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プレスリリース 発行No.1131 令和3年5月10日

プログラミング不要の画像認識AIを用いて男性不妊症における精巣組織の病理診断AIモデルを構築
~ エンジニアでなくてもAIは作れる ~

 東邦大学医学部泌尿器科学講座の小林秀行准教授らの研究グループは、高度な専門知識が不要の画像認識AIを用いて、男性不妊症患者から採取した精巣組織の病理画像を撮影し、精巣内の状態をAIで判断するモデルを作成しました。従来のAI技術では、専門知識を持っているエンジニアが主導で行っていましたが、Google Cloud™ の視覚認識に特化したカスタム機械学習モデルのトレーニングと開発が可能な AutoML Vision を利用し、AIに関する専門知識を持っていない医師主導で画像認識AIモデルを構築することができました。これにより、今後AIの仕組みの基本さえ理解していれば、簡単にAIモデルを作ることができる時代に突入することが期待されます。この成果は2021年5月10日に 英国科学誌「Scientific Reports」にて発表されました。

発表者名

小林 秀行(東邦大学医学部泌尿器科学講座 准教授)
伊藤 友梨香(東邦大学医学部泌尿器科学講座 シニアレジデント)
海上 真美(東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター 胚培養士)
山辺 史人(東邦大学医学部泌尿器科学講座 助教)
三井 要造(東邦大学医学部泌尿器科学講座 講師)
中島 耕一(東邦大学医学部泌尿器科学講座 教授)
永尾 光一(東邦大学医学部泌尿器科学講座 教授)

発表のポイント

  • プログラミング不要の画像認識AIを用いた男性不妊症患者における精巣組織病理の自動診断システムを新たに開発しました。
  • 高度な専門知識を持たずに機械学習やディープラーニングを使ったAIモデルを構築しました。
  • これまでは導入への壁が高いと思われていたAIを手軽に実現できるサービスを用いて医療におけるAIモデルの発展が期待されます。

発表内容

(1)研究の背景
 不妊症の原因の約半数は男性側に問題があるとされています。その中でも、無精子症は最も重篤な病態です。無精子症には2種類あり、閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症があります。どちらも精子を採取する手段として精巣内精子採取術(TESE)が必要となります。その際に精巣内の状態を把握するために一部の精巣組織を病理検体として提出し、Johnsen score(注1)と呼ばれるスコアリング法にて病理専門医が精巣内の状態を数値化しています。閉塞性無精子症の場合は、精子が回収される割合は高く、Johnsen scoreは8点以上の結果であることが多いです。しかし、非閉塞性無精子症では、精子回収の割合は低く、Johnsen scoreは1~3点を示すことが多い傾向にあります。研究グループは、精巣病理画像に対して機械学習を行いJohnsen scoreを認識する精巣病理AIモデルの開発に着手しました。
 本来、AIというと専門知識を持ったエンジニアでもない限り、AIモデルを作るのは困難でした。しかし Google Cloud の AutoML Vision (注2)を用いることで、高度な専門知識を持たずともAIモデルの構築が可能になりました。研究グループでは、エンジニアの手助けなしで、医師主導でAIモデルの開発に成功しました。
(2)研究の内容
 本研究では、2010年1月から2019年12月までに東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンターを受診した患者で、閉塞性無精子症または非閉塞性無精子症でTESEを施行した275例を対象としています。275例中264症例の病理標本を用いており、Johnsen score 1~3をラベル1、Johnsen score 4~5をラベル2、Johnsen score 6~7をラベル3、Johnsen score 8~10をラベル4に分けています(図1)。ラベル1で2486枚、ラベル2で1614枚、ラベル3で2019枚、ラベル4で1036枚の合計7115枚の病理写真を撮影しました(図2)。撮影した画像は教師用画像データとして、 AutoML Vision へアップロードを行いました。アップロード完了後、“START TRAINING”をクリックし、トレーニングが開始されます。高度なAI知識は不要で簡単にAIモデルを構築することができました。さらにモデルのトレーニングが完了した時点で、モデルの評価指標も自動で作成されます。この結果より、どの程度の精査があるかを確認することができます。今回作成した精巣病理AIモデルでは、平均適合率(AUC)は0.826でした。これは、正診率が82.6%ということを示します(図3)。さらに今回の研究では、正診率を上げるために1枚の病理画像の中で、Johnsen scoreを判断する部位の切り抜きを行いました。ラベル1で1483枚、ラベル2で3437枚、ラベル3で3523枚、ラベル4で1439枚の合計9882枚の病理写真を切り抜き加工しました。これまでの研究と同様に AutoML Vision へアップロードを行い、精巣病理AIモデルを構築しました。正診率は99.5%でした。
(3)社会的意義と今後の予定
 現在は、Johnsen scoreの診断は病理専門医が行っています。研究グループは世界に先駆けてJohnsen score を予測する精巣病理AIモデルを構築しました。このAIモデルでは、80%以上で正診率を得ることができます。すぐに病理専門医に取って代わることはできませんが、将来、より簡便で正診率の高いJohnsen scoreを認識する精巣病理AIモデルが確立されることが期待されます。また、医師主導でAIモデルを構築することにより、今後は医療界にデジタルの波が急速に浸透することが予想されます。

発表雑誌

    雑誌名
    Scientific Reports」(オンライン版:2021年5月10日)

    論文タイトル
    A method for utilizing automated machine learning for histopathological classification of testis based on Johnsen scores

    著者
    Yurika Ito, Mami Unagami, Fumito Yamabe, Yozo Mitsui, Koichi Nakajima, Koichi Nagao, Hideyuki Kobayashi*(*責任著者)

    DOI番号
    10.1038/s41598-021-89369-z

    論文URL
    https://rdcu.be/ckihq

用語解説

(注1)Johnsen score
精巣内における精子への分化状態を病理専門医によって1~10の点数でスコアリングする数値。

(注2)Google Cloud AutoML Vision
詳細は公式サイトをご参照ください。 https://cloud.google.com/automl

添付資料

図1. Johnsen scoreの詳細
本研究において、JSC1-3, JSC4-5, JSC6-7, JSC8-10の4つのラベルに分類される。
図2. 精巣病理画像 (X400)
JSC1-3は非閉塞性無精子症で見られる病理所見。JSC4-5とJSC6-7は、精子の成熟が停止している症例でみられる所見。JSC8-10は精子が確認できる閉塞性無精子症で見られる病理所見。
図3. 病理画像 (X400)のJohnsen score予測モデル
以上

お問い合わせ先

【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学医学部泌尿器科学講座
准教授 小林 秀行

〒143-8541 大田区大森西6-11-1
TEL: 03-3762-4151
FAX: 03-3768-8817
E-mail:hideyukk[@]med.toho-u.ac.jp

【本ニュースリリースの発信元】
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