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プレスリリース 発行No.978 令和元年5月29日

東邦大学メディカルレポート
- いびきと睡眠時無呼吸症について -
~ 自分ではわかりにくいので早めに専門医の診察を ~

東邦大学医療センター大橋病院耳鼻咽喉科(目黒区大橋2-22-36、診療部長:吉川 衛)では、高度な専門性に基づく手術治療を中心とした診療を行っています。中でも、副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、副鼻腔嚢胞、鼻副鼻腔腫瘍、頭蓋底疾患(下垂体腫瘍など)に対する内視鏡下鼻内副鼻腔手術を最も多く行っています。また、いびきや睡眠時無呼吸症に関する専門的な診療を行っており、他施設ではあまり行われていない小児領域の睡眠時無呼吸症の診断や治療にも積極的に取り組んでいます。

寝ているときにいびきをかくことは珍しいことではありません。「よく寝ている」といったイメージもありますが、いびきは睡眠中に気道が狭くなり呼吸に力がかかることによって起こるものです。一方、睡眠時無呼吸症はいびきに似た病態ですが、文字通り寝ている間に何回も呼吸が止まる睡眠呼吸障害のことをいいます。当レポートでは、いびきと睡眠時無呼吸症の関連やその治療法などについてわかりやすくお伝えします。

1.睡眠中に呼吸が止まるメカニズム

いびきと睡眠時無呼吸症の関連を理解するためには、そのメカニズムを知ることが重要です。以下のような過程を経て無呼吸をくり返します。

①睡眠中に何らかの原因で上気道(鼻からのど)が狭くなり、いびきが生じる。
②上気道(鼻からのど)がさらに狭くなり、完全に閉塞すると無呼吸状態になる。
③体内の酸素が一気に低下する(窒息と同じ状況)。ここで覚醒することもある。
④窒息死を回避するために、防御反射によって呼吸をはじめる。
⑤酸素が十分に満たされると、再び①の状態に戻る。


①の症状だけであれば、いびきであり、①~⑤をくり返すようになると、睡眠時無呼吸症となります。睡眠時無呼吸症と診断するには、無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index: AHI)が重要な評価項目となります。
AHIは、睡眠検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)を行い、睡眠1時間あたりの無呼吸(10秒以上持続する換気停止)と低呼吸(10秒以上持続する呼吸の減弱)の回数をもとに算出されます。AHIの程度により重症度が判定され、【5 ≦ 軽症 <15 ≦ 中等症 < 30 ≦ 重症】と分類されます。軽症の場合は、日中の眠気や二次的な合併症(高血圧、糖尿病など)がなければ経過観察となることが多いですが、中等症以上の睡眠時無呼吸症は、適切な治療が必要となります。

2.睡眠時無呼吸症の症状と注意点

睡眠時無呼吸症の典型的な症状を以下に示します。
・習慣性いびき、あえぎ、窒息感を伴う中途覚醒
・日中の傾眠傾向、全身倦怠感、集中力・記憶力の低下、熟眠感欠如
・早朝の頭痛、夜間の頻尿


睡眠時無呼吸症による日中の傾眠傾向などによってQOLが低下したり、交通事故や産業事故を引き起こしたりすることが指摘されています。また、循環器疾患に関する調査によれば、睡眠時無呼吸症により冠動脈疾患や心不全などを合併する危険が高まることがわかっています。睡眠時無呼吸症が重症になるにつれて、このような合併症のリスクが高くなり、生命予後に影響を及ぼすことがあります。

3.睡眠時無呼吸症に関わる要因と治療 

睡眠時無呼吸症において上気道(鼻からのど)が狭くなる要因としては、肥満、顎顔面形態異常、鼻炎や扁桃肥大などの上気道疾患の合併が挙げられます。さらに、加齢や性差との関わりも指摘されており、それぞれの要因を考慮した専門的な治療が必要になります。
肥満については、10%の体重増加によってAHIが32%高くなり、中等症以上の睡眠時無呼吸症の発症率が6倍に高まるという報告があるため、減量によって睡眠時無呼吸症の改善が期待できます。顎顔面形態異常が睡眠時無呼吸症の原因になっている場合には、歯科装具による治療や顎顔面形態を矯正する手術が有用なことがあります。
しかし、これらの治療を行っても睡眠時無呼吸症が改善しない場合には、Continuous positive airway pressure(CPAP)による経鼻的持続陽圧呼吸療法を行います。
いびきや睡眠時無呼吸症は睡眠中に起こる疾患のため、自分では気づかないことが多いと言われています。
いびきだけでなく、前述した睡眠時無呼吸症の典型的な症状がある方は、早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。

以上

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