリリース 発行No.1250 令和4年11月14日

東邦大学メディカルレポート
大腸がんの治療と仕事の両立
~ がんの治療と働くことの両立をどう捉えて取り組んでいくか ~

 東邦大学医療センター大橋病院外科(目黒区大橋、診療部長:斉田 芳久教授)、及びがん相談支援センターでは、がん患者さんそれぞれの状況・希望に合わせた診療を心がけつつ、できる限りダメージの少ない安全で低侵襲な治療に取り組むとともに、患者さんが治療と仕事を両立させて社会生活に復帰するためのサポートを行っています。
 当レポートでは、大腸がんの特徴や治療法とともに、治療と仕事を両立させていくために知っておきたい制度や手続きなどについてわかりやすくお伝えします。

1.大腸がんについて

 国立がん研究センターの統計によれば、大腸がんは部位別の罹患者数(2019年)で、男性では前立腺がんに次いで2位、女性では乳がんに次いで2位と、罹患者数の多いがんです。年齢的には40歳代から顕著に増えはじめ、年齢の上昇と共に大きく増えていく特徴があります。また、死亡者数(2020年)は男性で3位、女性では1位で、死亡者数が多いのも特徴です。
 一方、大腸がんの5年相対生存率はがんのステージによって大きく異なり、「がんの統計2022」によれば、ステージⅠでは98.8%、同Ⅱでは90.9%、同Ⅲでは85.8%、同Ⅳでは23.3%となっています。すなわち、大腸がんは早期に発見し、早期に適切な治療を行うことによって生存率を大きく高めることができるということが言えます。

2.早期大腸がんの診断・治療と社会復帰

 大腸がんの初期は、腸の正常粘膜の一部がいぼ状に盛り上がり、大腸の内側の空間部に突出した線種(ポリープ)として認識されます。この初期の小さな大腸ポリープはほとんどの場合自覚症状がありません。従って、大腸がんになる可能性のあるポリープを早期発見するためにはがん検診を受けること、さらには内視鏡による診断を受けることをお勧めします。
 内視鏡による診断で早期の大腸がんであることが分かった場合は、内視鏡による切除手術を行います。早期であれば、日帰りもしくは数日の入院の後およそ1週間程度の安静を必要としますが、後遺症もなく以前の社会生活に戻ることが可能です。

3.進行した大腸がんの治療・副作用と社会復帰

 進行した大腸がんの場合は、状態によって内視鏡手術、腹腔鏡手術もしくは開腹手術でがんの部位を切除します。入院期間は、手術を含めて1~2週間です。この手術後の社会生活への復帰については、結腸がんの場合には生活・就労での制限はほぼありません。直腸がんの場合は、排便機能障害や排尿機能障害を伴うため、しばらくの間はトイレの近くで仕事をするなどの配慮が必要です。
 さらに進行した大腸がんの場合は、がんの深さ、リンパ節への転移、がんの侵襲度、がんの組織型などから検討した最終的なステージ診断に応じて化学療法を行います。これは薬物を投与することによって行うもので、術後の再発予防(原則6か月)を目的とするものと、切除不能な進行再発大腸がんに対するがんの縮小と進行抑制を目的とするものがあります。
 化学療法は治療の影響が全身に及ぶことから「全身療法」ともいわれ、副作用が伴います。主なものは、抗がん剤療法による軟便下痢・嘔気嘔吐などの消化器症状、味覚嗅覚障害・食欲不振、口内炎、脱毛、血球減少・肝機能障害、末梢神経障害など、及び分子標的薬療法による手足・顔・全身の皮膚障害、血圧上昇などです。
 化学療法による副作用は個人差が非常に大きいためその内容と程度によりますが、基本的に日常生活における物理的・精神的な不具合を伴いますので、予め副作用の種類を知って準備をしておくこと、及び、仕事内容の変更や有給休暇の活用などによる身体への負担の軽減、あるいは勤務形態の変更などを行いながら、徐々に社会生活に適応していくような工夫をすることが望まれます。

 いずれにしても、就労を続けることによる社会生活の継続は生きがいにもつながり、また最も良いリハビリにもなりますので、患者さん本人はもとより、家族や職場の細やかな支援が望まれます。

4.職場への復帰

 がんの治療後、あるいは治療を受けながら職場に復帰するために知っておきたいこと、知っておくと役に立つことについて順を追ってお伝えします。

  1. 利用することができる公的制度は以下のようなものです。
    • 医療費を抑えたい場合
      高額療養費制度、高額介護合算療養費制度、限度額適用認定証、国民健康保険の一部負担金の減免・免除制度、医療費控除(税務署)
    • 医療費を借りたい場合
      高額医療費貸付制度(協会けんぽ)、高額療養費資金貸付制度(国民健康保険)
    • 生活費を借りたい場合
      生活福祉資金貸付制度(社会福祉協議会)
    • 休職中で働けない場合
      傷病手当金(健康保険)
    • 失業して求職中
      基本手当(雇用保険)
    • 日常生活に支障がある場合
      障害年金(国民年金、厚生年金)、身体障害者手帳
  2. 働く者としての権利を知っておくことが大切です。就業時間・休憩時間・休日・賃金の決定方法・支払い時期・解雇を含む退職に関する事項などは、就業規則に記載されています。また、労働契約期間・就業場所・業務内容などは、労働条件通知書に記載されています。更に雇用契約書を確認することが大切です。
  3. 労働時間を柔軟にする制度は以下のようなものです。
    時差出勤制度・短時間勤務制度・フレックスタイム制度・在宅勤務(テレワーク)・時間単位/半日単位の年次有給休暇などを取得して、身体への負担を軽減します。また、休職制度を利用することもできますので、制度を調べて知っておくことが大切です。
 以上の制度を利用し仕事を続けていくためには、休職中でも会社と定期的に連絡を取り、現状を報告するとともに、体調のことや復職への意志などを伝えることを続けていくことが大切です。

5.キャリアチェンジ

 転職によってより働きやすい環境を得ることも大切です。ハローワークでは、専門相談員(就職支援ナビゲーター)による下記のような就労支援が受けられます。
  • 求人検索(自己検索)
  • 職業紹介
  • 履歴書・職務経歴書の添削
  • 就職活動関連の講座(教育訓練給付金制度)
  • 職業訓練の相談・申し込み(公共職業訓練・求職者支援訓練)

 以上の他にも、治療で不安なことや治療費のことなどで分からないことや知りたいことがある場合は、病院のがん相談支援センターなどを活用していくことをお勧めします。

以上

お問い合わせ先

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