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プレスリリース 発行No.1190 令和4年2月22日

生理活性脂質である血小板活性化因子(PAF)が
膀胱平滑筋を強力に収縮させることを発見
~ PAFは過活動膀胱の原因物質の1つとなる可能性がある ~

 東邦大学薬学部薬理学教室の田中芳夫教授らの研究グループは、生理活性脂質である血小板活性化因子(PAF)がPAF受容体を刺激し、膀胱平滑筋を強力に収縮させることを発見するとともに、PAFの合成・分解システムが膀胱組織に存在する可能性を明らかにしました。この研究成果は、雑誌「Scientific Reports」に2022年2月17日に掲載されました。

発表者名

劉 鴿(東邦大学大学院薬学研究科 医療薬学専攻 博士課程1年)
小原 圭将(東邦大学薬学部薬理学教室 講師)
吉岡 健人(東邦大学薬学部薬理学教室 助教)
田中 芳夫(東邦大学薬学部薬理学教室 教授)

発表のポイント

  • 血小板凝集や炎症/アレルギー反応に関与する生理活性脂質である血小板活性化因子(PAF)については、近年、喫煙によりPAFが膀胱の微小血管内皮細胞や上皮細胞で蓄積することが報告されており、下部尿路疾患の発症に重要な役割を果たす可能性が指摘されていましたが、膀胱平滑筋に対する作用はこれまでのところ、検討されていませんでした。
  • 本研究では、PAFがPAF受容体を刺激することで膀胱平滑筋を強力に収縮させるとともに膀胱平滑筋の自発性収縮活動を亢進させることを世界で初めて発見しました。また、RT-qPCR(注1)を用いた検討から、PAFの合成・分解システムが膀胱組織に存在する可能性を明らかにしました。
  • 本結果は、PAFが膀胱平滑筋の収縮性を制御する内因性の生理活性脂質である可能性が高く、過活動膀胱(OAB)(注2)などの下部尿路疾患を引き起こす原因物質の1つとなる可能性を示します。

発表概要

 血小板活性化因子(PAF)は、血小板を凝集させる物質として発見された生理活性脂質です。その後の研究から、PAFは、白血球の活性化作用や血管透過性の増加作用を有し、炎症やアレルギー反応に関与することが明らかとなりました。また、PAFは呼吸器、消化器、生殖器に存在する平滑筋を収縮させる効果や、血管平滑筋を血管内皮細胞依存的に弛緩させる効果も報告されています。近年、喫煙によりPAFが膀胱の微小血管内皮細胞や上皮細胞で蓄積することが報告されており、下部尿路疾患の発症に重要な役割を果たす可能性が指摘されています。ただし、膀胱平滑筋に対するPAFの作用はこれまでのところ、検討されていませんでした。そこで、東邦大学薬学部薬理学教室の研究グループは、膀胱平滑筋に対するPAFの効果を検討するため、モルモット及びマウスから摘出した膀胱平滑筋の基礎張力及び自発性収縮活動に対するPAFの効果を検討しました。その結果、PAFがPAF受容体を刺激することでモルモットとマウスの膀胱平滑筋を強力に収縮させるとともに膀胱平滑筋の自発性収縮活動を亢進させることを世界で初めて発見しました。また、RT-qPCR(注1)を用いた検討から、PAFの合成・分解システムが膀胱組織に存在する可能性を明らかにしました。これらの知見は、PAFが膀胱平滑筋の収縮性を制御する内因性の生理活性脂質である可能性を示すとともに、過活動膀胱(OAB)(注2)などの下部尿路疾患を引き起こす原因物質の1つとなる可能性を示します。

発表内容

 研究グループは、マグヌス法(注3)を用いてモルモット及びマウスから摘出した膀胱平滑筋の基礎張力及び自発性収縮活動に対する血小板活性化因子(PAF)の効果を検討しました。PAF(10−9–10−6 M)は、モルモット及びマウス膀胱平滑筋の基礎張力及び自発性収縮活動の振幅と頻度を濃度依存的かつ強力に増強しました。モルモット及びマウス膀胱平滑筋の収縮活動に対するPAF(10−6 M)の増強効果は、PAF受容体拮抗薬であるapafant(モルモット:10−5 M;マウス:3×10−5 M)の前処理によって強力に抑制されました。また、PAFの合成・分解システムが膀胱組織に存在する可能性を明らかにするため、RT-qPCR(注1)を用いて、モルモット及びマウスの膀胱組織におけるPAF受容体、PAF合成酵素(リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ、LPCAT)、PAF分解酵素(PAFアセチルヒドロラーゼ、PAF-AH)のmRNA発現量を調べたところ、PAF受容体(Ptafr)、LPCAT(Lpcat1、Lpcat2)、PAF-AH(Pafah1b3、Pafah2)のmRNAがモルモット及びマウスの膀胱組織で検出されました。これらの結果は、PAFが膀胱組織で合成・分解され、PAF受容体を介して膀胱平滑筋の収縮性を制御する内因性の生理活性脂質である可能性を示すものであり、過活動膀胱(OAB)(注2)などの下部尿路疾患を引き起こす原因物質の1つとなる可能性を示します。



発表雑誌

    雑誌名
    「Scientific Reports」(2022年2月17日)
    12巻、2783

    論文タイトル
    Platelet-activating factor (PAF) strongly enhances contractile mechanical activities in guinea pig and mouse urinary bladder

    著者
    Ge Liu, Mizuki Kaneko, Kento Yoshioka, Keisuke Obara, Yoshio Tanaka

    DOI番号
    10.1038/s41598-022-06535-7

    アブストラクトURL
    https://www.nature.com/articles/s41598-022-06535-7

用語解説

(注1)RT-qPCR法
定量的逆転写PCR法。組織や細胞での遺伝子(メッセンジャーRNA(mRNA))発現レベルを定量的に測定することができる。ウイルスの検査にも用いられる。

(注2)過活動膀胱(OAB: overactive bladder)
過活動膀胱は蓄尿機能障害(膀胱に尿が貯められなくなる病気)の一つであり、尿意切迫感や場合によっては尿失禁を引き起こすことで患者のquality of life(QOL)を大きく低下させる。日本では、40歳以上の8人に1人が過活動膀胱の症状を有しており、その患者数は1000万人以上と推定されている。

(注3)マグヌス法
生体と類似した環境を維持するために、加温・通気した生理緩衝液中で平滑筋の収縮反応を記録する方法。

添付資料

図1. 本研究成果の概要
以上

お問い合わせ先

【研究に関するお問い合わせ】
東邦大学薬学部薬理学教室
講師 小原 圭将

〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1331 
FAX: 047-472-1435
E-mail: keisuke.obara[@]phar.toho-u.ac.jp

【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部

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