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プレスリリース 発行No.1098 令和2年10月27日

なぜ直接子どもを産むトカゲは出現したのか?
~ 胎生進化の新仮説 ~

 千葉県立中央博物館 栗田隆気研究員、東邦大学 児島庸介研究員、京都大学 西川完途准教授、マレーシア・サラワク州森林局 Mohamad Yazid Hossman 研究員からなる研究グループは、インドから東アジアにかけて生息するトカゲの仲間の生息環境、行動、繁殖様式の進化に関する研究を行い、「繁殖様式の進化が特定の生息環境と行動を基盤に生じている」という仮説を発表しました。

 一般的にはトカゲ・ヘビなどの爬虫類は卵を産む「卵生」であると認識されていますが、およそ20%は直接子どもを産む「胎生」です。また胎生の種は冬の長い高緯度地域や高標高地で多く見られ、その理由として卵や子が低温にさらされての死亡や発育不全を防ぐために胎生が獲得された可能性が考えられてきました。しかし、胎生の種は熱帯地方にも生息します。そして何より、このような特徴が過去どのように進化してきたかを直接観察することはできないことから、これまで確固たる定説はありませんでした。

 今回の研究では、樹上、地上、岩場など多様な環境に生息していて卵生種・胎生種の両方を含むトビトカゲ亜科に注目し、DNA塩基配列、既往文献、野外での調査をそれぞれ行いました。その結果得られた生息環境、動きの速さ、繁殖方法の3つの情報について解析し、進化の歴史を復元したところ、卵生から胎生への進化が2回生じたことが明らかになりました。また、生息環境、動きの速さ、繁殖方法はそれぞれ関連して進化したことが示唆され、樹上で生活する傾向が強く、かつゆっくりとした動きしかできない種で胎生が進化していることが明らかになりました。
            本研究で用いたトビトカゲ亜科の一種
 樹上性のトカゲ類には敵から素早く逃走することで捕食等を逃れる種が多く含まれています。これまで妊娠中に生じる敏捷性の低下のリスクが大きいことから樹上性の種では胎生への進化が起こりにくいと考えられていましたが、本研究の結果、ゆっくりと動くという生存戦略が介在することによって、樹上性の種においても胎生化が生じうることが明らかになりました。 

 本研究成果は、2020年8月13日に英国自然史博物館が刊行する学術誌「Systematics and Biodiversity」に掲載されました。
以上

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研究員 栗田 隆気

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