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プレスリリース 発行No.1201 令和4年5月9日

心房細動の原因となる催不整脈性基質の形成過程を解明

 東邦大学薬学部の高原章教授および田中光教授らの研究グループは、トーアエイヨー株式会社との共同研究において、容量負荷を慢性的に心房に与えることを可能とする動静脈瘻モデルラットを用い、心房細動の原因となる催不整脈性基質の形成過程を明らかにしました。この研究成果は、雑誌「Biological and Pharmaceutical Bulletin」にてFeatured Articleとして推薦され、2022年5月1日に掲載されました。

発表者名

相本 恵美  (東邦大学薬学部薬物治療学研究室 助教)
八木 啓太  (東邦大学薬学部卒業生)
江沢 亜耶  (東邦大学薬学部卒業生)
恒岡 弥生  (東邦大学大学院薬学研究科修了生)
熊田 幸平  (トーアエイヨー株式会社)
長谷川 健志 (トーアエイヨー株式会社)
久世 哲郎  (トーアエイヨー株式会社)
千葉 俊樹  (トーアエイヨー株式会社)
永澤 悦伸  (東邦大学薬学部薬物治療学研究室 講師)
田中 光   (東邦大学薬学部薬物学教室 教授)
高原 章   (東邦大学薬学部薬物治療学研究室 教授)

参考

  • 心房に対する血行力学的負荷は、心房細動の発症や持続化に関連すると考えられていますが、その発症に至る経過の詳細は十分に明らかにされていません。
  • 本研究では、腹部大動脈-静脈シャント(AVS)手術により慢性的な容量負荷を与える手法を心房細動研究に応用し、心房の解剖学的、分子生物学的および電気生理学的特性の変化と心房細動の持続性の関係を調べました。
  • 実験結果より、慢性容量負荷8週目から12週目の間に生じる心房リモデリング(注1)が催不整脈性基質の構築に重要な役割を果たしていることが明らかとなり、その過程において心房の電気生理学的な変化は構造的な変化が生じた後に起こることが示されました。
  • これらの発見は、慢性容量負荷による催不整脈性基質の構築プロセスに関する重要な知見を提供します。

発表概要

 心房細動は最も一般的な持続性上室性不整脈であり、そのリスク因子として高血圧、弁膜症および心不全などがあります。これら心疾患による心臓への血行力学的過負荷は、心房に構造的・電気生理学的な変化(心房リモデリング)を生じ、心房細動の発症や持続化を引き起こすと考えられています。しかしながら、その発症に至る経過の詳細は十分に明らかにされていません。本研究では、心房の構造的な変化は慢性容量負荷8週目から明確に現れますが、心房細動が持続化するまでには12週間の容量負荷期間が必要であることを明らかにしました。さらに、慢性容量負荷8週目から12週目の過程においてイオンチャネルの遺伝子発現の制御方向が逆転するとともに、ダイナミックな電気生理学的変化が生じることを明らかにしました。これらの知見は、慢性的な容量負荷による心房の構造的変化は電気生理学的変化に先行して引き起こされ、8週目から12週目の間に生じる電気生理学的な変化を中心とした心房リモデリングが、心房細動の原因となる催不整脈性基質の構築に重要であることを示しています。

発表内容

 心房に対する血行力学的負荷は、心房細動の発症や持続化に関連すると考えられています。本研究では、腹部大動脈-静脈シャント(AVS)手術により慢性的な容量負荷を与えた動静脈瘻モデルラットにおいて、リモデリングされた心房の解剖学的、分子的生物学的、電気生理学的な特性の変化を検討しました。
 in vivo実験では、AVS作製12 週後(AVS-12W)にP波幅、PR間隔およびQRS間隔などの心電図パラメータの著しい変化と心房有効不応期の延長が認められたが、術後8週(AVS-8W)では明らかな心房および心室の肥大が生じているにもかかわらず、心臓電気生理学的変化は観察されませんでした。これに加えて、高頻度刺激により誘発した心房細動の持続時間は、正常ラットおよびAVS-8W ラットに比べてAVS-12Wラットの方が有意に長かった。単離心房筋では、活動電位持続時間(APD90)が正常ラット群に比べてAVS-12W群で長かった。また、右心房のKvおよびKirチャネルのmRNA 発現量は、そのほとんどがAVS-8Wラットで増加していた一方で、AVS-12Wラットでは減少していました。
 これらの結果は、腹部大動脈-静脈シャントによる慢性的な容量負荷が、ラット心房に催不整脈性基質を与えることを示しています。また、AVS-8WとAVS-12Wの右心房における遺伝子発現の違いは、不整脈誘発性の獲得に寄与している可能性があります。

発表雑誌

    雑誌名
    「Biological and Pharmaceutical Bulletin」(2022 年5月1日) 45巻5号、635-642

    論文タイトル
    Chronic volume overload caused by abdominal aorto-venocaval shunt provides arrhythmogenic substrates in the rat atrium

    著者
    Megumi Aimoto, Keita Yagi, Aya Ezawa, Yayoi Tsuneoka, Kohei Kumada, Takeshi Hasegawa, Tetsuo Kuze, Toshiki Chiba, Yoshinobu Nagasawa, Hikaru Tanaka, Akira Takahara*

    DOI番号
    10.1248/bpb.b22-00031

    アブストラクトURL
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/bpb/45/5/45_b22-00031/_article/-char/ja

用語解説

(注1)心臓リモデリング
心臓に対する圧負荷や容量負荷により生じる心筋の構造的・機能的な変化であり、心筋組織では線維化が進行して心肥大や心拡大が生じる。心不全や不整脈といった病態の発症に関与する。
以上

お問い合わせ先

【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学薬学部薬物治療学研究室
教授 高原 章

〒274-8510 船橋市三山2-2-1
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FAX: 047-472-1188

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