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プレスリリース 発行No.1167 令和3年11月8日

ぺロニー病の発症はABO式血液型と関係があることが明らかに 
~ 最もかかりやすい血液型はO型 ~

 東邦大学医学部泌尿器科学講座の三井要造講師らの研究グループは、ABO式血液型の違いがペロニー病(形成性陰茎硬化症)のかかりやすさに関連することを、世界で初めて明らかにしました。ペロニー病は、陰茎に発生するしこりによって勃起時に屈曲や痛みを生じる良性の病気であり、原因は現在まで明らかになっていません。本研究結果は、ペロニー病の病因解明の糸口となるだけでなく、ペロニー病の予防にも繋がることが期待されます。この成果は2022年1月1日に雑誌「The World Journal of Men’s Health」にてオンライン発表されます。なお、現在Forthcoming Articleとして2021年11月3日から先行公開されております。

発表者名

三井 要造(東邦大学医学部泌尿器科学講座 講師)
小林 秀行(東邦大学医学部泌尿器科学講座 准教授)
山辺 史人(東邦大学医学部泌尿器科学講座 講師)
中島 耕一(東邦大学医学部泌尿器科学講座 教授)
永尾 光一(東邦大学医学部泌尿器科学講座 教授)

発表のポイント

  • ABO式血液型の違いによってペロニー病のかかりやすさが異なることを、日本人のペロニー病患者を対象とした調査によって明らかにしました。
  • O型は最もペロニー病になりやすく、一番なりにくいB型と比べてオッズ(注1)が2.02倍になることがわかりました。
  • 本研究結果はペロニー病の病因解明に貢献するだけでなく、自身のリスクを知ることで、ペロニー病の予防に繋がることが期待されます。

発表概要

 ペロニー病は陰茎の屈曲や痛みを生じ、進行すると性交障害を引き起こす病気であるため、予防や早期発見が重要です。ペロニー病の危険因子として生活習慣病や喫煙歴が指摘されていますが、これまでペロニー病に関連する遺伝的要因はほとんどわかっていませんでした。東邦大学医学部泌尿器科学講座の三井要造講師らの研究グループは、ABO式血液型の分布に関してペロニー病患者202例と対照者846例の比較を行い、血液型ごとの発症オッズを算出することによって、O型はペロニー病に最もなりやすい血液型で、B型が最もなりにくいことを明らかにしました。本研究結果は、今後ペロニー病の病因解明に貢献することに加え、血液型による自身のリスクを知り生活習慣の改善などに役立てることで、ペロニー病の予防にも繋がることが期待されます。

発表内容

(1)研究の背景
 ペロニー病は、陰茎に硬いしこりができることで勃起時に陰茎が曲がったり、痛みが起きる病気で、時に遺伝的傾向をもつと考えられているデュピュイトラン拘縮(手掌から指にかけてひきつれができる病気)を合併することがあります。症状が進行すると性交ができなくなるため、予防や早期発見・治療が重要となります。罹患率は5%程度と考えられており、中高年に多く危険因子として高血圧、糖尿病、肥満、喫煙、陰茎の外傷が指摘されています。これまでに、いくつかの遺伝的要因がペロニー病の原因の候補として提案されてきましたが、未だ特定には至っていません。
 最近国内外の研究によってABO式血液型は、がん、感染症、糖尿病、心臓病などの病気のかかりやすさに関連する遺伝的要因であることが、明らかにされつつあります。これらの病気のかかりやすさの違いの理由として、血液型によって赤血球表面の抗原構造や、炎症に関与するサイトカイン(注2)の量が異なることが考えられています。実はABO式抗原は血球の表面だけでなく、陰茎の正常な皮膚にも発現しています。また、サイトカインに誘発される炎症反応は、ペロニー病の発生と進行に関連することも明らかになっています。そこで、東邦大学医学部泌尿器科学講座の三井要造講師らの研究グループは、ペロニー病とABO型血液型との関連性を実証する研究に着手しました。

