プレスリリース

メニュー

プレスリリース 発行No.998 令和元年7月31日

東邦大学メディカルレポート
前立腺がんの診断の流れと主な治療法
~ 年に1度のPSA検査が早期発見の近道 ~

 前立腺がんは、中高年の男性が注意を必要とする前立腺の病気のひとつで、高齢化や生活習慣の欧米化などにより増加傾向にあります。50歳以降に発症することが多く、すでにわが国でも男性の悪性腫瘍の発生頻度で上位となっています。男性だけにある前立腺は、膀胱の下に位置し、尿道の周りを取り囲むクルミ大の臓器で、精液の一部に含まれる前立腺液がつくられています。前立腺がんは尿道から離れた部分の外腺(辺縁領域)に発生する悪性腫瘍です。
 当レポートでは、前立腺がんの診断の流れや治療法についてわかりやすくお伝えします。


1.前立腺がんの診断と治療法の概要

 前立腺がんの症状は排尿障害や血尿、腰痛などですが、早期の症状は良性腫瘍である前立腺肥大症と区別が難しいため、専門的な診断が必要です。前立腺がんの診断は、大きく「スクリーニング診断」、「確定診断(病理診断)」、「病期診断」の3つに分かれます。

 スクリーニング診断は、がんの可能性がある人を見つける検査です。代表的なものは前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAの値を血液検査によって調べる方法です。正常値は4.0以下とされますが、64歳以下では3.0というように年齢により基準値が異なります。他に肛門から指を入れて前立腺の大きさや硬さなどを調べる直腸診や肛門から棒状の超音波プローブ(探触子)を挿入して前立腺を観察する経直腸的超音波診断があります。

 前立腺がんの確定診断(病理診断)には、前立腺生検といわれる検査が必要です。これは、前立腺に針を刺して前立腺組織を採取し、採取された組織を顕微鏡で観察する病理検査です。がんの有無や悪性度や前立腺局所の広がりを調べることができます。

 病期診断は、がんの広がりを確認するための検査で、治療法を決定する上で重要です。病期診断では、MRI・CT・骨シンチグラフィーなどが行われます。MRIやCTによって、前立腺周囲へのがんの広がりや肺・肝臓・リンパ節転移の有無などを診断します。前立腺がんの転移部位で最も多い部位は骨です。骨への転移の有無を調べるために骨シンチグラフィーが行われます。

 前立腺がんに対する治療法には、大きく分けると手術療法・放射線療法・薬物療法があります。がんの進行度や悪性度に加え、患者さんの年齢・状態・希望などを考慮して決まります。

2.手術療法

 前立腺がんに対する手術療法として「前立腺全摘除術」が行われます。全身麻酔をした上で、前立腺と精嚢(せいのう)を摘出し、膀胱と尿道をつなぎ合わせる手術です。
 手術療法は、病期が早期~中期ないし、ごく僅かな転移のみである、全身状態が良好で重篤な合併症状がない、期待される余命が10年以上見込める、などの患者さんに適応されます。手術療法の利点として、根治性が高いこと、手術後に再発した際に追加治療として放射線治療を行うことが可能なことがあげられます。欠点として、手術後の合併症として尿失禁や勃起障害を伴うことがあげられます。

 手術や放射線治療は、病気を治すために必要な医療行為である一方で、患者さんの身体へは負担がかかってしまいます。出来るだけ身体へ負担をかけない低侵襲な手術療法が求められています。

 低侵襲手術とは、内視鏡手術や血管内手術(心臓カテーテルなど)を代表とする従来よりも侵襲の少ない手術のことです。前立腺がんの治療においても腹腔鏡手術やロボット支援手術の導入により、従来の開腹手術よりも傷口を小さく、出血量の少ない低侵襲手術が行われています。

3.放射線療法

 「放射線療法」は、前立腺に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる治療法です。放射線療法は、がんの根治を目指した前立腺への根治的照射と痛みや血尿などの症状を和らげることを目的とした緩和的照射があります。体の外から前立腺に放射線を照射する外照射療法と、前立腺内へ放射線を放出する線源を挿入し、体内から放射線を照射する小線源治療が行われます。放射線療法の合併症として、血尿・血便・頻尿・排尿障害・下痢などが起こることがあります。

 効果的な治療を行うためには、高い線量の照射が必要とされます。通常の照射法では周囲の臓器への負担も増加するため、IMRT(強度変調放射線治療)による線量分布の改善が有効になります。早期の前立腺がんに対する手術療法と放射線療法の予後は、ほぼ同等と考えられています。

4.薬物療法

 薬物療法は手術療法や放射線療法と異なり、全身に効果のある治療法です。前立腺がんにおける薬物療法には「ホルモン療法(内分泌療法)」と「化学療法」があります。

 「ホルモン療法(内分泌療法)」は、男性ホルモンの分泌や作用を抑えることによって、前立腺がん細胞の増殖を抑える治療法です。①放射線治療などとの併用療法として、②骨やリンパ節などに転移巣が認められる場合、③高齢や重篤な合併症などで根治治療を行うことができない場合、④手術や放射線治療後に再発した場合に行われます。
 ホルモン療法の有害事象としてホットフラッシュやメタボリック症候群や骨塩量の低下による骨粗しょう症をはじめとする様々な副作用が生じる危険性がありますので、食生活の改善や運動療法を加えるなどの日常生活における対策を講じることが必要とされています。なお、ホルモン療法の治療期間が長くなると前立腺がんは、ホルモン抵抗性を獲得し、ホルモン療法の治療効果が弱くなり、前立腺がんが悪化してしまうことがあります。この状態を去勢抵抗性前立腺がんといいます。去勢抵抗性前立腺がんに対してはより強いホルモン療法が行われます。

 「化学療法」は抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃し、破壊する治療法です。前立腺がんに有効な抗がん剤はタキサン系薬剤です。化学療法には骨髄抑制・食欲不振・脱毛・浮腫などの副作用があります。

 前立腺がんは、早期には自覚症状がほとんどありません。しかし、症状が出たときにはすでにがんが進行していることがあります。前立腺がんの早期発見のためにも定期検査を受けることが大切です。特に50歳を過ぎるとかかりやすくなるので、年に1度はPSA検査を受けるようにしましょう。
 東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器科(診療部長 教授:鈴木啓悦)、および放射線科(診療部長 教授:寺田一志)では、経験豊富な指導医、専門医、治療医のもと、最新機器を揃えて膀胱全摘除術・前立腺全摘除術や腎摘除術をはじめとする腹腔鏡手術・各種内視鏡手術、薬物治療、および放射線治療で先端の医療を安心して受けていただくよう取り組んでいます。

以上

お問い合わせ先

学校法人東邦大学 法人本部 経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL:03-5763-6583 FAX:03-3768-0660
Email:press[@]toho-u.ac.jp URL:www.toho-u.ac.jp
※E-mailはアドレスの[@]を@に替えてお送り下さい。