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プレスリリース 発行No.1112 令和3年1月12日

寄生虫は野外でどうやって生きている?
~ カタツムリのダニ、生活史を明らかに ~

 東邦大学の脇司講師と茨城県自然博物館の池澤広美首席学芸員、帯広畜産大学の梅田剛佑特任研究員、法政大学の島野智之教授の研究グループが、カタツムリに寄生するダニの一種(ワスレナカタツムリダニ)が、関東とその周辺のカタツムリの仲間(キセルガイ類)に寄生していることや、その生活史、発達、感染経路などを明らかにしました。
 論文は、「Experimental and Applied Acarology(ISSN 01688162)」11月に発表されました。

発表者名

脇 司(東邦大学理学部生命圏環境科学科 講師)

発表概要

 カタツムリダニは、カタツムリやナメクジに寄生するダニの仲間です。脇講師は、国内のカタツムリから新種のダニを発見し、和名ワスレナカタツムリダニと命名、発表しました。国内で新種のカタツムリダニが見つかったのはこれが初めてです(Waki, et al., 2018)。
 今回の研究は、2年間以上におよぶ調査の結果、このワスレナカタツムリダニの分布と生活史などの生態を明らかにしたものです。また、感染経路を特定するため、ナミコギセルというカタツムリにこのダニを感染させ、カタツムリの殻の入り口付近にある呼吸口からダニが入っていく様子を観察しました。野外調査の結果、初夏から感染レベルが上昇することから、この時期にカタツムリからカタツムリへと呼吸口を通じた感染が広がっていくものと考えられました。また、カタツムリへの明確な害は確認されず、半ば”共生”に近い形でダニは生きていると考えられます。
 脇講師は「多い時には、その場所全てのキセルガイがこのダニに寄生されている。そんなにたくさんいるダニなのに、今まで誰もその存在に気が付かず、日の光が当てられることもなかった。ダニを始め寄生虫の生態は未知のことが多い。それを1つずつ明らかにしていくことが、微妙なバランスで成り立っている生態系を理解することにもつながる」とコメントしています。なお、このダニの仲間は人に寄生しないとのことです。

発表雑誌

    雑誌名
    「Experimental and Applied Acarology」

    論文タイトル
    Natural history study on Riccardoella tokyoensis: life history with ontogeny and host distribution records

    著者
    Tsukasa Waki, Hiromi Ikezawa, Kousuke Umeda & Satoshi Shimano

    DOI番号
    https://doi.org/10.1007/s10493-020-00575-2

    論文URL
    https://link.springer.com/article/10.1007/s10493-020-00575-2#article-info

添付資料

図1.ナミコギセルの肺の中のワスレナカタツムリダニ(矢印)
スケール: 1 mm
(下記URLに参考動画)
https://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/env/synecology/infestant/index.html
※脇 司講師 研究室サイト【寄生虫動画集】プレスリリース関連動画へ移動します。

動画2. ナミコギセルの肺の中を動くワスレナカタツムリダニ
動画3. ナミコギセルの呼吸孔から肺に侵入するワスレナカタツムリダニ

をご参照ください。



以上

お問い合わせ先

【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学理学部生命圏環境科学科
講師 脇 司

〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1653
E-mail: tsukasa.waki[@]sci.toho-u.ac.jp
URL: https://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/env/synecology/index.html

【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部

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