プレスリリース 発行No.1077 令和2年4月23日
寄生虫の新種を発見 木に登るカタツムリから
東邦大学の脇 司講師、旭川医科大学の佐々木 瑞希助教、中尾 稔准教授、目黒寄生虫館の巖城 隆研究室長ならびに豊田ホタルの里ミュージアムの増野 和幸館長らの研究グループは、樹上性のカタツムリに新種の吸虫が寄生しており、それが高い頻度で見つかることを明らかにしました。
この成果は2020年2月に、日本寄生虫学会の学術雑誌Parasitology Internationalで出版・公表されました。
この成果は2020年2月に、日本寄生虫学会の学術雑誌Parasitology Internationalで出版・公表されました。
発表者名
脇 司(東邦大学理学部生命圏環境科学科 講師)
発表のポイント
- カタツムリに寄生する新種の吸虫を発見しました。
- 新種の吸虫は、九州から北海道まで全国的に分布しており、身近な場所で見つかる樹上性のカタツムリによく寄生していることが分かりました。
- 感染カタツムリが鳥に食べられ、鳥の渡りによって吸虫の分布が拡大したと考えられました。
- この吸虫の人への寄生報告例はありません。
発表内容
寄生虫は私たちの身近なところに生息しており、そのほとんどは人以外の生物に寄生して暮らしています。しかし、日本では野外に暮らす寄生虫の調査研究実績が少なく、どこにどのような寄生虫がいるのか良く分かっていません。
今回、脇講師の研究グループは、北海道から九州までの28か所でカタツムリの仲間を捕まえて、その中の寄生虫を調べました。その結果、およそ半数の15か所のカタツムリが吸虫(注1)の幼虫 (図1) に寄生されていることが明らかになりました。この幼虫を実験的に育てたところ成虫まで成長し、その形から新種であることが分かりました。この吸虫に寄生されていたカタツムリの多くは、木に登って生活する、いわゆる樹上性の種類でした(図2)。これにちなんで、吸虫はキノボリマイマイサンゴムシ(学名:Brachylaima lignieuhadrae)と名付けられました。
この仲間の吸虫は、カタツムリに寄生した幼虫が鳥類・哺乳類に食べられて、その消化管内で成虫になると考えられています。今回カタツムリから得られた幼虫は、どの採集地でも同じような遺伝子の型を持っており、地理的な違いがありませんでした。このことから、この幼虫は鳥に食べられて成虫となり、その鳥がいろいろな場所に移動して糞とともに吸虫の卵をまき散らし、それがカタツムリへの新たな感染源になっているものと考えられます。しかし、キノボリマイマイサンゴムシが実際に鳥類に寄生するのか、あるいは実は哺乳類に寄生するのかは、まだ分かりません。
この新種の吸虫は、人里離れた山や密林のカタツムリに寄生していたわけではなく、むしろ人家の近くや公園のような、私たちの生活に身近な場所で見つかっています。未知の生物の存在をこうして明らかにしていくことは、絶妙なバランスで成立している身近な生態系を理解するために必要なことの一つと言えるでしょう。
今回、脇講師の研究グループは、北海道から九州までの28か所でカタツムリの仲間を捕まえて、その中の寄生虫を調べました。その結果、およそ半数の15か所のカタツムリが吸虫(注1)の幼虫 (図1) に寄生されていることが明らかになりました。この幼虫を実験的に育てたところ成虫まで成長し、その形から新種であることが分かりました。この吸虫に寄生されていたカタツムリの多くは、木に登って生活する、いわゆる樹上性の種類でした(図2)。これにちなんで、吸虫はキノボリマイマイサンゴムシ(学名:Brachylaima lignieuhadrae)と名付けられました。
この仲間の吸虫は、カタツムリに寄生した幼虫が鳥類・哺乳類に食べられて、その消化管内で成虫になると考えられています。今回カタツムリから得られた幼虫は、どの採集地でも同じような遺伝子の型を持っており、地理的な違いがありませんでした。このことから、この幼虫は鳥に食べられて成虫となり、その鳥がいろいろな場所に移動して糞とともに吸虫の卵をまき散らし、それがカタツムリへの新たな感染源になっているものと考えられます。しかし、キノボリマイマイサンゴムシが実際に鳥類に寄生するのか、あるいは実は哺乳類に寄生するのかは、まだ分かりません。
この新種の吸虫は、人里離れた山や密林のカタツムリに寄生していたわけではなく、むしろ人家の近くや公園のような、私たちの生活に身近な場所で見つかっています。未知の生物の存在をこうして明らかにしていくことは、絶妙なバランスで成立している身近な生態系を理解するために必要なことの一つと言えるでしょう。
発表雑誌
-
雑誌名
「Parasitology International」74巻、101992 (オンラインでは2019年9月12日に閲覧可)
論文タイトル
Brachylaima lignieuhadrae n. sp. (Trematoda: Brachylaimidae) from land snails of the genus Euhadra in Japan.
著者
Tsukasa Waki*, Mizuki Sasaki, Kazuyuki Mashino, Takashi Iwaki, Minoru Nakao(* 責任著者)
DOI番号
https://doi.org/10.1016/j.parint.2019.101992
アブストラクトURL
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1383576919303435
用語解説
(注1)吸虫
寄生性の扁形動物の仲間。
寄生性の扁形動物の仲間。
添付資料
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学理学部生命圏環境科学科
講師 脇 司
〒274-8510 船橋市三山2-2-1
TEL: 047-472-1653
E-mail: tsukasa.waki[@]sci.toho-u.ac.jp
URL: https://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/env/synecology/index.html
【本ニュースリリースの発信元】
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