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プレスリリース 発行No.1068 令和2年3月25日

東邦大学メディカルレポート
主要な膠原病の特徴と治療法について
~ 膠原病は免疫機能の異常と密接な関係があります ~

 東邦大学医療センター大森病院 リウマチ膠原病センター(大田区大森西6-11-1、診療部長:南木敏宏)では、関節リウマチを含めた膠原病を専門に診療を担当しています。また、リウマチ膠原病センターとして、整形外科の担当医とも協力して診療を行っており、手術などの整形外科治療が必要な際にも円滑な診療が可能となっています。

 膠原病とは、病理学者のPaul Klemperer(1887-1964)が提唱した病気の総称で、結合組織や血管の膠原線維が変性した原因不明の疾患を指します。結合組織とは、体内の器官や組織の間の結合や充塡にあずかる線維に富んだ組織のことで、細胞の栄養補給や老廃物の排除などの働きをしています。また、膠原線維は結合組織の細胞間に見られる線維のことです。

 膠原病は英語ではcollagen diseaseと呼ばれています。結合組織に主に含まれる線維状のタンパク質がコラーゲンです。私たちにとって耳なじみのあるコラーゲンですが、当レポートでは、コラーゲンの病気である膠原病について、主要なものを取り上げながら、その特徴や治療法についてわかりやすくお伝えします。

1.膠原病は「自己免疫疾患」

 外から身体の内部に侵入し、私たちの健康に悪影響を及ぼすものには様々なものがありますが、私たちの身体は、免疫の働きによってウイルスや細菌などの異物を排除することができるようになっています。免疫には自然免疫と獲得免疫の二段階があります。異物が体内に侵入をしようとすると、まず自然免疫が作動し、これを防ぎます。それでも防ぐことができなければ獲得免疫が作動します。獲得免疫では、リンパ球と呼ばれる細胞などがその機能を担っています。

 免疫には自分自身を構成する細胞と外部から侵入する異物を識別して、自分自身に向かって反応しないような仕組みがあります。ところが、この自分自身の構成成分を異物と誤って認識してしまうことがまれにあり、自身を攻撃してしまい生じる病気を総じて「自己免疫疾患」と呼んでいます。膠原病も自己免疫疾患に該当します。

 膠原病は、この免疫が自分自身に向けて働きだしてしまうために起こる自己免疫疾患と、関節、筋肉、骨、人体、腱などに痛みやこわばりが生じるリウマチ性疾患、結合組織が侵された結果、細胞や組織に障害が起こる結合組織疾患を併せ持つ疾患です。

2.「関節リウマチ」の特徴と治療法

 膠原病の中で患者数が最も多いのは「関節リウマチ」です。日本における推定患者数は、70万~100万人で、女性患者が全体の70%の占め、30~50歳代がかかりやすい年齢とされます。

 主に手足の関節を構成する要素の一つである滑膜(かつまく)組織が炎症を起こすことで発症します。関節炎が持続すると、血管や細胞が増えて、滑膜が厚く腫れてしまいます。治療をせずにいると、痛みや腫れが全身の関節に拡がったり、関節の骨が破壊されたり、関節が変形してしまったりします。このほか、関節以外にも発熱や食欲不振など多くの全身症状に及ぶこともあります。

 治療には従来型のリウマチ治療薬が用いられ、非ステロイド系消炎鎮痛薬、ステロイドが併用されることもあります。更に近年では生物学的製剤やJAK阻害薬といった分子標的薬が登場し、選択の幅がさらに広がりました。
炎症の抑制や軟骨・骨破壊の進行抑制に効果が認められています。高い有効性の一方で、肺炎や結核などの感染症といった副作用があることや、薬価が高いことなど、問題点も指摘されているため、薬の使用には専門医の知識が不可欠です。

3.「全身性エリテマトーデス」の特徴と治療法

 「全身性エリテマトーデス」は関節リウマチとともに膠原病の代表的な疾患のひとつです。皮膚、関節、肺、腎臓、神経、血管など様々な場所に病変が起きうる全身性の疾患です。発症は20~40代に多く、患者さんの男女比は約9割が女性となっています。日本における推定患者数は、6~10万人とされています。厚生労働省が特定疾患治療研究事業疾患 (いわゆる難病)に指定し、公費補助される疾患のひとつです。

 治療法は薬によるものが中心で、免疫の働きを抑えるステロイドや免疫抑制薬が用いられるほか、症状などに応じて生物学的製剤も使用されます。

4.膠原病治療に欠かせない「ステロイド」と「免疫抑制薬」

 膠原病の治療に欠かせないのが「ステロイド」と「免疫抑制薬」です。ステロイドは糖質コルチコイドのことで、副腎から作られる副腎皮質ホルモンの一種です。膠原病の原因は免疫異常や炎症が病気の進行に大きく関わっていると考えられていますが、ステロイドは、このような免疫反応や炎症を抑制することによって治療に役立つと考えられています。ただし、正常な免疫反応も抑えてしまったり、急に服用を中止したりすると倦怠感や吐き気などといった離脱症候群といわれる副作用があります。また、免疫抑制薬は臓器障害の進行などを抑える効果があり、ステロイドの減量にも有用ですが、副作用にはやはり気を付けなければなりません。

 膠原病は、複数の臓器に障害が多発する「多臓器疾患」ともいわれています。そのため症状も、発熱や関節痛、手足のこわばりなど多岐にわたります。早期治療によって進行を抑えることが可能です。しかし発見が遅れて病気が進行すると、重症へとつながる恐れがあります。気になる症状が現れた場合には、なるべく早くかかりつけの病院を受診するようにしましょう。

以上

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