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プレスリリース 発行No.1020 令和元年10月3日

東邦大学メディカルレポート
胆のうの病気の特徴と治療法について
~ 早期発見・早期治療のために必要なこと ~

 胆のうは、肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵し、これを濃縮する働きをする臓器です。
肝臓の下面にあり、ナスのような形をしている胆のうは、胆管につながっており、胆管は肝臓から十二指腸につながっています。胆汁はそのほとんどが水分ですが、含まれる胆汁酸塩によって脂肪を乳化し、水に混じりやすい状態にすることができます。つまり、消化や吸収を助ける消化液の役割を果たしています。
 当レポートでは、「胆のうの病気」の特徴や治療法などについてわかりやすくお伝えします。

1.胆のうの主な病気とその原因

 胆のうと胆管を合わせて胆道といいますが、胆道で胆汁の成分が固まって結石ができる病気が「胆石症」です。「胆石症」は、結石ができる場所によって「胆のう結石」、「総胆管結石」、「肝内結石」に大別されます。

 「胆のうの病気」の典型的な症状は、食後数時間経過して胆石がもとで現れる腹痛ですが、右肩や背中の痛みを伴う場合もあります。また、激痛ではなく、鈍痛、圧迫感、違和感などの軽い症状として現れることもあります。痛みが長引いたり、痛みが強かったりする場合は要注意です。
 胆石によって腹痛や発熱などの症状があらわれる病気を「胆のう炎」といい、細菌感染が加わると重症化することもあります。また、「胆管炎」は胆石が胆管に詰まって起こる病気です。「胆管炎」も細菌感染から重症化すると、ショックや意識障害などが現れる非常に危険な疾患です。

 日本人の胆石保有率は全体の1割ほどで、加齢とともに増加します。女性は男性よりも保有率が1.4倍多いとされます。ただ、痛みが出るのはこのうち2割程度であり、それ以外は症状が出ないため、「サイレントストーン」といわれます。
 胆石生成を促進させる主な原因としては、「脂質の過剰摂取」、「過度の炭水化物摂取」、「食物繊維摂取の減少」、「アルコール、コーヒー、刺激物の過剰摂取」、「低タンパク質」などが挙げられます。

2.胆石の検査と治療法

 「胆のうの病気」の早期診断や適切な治療には検査が不可欠です。「血液検査」は最も基本的な検査で、炎症の程度、肝機能の状態、黄疸の有無、ガンの可能性などがわかります。
 「腹部超音波検査」では、腹部に超音波を当て、胆石やポリープがあるかどうか、また胆のうの形や壁の厚さなどを調べます。「腹部CT検査」では、胆のうの状態や胆石の成分や大きさ(一部の胆石はCT検査では見えません)、位置、ガンの有無、ガンが周囲の臓器に広がっていないかなどを調べます。
 このほか、「MRI 検査/MRCP 検査」や「内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査 (ERCP)」があります。これらを組み合わせて検査を行い、治療方針を決めるのに役立てられます。

 胆石の治療には手術を行わない非手術的治療法と外科手術があります。非手術的治療法には「溶解療法」や「体外衝撃波破砕療法」などがあります。内服薬で胆石を溶かす溶解療法は、症状が無く胆のうの機能が正常で、小さな純コレステロール結石が適応となりますが、胆石が溶解するのに長期間かかります。また、溶解する胆石の割合も限定されるほか、再発の可能性もあります。

 体外衝撃波破砕療法は、特殊な装置を使って体の中の胆石を小さく砕き、排泄させる方法です。こちらも症状が無く、胆のう機能が正常で、純コレステロール結石が適応となりますが、胆石を完全に消失させるのは困難で、再発の可能性もあります。

 「内視鏡的治療法」は、内視鏡を用いて十二指腸から胆管にチューブを挿入して胆管結石を取り除く治療法です。内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)では、胆管の出口にあたる十二指腸の乳頭部を電気メスで切開し、結石を取り出しやすくします。

3.胆のうポリープと胆のうガン

 「胆のうポリープ」は、胆のうの粘膜に出来る小さな隆起のことです。自覚症状はほとんどなく、健康診断や人間ドックで行われる超音波検査で見つかる例が増えています。胆のうポリープの約半数は、コレステロールポリープという良性のものです。このほか、過形成性ポリープ、胆のう腺筋症、悪性化する可能性のある腺腫(せんしゅ)などがあります。胆のうポリープが見つかった場合、その大きさ、数、形が重要になります。特に大きさには注意が必要で、大きい場合はガンになる可能性が高まりますので、10㎜以上のポリープは胆のう摘出術が勧められます。

 「胆のうガン」は、胆のうや胆管に出来るガンです。胆のうガンに特に気をつけなければいけないのは、「『膵胆管合流異常』のある人」、「高齢者」、「胆石や胆のうポリープがある人」などです。膵管と胆管は、普通は十二指腸の壁内で合流しますが、『膵胆管合流異常』とは個々の形態に生まれつきの異常があり、十二指腸の壁外で合流する状態をいいます。胆のうガンは男性1に対して女性は2~3の割合で発症し、60歳代が最もかかりやすいとされています。非常に早期の胆のうガンであれば、胆のうを摘出するだけでほぼ治りますが、病期が進行している胆のうガンでは、胆のう周囲までガンが広がるため、胆のうだけでなく、肝臓の一部、胆管、リンパ節などをまとめて切除する拡大手術が必要になります。

4.腹腔鏡下胆のう手術とは

 胆のうの摘出術として現在標準的なのは「腹腔鏡下胆のう手術」です。腹部の皮膚に小さな孔(あな)を開けて腹腔鏡という細長いカメラを入れ、モニターに写した画像を見ながら、直接臓器に手を触れず鉗子を使って行う手術法です。国内では1990年代以降に普及し、従来の開腹胆のう手術にとって代わるようになりました。開腹手術に比べて手術の切開創(きず)が小さく、手術後の痛みも少ないなどの利点があります。通常、4か所の孔を開けて手術が行われますが、創のほとんど目立たない1つの孔で行われる「単孔式」という方法もあります。
 胆のうの病気では早期発見・早期治療がとても重要です。胆石のある方で痛みがある場合は特に注意が必要です。また、胆のうポリープが発見された方は定期な画像検査が不可欠です。少しでも気になる症状がある人は、早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。

 東邦大学医療センター大橋病院外科(胆肝膵グループ:渡邉 学教授)では、専門の医師・スタッフが患者さんそれぞれの状況や希望に合わせた診療を行うとともに、できるだけ体に負担のかからない低侵襲な治療に取り組んでいます。

以上

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