プレスリリース 発行No.1202 令和4年5月9日
フランス産と同種とされていた日本のカタツムリダニが新亜種に
~ 沖縄本島産と九州以北産で別の亜種として命名 ~
~ 沖縄本島産と九州以北産で別の亜種として命名 ~
東邦大学の脇 司講師と自然環境研究センターの元陳 力昇博士、信州大学の浅見 崇比呂教授、法政大学の島野 智之教授の研究グループが、カタツムリダニの1種ダイダイカタツムリダニの日本産2亜種を報告しました。
論文は、「Systematic and Applied Acarology(ISSN: 13621971 )」で2022年5月に発表されました。
論文は、「Systematic and Applied Acarology(ISSN: 13621971 )」で2022年5月に発表されました。
発表者名
脇 司(東邦大学理学部生命圏環境科学科 講師)
島野 智之(法政大学自然科学センター 教授)
島野 智之(法政大学自然科学センター 教授)
発表のポイント
- ダイダイカタツムリダニはカタツムリやナメクジに寄生するダニの一種で、1986年にフランスで新種として記載され、日本では、その32年後の2018年に採集が報告された。フランスから日本にかけて広く分布すると考えられ、カタツムリ専門の寄生虫としては最大級の分布の広さを持つ。
- 広く分布する生物種は地域ごとに形態が異なり、特に地理的に隔離された場所では亜種となることがある。
そこで、研究グループが日本全国の様々な場所からダイダイカタツムリダニの標本を集めて形態を精査したところ、フランス、沖縄本島、九州以北のダニ間で形態に微小な差異が認められて区別されることがわかり、これらの日本に分布するものを2つの新亜種「ニホンダイダイカタツムリダニ」「リュウキュウダイダイカタツムリダニ」として命名した。 - 今回発見した2つの亜種は、島国の日本で大陸のものから独自に分化した可能性が高いとみられる。
発表内容
ダイダイカタツムリダニ(学名:Riccardoella reaumuri)は、体長0.5 mmほどの小さなダニの一種です(図1)。様々な種類の陸貝(カタツムリやナメクジ)の肺や体表に寄生して生活し(図2)、人に寄生することはありません。このダニは、フランスのカタツムリから1986年に初めて報告されました。その後、2018年以降に日本の沖縄から同種として発見され、更にその後の調査で沖縄から北海道にかけて広く分布することが分かりました。このように、本ダニ種はフランスから日本まで分布し、陸貝専門の寄生虫としては最大級の分布域を有する種の一つと考えられています。
一方、移動能に乏しい生物種が広く分布する場合、それぞれの地域で地理的な変異が蓄積し、特に隔絶された島では亜種になりやすいことが知られています。陸貝は水平移動能に乏しいため、長い距離を移動することも海を渡ることもできません。ダイダイカタツムリダニも体が微小な寄生虫ですので、自分で長い距離を移動することはできないと考えられます。そこで研究グループは、移動能に乏しいこのダニで、フランスと日本列島のものが全く同じとは考えにくいとして、各地域のダニ個体の形態を詳しく調べて比較しました。その結果、微小な剛毛の形態や、体のサイズが地域によって異なることが分かりました。これに基づき沖縄本島と九州以北のものがそれぞれ亜種として「リュウキュウダイダイカタツムリダニ」と「ニホンダイダイカタツムリダニ」と命名されました(図3)。
世界には8種のカタツムリダニが分布し、そのうち本種を含む4種が世界的に分布していますが、地域ごとの微小な形態を見分けて亜種とした研究は今回が世界で初めてです。今回の亜種の発見は、世界的に分布するような生物種であっても、大陸から海で隔てられた日本列島のものには何かしらの差異があることの証左であり、同時に日本国内の生物多様性の理解が世界的にみて重要であることの証拠です。生物多様性の重要度は、寄生虫であっても変わらないものと言えます。
一方、移動能に乏しい生物種が広く分布する場合、それぞれの地域で地理的な変異が蓄積し、特に隔絶された島では亜種になりやすいことが知られています。陸貝は水平移動能に乏しいため、長い距離を移動することも海を渡ることもできません。ダイダイカタツムリダニも体が微小な寄生虫ですので、自分で長い距離を移動することはできないと考えられます。そこで研究グループは、移動能に乏しいこのダニで、フランスと日本列島のものが全く同じとは考えにくいとして、各地域のダニ個体の形態を詳しく調べて比較しました。その結果、微小な剛毛の形態や、体のサイズが地域によって異なることが分かりました。これに基づき沖縄本島と九州以北のものがそれぞれ亜種として「リュウキュウダイダイカタツムリダニ」と「ニホンダイダイカタツムリダニ」と命名されました(図3)。
世界には8種のカタツムリダニが分布し、そのうち本種を含む4種が世界的に分布していますが、地域ごとの微小な形態を見分けて亜種とした研究は今回が世界で初めてです。今回の亜種の発見は、世界的に分布するような生物種であっても、大陸から海で隔てられた日本列島のものには何かしらの差異があることの証左であり、同時に日本国内の生物多様性の理解が世界的にみて重要であることの証拠です。生物多様性の重要度は、寄生虫であっても変わらないものと言えます。
発表雑誌
-
雑誌名
「Systematic and Applied Acarology」
論文タイトル
Two subspecies of the snail mite Riccardoella (Proriccardoella) reaumuri Fain & van Goethem, 1986 (Acari, Prostigmata, Ereynetidae) from Japan
著者
Tsukasa Waki, Risho Motochin, Takahiro Asami, Satoshi Shimano.
DOI番号
10.11158/saa.27.5.2
アブストラクトURL
https://doi.org/10.11158/saa.27.5.2
添付資料
図1.ニホンダイダイカタツムリダニ。静岡県産。スケール:0.1 mm。
図2. ハコネマイマイの体表面に寄生したニホンダイダイカタツムリダニ。
図3.フランス産のダイダイカタツムリダニと、日本国内の新亜種の形態の主な違い。
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学理学部生命圏環境科学科
講師 脇 司
〒274-8510 千葉県船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1653
E-mail: tsukasa.waki[@]sci.toho-u.ac.jp
URL: https://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/env/synecology/index.html
【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 東京都大田区大森西5-21-16
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