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プレスリリース 発行No.1148 令和3年8月5日

乳幼児における睡眠と知的発達の関係が明らかに
~早産児の夜間睡眠の制御と知的発達~

概要

 北海道大学病院周産母子センター安藤明子医師らを中心とした北海道大学病院,北海道大学大学院保健科学院研究院,金沢大学,金沢大学附属病院,秋田大学医学部附属病院,東邦大学医療センター大森病院,聖路加国際病院,日本赤十字社医療センター,市立札幌病院らのグループは,睡眠・覚醒制御のメカニズムが乳幼児の知的発達と関連する可能性を明らかにしました。
 この研究成果は,英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』(英国時間8月5日午前10時;日本時間8月5日午後6時)に掲載されました(論文名:Sleep maturation influences cognitive development of preterm toddlers)。

 北海道大学病院周産母子センターの安藤明子医師,長和俊診療教授らは,睡眠パターンの基礎が形成される1歳半の早産児101名(男児44名,女児57名)を対象に,睡眠と知的発達の関係を調べました。2013年から2020年の間に出生した36週未満かつ1500g未満の児を対象にアクチグラフ(睡眠計)を1週間継続して装着し解析を行いました。発達評価には心理士による新版K式発達検査1)を用いました。  その結果,起床時刻のばらつきが小さいほど発達指数が高いことがわかりました。睡眠制御のシステムが正常に機能していると寝起きの時刻が安定することが知られています。これまで覚醒制御の中心は脳幹・視床下部などに存在することが知られていましたが,今回の研究では「知的発達が良好な児(=大脳が成熟した児)」において「起床リズムが一定(=睡眠制御機能が成熟)である」ことから,発達過程において大脳も睡眠を制御する可能性が示唆されました。  これまで,乳幼児の睡眠と知的発達の関係について調べた研究は少なく,統一した見解は得られていません。また,睡眠,発達についての評価は保護者へのアンケート調査による研究が多数ですが,アンケート調査では主観的な評価になる傾向があります。 今回の研究では睡眠計と新版K式発達検査を用いて,早産児を対象に乳幼児の睡眠特性と発達の関係を客観的に確認しました。今後も睡眠発達のメカニズムについて検討を続け,乳幼児の発達をサポートする睡眠環境を明らかにしたいと考えています。

用語の説明

1)新版K式発達検査:子どもがとる行動や反応を同年齢と比較して,発達の度合いが実際の年齢よりどのくらい差があるかを「姿勢・運動」,「認知・適応」,「言語・社会」の3領域で評価します。

共同研究者

1.北海道大学病院
 ・周産母子センター 安藤明子医師,兼次洋介研究員,森岡圭太研究員
          長 和俊診療教授
 ・小児科 真部 淳教授
北海道大学
 ・保健科学研究院 安積陽子准教授 
2.金沢大学
 ・人間社会研究域学校教育系/子どものこころの発達研究センター 吉村優子准教授
 ・子どものこころの発達研究センター 池田尊司助教
 ・医薬保健研究域医学系精神行動科学 菊知 充教授
  金沢大学附属病院
 ・小児科 三谷裕介講師
3.秋田大学医学部附属病院
 ・精神科 太田英伸准教授,竹島正浩講師,三島和夫教授
 ・小児科 安達裕行助教,高橋 勉教授
4.東邦大学医療センター大森病院
 ・新生児科 與田仁志教授
5.聖路加国際病院
 ・小児総合医療センター 中川真智子医師,島袋林秀医師,平田倫生副医長
             小澤美和医長,草川功医長
 聖路加国際大学
 ・大学院看護学研究科 小林京子教授,福冨理佳助教
6.日本赤十字社医療センター
 ・小児科 大石芳久部長
7.市立札幌病院
 ・新生児科 水島正人部長

論文情報

    論文名
    Sleep maturation influences cognitive development of preterm toddlers (早産児の睡眠と発達)

    著者名
    安藤明子¹,太田英伸²,吉村優子³,中川真智子⁴,安積陽子⁵,中澤貴代¹, 三谷裕介⁸,大石芳久⁹,水島正人¹⁰,安達裕行²,兼次洋介¹,森岡圭太¹, 島袋林秀⁴,平田倫生⁴,池田尊司³,福富理佳⁶,小林京子⁶,小澤美和⁴,竹島正浩²,真部淳¹,高橋勉2,三島和夫²,草川功⁴,与田仁志⁷,菊知充³,長和俊¹
    (¹北海道大学病院周産母子センター,²秋田大学医学部附属病院,³金沢大学,⁴聖路加国際病院,⁵北海道大学,⁶聖路加国際大学,⁷東邦大学医療センター大森病院,⁸金沢大学病院,⁹日本赤十字社医療センター,¹⁰市立札幌病院)

    雑誌名
    Scientific Reports(英国のオンライン科学雑誌)

    公表日
    日本時間2021年8月5日(木)午後6時(英国時間2021年8月5日(木)午前10時)(オンライン公開)

お問い合わせ先

お問い合わせ先
北海道大学病院 周産母子センター 診療教授 長 和俊(ちょう かずとし)
TEL 011-706-5846  FAX 011-706-7981  メール choutarou@med.hokudai.ac.jp
配信元
北海道⼤学病院総務課総務係(〒060-8648 札幌市北区北 14 条⻄ 5 丁⽬)
TEL 011-706-7631 FAX 011-706-7627 メール pr_office@huhp.hokudai.ac.jp

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