(2)研究の内容
 本研究では、2004年3月から2019年12月までに東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンターで手術を受けたペロニー病患者202例と、同時期にペロニー病以外の病気で手術を受けた患者の中から無作為に選択した対照者846例で、はじめにABO式血液型の分布を比較しました。ABO式血液型分布の割合は、対照者846例ではO型29.1%、A型37.9%、B型23.2%、AB型9.8%となり日本人分布とほぼ同じでしたが、ペロニー病患者202例ではO型37.6%、A型36.1%、B型14.9%、AB型11.4%となり、対照者と比べて有意にO型の割合が高く、B型の割合が低いことがわかりました(図1)。続いて対照者よりも割合が低くなったB型を比較対照として、ペロニー病発症のオッズ比(注3)を血液型ごとに計算しました。その結果、B型と比較したペロニー病発症のオッズ比はA型が1.49、AB型が1.81、最も大きいO型では2.02となり、統計学的にも有意となりました(表1)。この検討により、ペロニー病に最もかかりやすい血液型はO型で、反対に最もかかりにくい血液型はB型であることが明らかになりました。
 ただし、ABO式血液型以外に生活習慣病、喫煙歴、陰茎外傷の有無などがペロニー病の発生に影響を与えている可能性があります。そこで、これらの影響を取り除くため多変量解析(注4)を行い、最終的に年齢、陰茎外傷や高血圧の有無に加え、ABO式血液型がペロニー病の発症に関連する有意な因子であることを証明しました(表2)。さらに今回の研究では、ペロニー病の重症度を含む患者背景とABO式血液型との関連も評価しました。年齢、生活習慣病、喫煙歴の有無や、陰茎の彎曲度、彎曲方向などペロニー病の重症度に関しては、血液型で差はありませんでしたが、デュピュイトラン拘縮の合併はO型患者で多い傾向にあることが確認されました。

(3)社会的意義と今後の予定
 これまでペロニー病に関連する遺伝的な要因は不明でしたが、研究グループはABO式血液型がペロニー病のかかりやすさに関係することを、世界で初めて明らかにしました。ペロニー病の発症と進行に関与する一部のサイトカインの血中濃度は、他の血液型と比べO型で高いことが報告されています。これは、O型がペロニー病に最もかかりやすいことを示した研究グループの結果を支持するものです。本研究結果は、将来、ペロニー病の病因解明に貢献するだけでなく、一人ひとりが血液型とペロニー病のリスクを理解し、生活習慣の改善などに役立てることで、ペロニー病の予防に繋がることが期待されます。

発表雑誌

    雑誌名
    「The World Journal of Men’s Health」(オンライン版:2022年1月1日)

    論文タイトル
    ABO blood type and risk of Peyronie’s disease in Japanese males

    著者
    Yozo Mitsui*, Hideyuki Kobayashi, Fumito Yamabe, Koichi Nakajima, Koichi Nagao (*責任著者)

    DOI番号
    10.5534/wjmh.210126

    論文URL
    https://wjmh.org/search.php?where=aview&id=10.5534/wjmh.210126&code =2074WJMH&vmode=FULL

用語解説

(注1)オッズ
 現象の起こりやすさを示す指標であり、医療統計では「あるイベントが起きる確率」と「起きない確立」の比である。今回は、「ペロニー病を発症する確率と発症しない確立」の比を示す。オッズはリスクとは異なることに注意が必要だが、アウトカム(本研究では全対象者に占めるペロニー病患者の数)が比較的稀なものであれば、オッズとリスクは近似した値になる。

(注2)サイトカイン
 白血球やリンパ球など様々な細胞から放出されるたんぱく質で、細胞同士の情報を伝える役割がある。多くは免疫や炎症に関与し、ペロニー病ではインターロイキン6、トランスフォーミング増殖因子β、腫瘍壊死因子αなどが関連している。

(注3)オッズ比
 「A集団で、あるイベントが起きるオッズ」と「B集団で、あるイベントが起きるオッズ」の比である。オッズ比が1の場合、両集団のオッズが等しいことを意味し、1より大きい場合は、B集団よりもA集団で、あるイベントが起こりやすいことを意味する。

(注4)多変量解析
 多くの個体について2つ以上の測定値がある場合に、これらの変数の相互関連を分析する方法の総称である。結果の値(本検討ではぺロニー病のあるなし)に対して、複数の因子(本検討では血液型、生活習慣病、喫煙など)の影響を知りたい場合に行う。

添付資料

図1. グループ別のABO式血液型分布
 ペロニー病患者ではO型の割合が37.6%と最も高く、対照者(29.1%)よりも有意に高いのに対し、B型の割合は14.9%で対照者(23.2%)よりも有意に低い(*p<0.05,**p<0.01)。日本人分布はFujitaらの論文から引用(Fujita Y et al. Jinrui Idengaku Zasshi, 1978)。

表1.ペロニー病発症に対する血液型別のオッズ比(ロジステック回帰分析)
 B型と比べてその他の血液型のオッズ比は1よりも大きく、特にO型では統計学的有意性がみられることから、O型はB型よりもペロニー病にかかりやすいといえる。

表2.ペロニー病に関連する要因を特定するための単変量および多変量解析(ロジステック回帰分析)
 多変量解析の結果から、既存の危険因子(年齢、陰茎外傷、高血圧)と同様に、ABO式血液型もペロニー病の発症に関連する有意な因子であることがわかる(p=0.043)。

以上

お問い合わせ先

【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学医学部泌尿器科学講座
講師 三井要造

〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL: 03-5763-6642
FAX: 03-3768-8817
E-mail: yozo.mitsui[@]med.toho-u.ac.jp

【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部

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