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プレスリリース 発行No.1149 令和3年8月5日

キナゾリノン誘導体の新たな合成手法の開発に成功
~ 環境負荷を低減するとともに、医薬品開発の迅速化を促進 ~

 東邦大学薬学部薬品製造学教室の東屋功教授および氷川英正准教授らの研究グループは、水を溶媒として水溶性パラジウム触媒を用いた環境調和型の新しい多成分連結反応による新たなキナゾリノン合成法を開発しました。この合成手法は、有毒な酸化剤や有機溶媒を必要としない、反応工程数および廃棄物を削減した環境調和型の効率的な複素芳香環構築法であり、医薬品開発の迅速化につながることが期待されます。
 本研究成果は、2021年6月23日に学術誌「Advanced Synthesis & Catalysis」に掲載されました。

発表者名

東屋 功(東邦大学薬学部薬品製造学教室 教授)
氷川 英正(東邦大学薬学部薬品製造学教室 准教授)

発表のポイント

  • 「イサト酸無水物(注1)、ベンジルアルコール(注2)およびアミン」の3成分を1つのフラスコ中で反応させる「多成分連結反応」によって、生理活性を有するキナゾリノン誘導体を、環境に優しい条件で効率的に合成する新たな手法の開発に成功しました。
  • これまでの多成分連結反応によるキナゾリノン合成法は、あらかじめベンジルアルコールをアルデヒドに酸化しておく必要がありましたが、本手法は水を溶媒として、水溶性のパラジウム触媒(注3)を用いることにより、ベンジルアルコールをそのまま利用することができます。
  • 本手法は、有毒な酸化剤や有機溶媒を必要としない、反応工程数および廃棄物を削減した環境調和型の効率的な複素芳香環構築法であり、医薬品開発の迅速化につながると期待されます。

発表概要

 多成分連結反応は、3種類以上の成分を1つのフラスコの中で反応させて単一の生成物を得る反応であり、医薬品探索研究などによく用いられます。例えば、生理活性を有するキナゾリノン誘導体は、有機溶媒中「イサト酸無水物、ベンズアルデヒドおよびアミン」の3成分に酸化剤を添加することによって合成することができます。しかし、毒性の高い酸化剤を大量に使用し、基質であるベンズアルデヒドをアルコールから予め調製しておく必要があることから、より環境負荷の低い触媒的合成法の開発が望まれていました。
 東邦大学薬学部薬品製造学教室の東屋功教授および氷川英正准教授らの研究グループは、水を溶媒として水溶性パラジウム触媒を用いた環境調和型の新しい多成分連結反応によるキナゾリノン合成法の開発に成功しました。水を溶媒として「イサト酸無水物、ベンジルアルコールおよびアミン」の3成分に、パラジウム触媒を加えることによって、反応性の低いベンジルアルコールをそのまま多成分連結反応に用いることが可能になり、より効率的にキナゾリノン誘導体を合成できるようになりました。

発表内容

 化学物質を合成する際には、必要な限りある資源・エネルギーおよび反応工程の無駄を無くし、創薬研究を持続的に発展させるために、環境に配慮した新しい触媒的な複素環構築法の開発は必須となります。これまでのキナゾリノン誘導体合成を目的とする多成分連結反応は、有機溶媒中「イサト酸無水物、ベンズアルデヒドおよびアミン」の3成分に酸化剤を加えることによって進行します。しかし、この従来法には「有機溶媒の使用」、「毒性の高い酸化剤の使用とその廃棄物の処理」および「基質であるベンズアルデヒドを予め調製しておくための酸化工程が別途必要」といった改善すべき課題がありました。
 そこで本研究グループは、ベンズアルデヒドの代わりにその前駆体であるベンジルアルコールをそのまま基質として利用できる多成分連結反応の開発に取り組みました。その結果、水を溶媒として、水溶性パラジウム触媒を用いることにより、反応性の低いベンジルアルコールを温和な条件で活性化できる新しい手法を見出しました(図1)。
 パラジウム触媒とベンジルアルコールが反応すると、パラジウム錯体Iが形成されます(図2)。パラジウム錯体Iは、それぞれの中間体を活性化していくことによって、まるでドミノが次々と倒れるように、1つのフラスコの中で連続して反応が進行します。本研究では、それぞれの反応工程に関して対照実験(注4)を行い、この推定反応機構を支持する結果が得られています。本研究成果は、多様性に富むキナゾリノン誘導体の効率的な化合物ライブラリー構築及び医薬品開発への展開が期待できます。

発表雑誌

    雑誌名
    「Advanced Synthesis & Catalysis」(2021年6月23日)

    論文タイトル
    Direct Use of Benzylic Alcohols for Multicomponent Synthesis of 2-Aryl Quinazolinones Utilizing the π-Benzylpalladium(II) System in Water

    著者
    Hidemasa Hikawa*, Taku Nakayama, Makiko Takahashi, Shoko Kikkawa and Isao Azumaya*

    DOI番号
    org/10.1002/adsc.202100535.

    アブストラクトURL
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adsc.202100535

用語解説

(注1)イサト酸無水物
酸無水物の構造を有しており、アミンと反応してアントラニル酸アミドを形成する。

(注2)ベンジルアルコール
メタノールの炭素にベンゼン環が結合したアルコール。

(注3)触媒
特定の化学反応を促進させる物質で、自身は反応の前後で変化しない。

(注4)対照実験
ある条件の効果を調べるために、他の条件は全く同じにして、その条件のみを除いて行う実験。例えば、他の条件は全く同じで「パラジウム触媒」のみを除いて対照実験を行うと、反応は進行しない。

添付資料

図1.従来法の課題と新手法の特徴

図2.推定反応機構
はじめに、パラジウム触媒が水和によって活性化されたベンジルアルコールと反応することによって、パラジウム錯体Iを形成する。パラジウム錯体Iはアントラニル酸アミド中間体1と反応し、アミノ基がベンジル化された中間体2を形成する。さらに、パラジウム錯体Iが中間体2を活性化し、パラジウム錯体IIを経由して炭素と窒素が結合した中間体3を形成する。最後に、パラジウム錯体Iが中間体3と反応し水素(H2)が脱離して目的とするキナゾリノンが生成すると考えている。

以上

お問い合わせ先

【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学薬学部薬品製造学教室
教授 東屋 功
准教授 氷川 英正

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