プレスリリース 発行No.929 平成30年10月29日
東邦大学医学部
東邦大学医学部研究グループが制御された細胞死「ネクロプトーシス」の可視化を世界で初めて実現
~ 研究成果は英国Nature Communicationsに掲載 ~
~ 研究成果は英国Nature Communicationsに掲載 ~
東邦大学医学部生化学講座の中野裕康教授と村井晋助教らの研究グループは、 新しく開発したセンサータンパク質を使って、ネクロプトーシスと呼ばれる、アポトーシスとは異なる制御された細胞死の様子をイメージングする技術を世界で初めて開発しました。さらに、そのイメージング技術により、細胞死に伴って放出され、さまざまな病態に関与する細胞内物質「DAMPs」の放出パターンには異なる2種類があることを明らかにしました。
これにより、今後ネクロプトーシスが関与する病態の解明や、治療技術の開発が加速することが期待されます。
この成果は10月26日に 雑誌Nature Communicationsにて掲載されました。この研究は東京大学大学院薬学系研究科 三浦正幸教授、北海道大学低温科学研究所 山口良文教授、東京大学大学院理学系研究科 白崎善隆博士(JST さきがけ専任研究者)らとの共同研究の成果です。
これにより、今後ネクロプトーシスが関与する病態の解明や、治療技術の開発が加速することが期待されます。
この成果は10月26日に 雑誌Nature Communicationsにて掲載されました。この研究は東京大学大学院薬学系研究科 三浦正幸教授、北海道大学低温科学研究所 山口良文教授、東京大学大学院理学系研究科 白崎善隆博士(JST さきがけ専任研究者)らとの共同研究の成果です。
発表者名
中野 裕康(東邦大学医学部生化学講座 教授)
発表のポイント
- ネクロプトーシスという制御された細胞死の様子を、培養細胞内でFRETと呼ばれる技術を用いて可視化(生きたまま見ること)するための方法を開発しました。またDAMPsと呼ばれる、細胞から細胞死に伴い放出される物質の放出のされ方には2種類あることを明らかにしました。
- 蛍光イメージングによるネクロプトーシスの可視化を実現したのは世界で初めてのことです。またDAMPsは細胞内から細胞死に伴い放出され、周囲のまだ生きている細胞などに影響を与え、様々な病態に深く関与していると考えられていますが、その放出パターンには異なる2種類があることを1細胞レベルで初めて明らかにした研究です。
- 社会的意義/将来展望
今後、ネクロプトーシスおよびネクロプトーシスに伴い放出されるDAMPsが関与 する病態の解明や、治療技術の開発が加速することが期待されます。また新規に開発したセンサータンパク質を発現する遺伝子改変マウスなどを作成することで、ネクロプトーシスが体の中でどのような状況で起こっているかの新たな解析手法を提供できる可能性が示されました。
発表概要
ネクロプトーシスはアポトーシスと同様に制御された細胞死であり、心筋梗塞や脳梗塞などに関与していることが示されていました。アポトーシスについてはこれまでの研究からFRETという原理を利用して1細胞レベルで蛍光イメージングできることが報告され、その結果様々な新しい知見が得られていました。しかしネクロプトーシスでは可視化の技術が開発されていなかったことから、今回東邦大学医学部の中野教授、村井助教らのグループはFRETを用いてネクロプトーシスの蛍光イメージングを試みました。MLKLと呼ばれるネクロプトーシスの実行因子がネクロプトーシス誘導細胞では立体構造が変化する事に注目して、FRETの原理を利用したセンサータンパク質「SMART」を作成し、世界で初めてネクロプトーシスの様子を蛍光イメージングする事に成功しました。さらに興味深い事に1細胞分泌実時間イメージング法という最新の技術を用いる事で、DAMPsのネクロプトーシス細胞からの放出には遷延モードと破裂モードの2種類があることを見出しました。これらの研究により今後ネクロプトーシスの詳細なメカニズムの解明が飛躍的に進むことが期待されます。
発表内容
ネクロプトーシス(注1)はアポトーシス(注2)と同様に制御された細胞死ですが、アポトーシスとは異なり細胞膜が早期に破裂することから死細胞の周囲に強い炎症を誘導することが知られていました。ネクロプトーシスは最近の研究から心筋梗塞や脳梗塞などの虚血性疾患の悪化に寄与することが明らかにされています。これらの細胞死の進行を生きた培養細胞の細胞内で可視化(つまり細胞を殺したり破壊したりせずに、顕微鏡で実際に細胞死が進行しているかを観察すること)する技術の開発は、細胞死がどのような状況で起こっているのか、またその結果としてどのような反応を周囲の細胞に誘導するのかを解析する上で非常に重要です。これまでにアポトーシスについては、細胞死の進行時にカスパーゼと呼ばれる酵素が活性化することを利用して、FRET(注3)と呼ばれる技術を用いて可視化することに共同研究者の三浦教授らが成功していました。しかし、ネクロプトーシスの場合には、カスパーゼのようなタンパク質分解酵素が活性化しないために、同様の方法でイメージングすることは不可能であり、可視化における大きな障壁がネクロプトーシス研究のボトルネックとなっていました。
今回私たちのグループは、ネクロプトーシスが誘導される際に細胞膜障害を誘導する分子であるMLKL(注4)という分子を利用してFRET用のセンサータンパク質を作成し、世界で初めてネクロプトーシスの様子を蛍光イメージングする技術を開発しました。ネクロプトーシス誘導時にMLKL分子に起こる構造変化に合わせてFRET反応が起こるように蛍光タンパク質と組み合わせ、マウスやヒトの細胞でTNF(注5)などの刺激によりネクロプトーシスが誘導された際にネクロプトーシスの誘導の様子をリアルタイムで可視化できるセンサータンパク質を開発することに成功しました(図1)。
このタンパク質をSMART(Sensor for MLKL activation by RIPK3 based on FRET)と命名しました。どのようなメカニズムでSMARTにおいてFRET反応が起こっているかを様々な手法により検討したところ、このSMARTは細胞質から細胞膜へのMLKL分子の移行の様子を検出している事が明らかとなりました。このメカニズムをさらに解析する事で、より詳細なネクロプトーシス誘導から実行への機序が解明される可能性もあり、ネクロプトーシスの新しい阻害薬の開発につながることも期待されます。
一方で、ネクロプトーシスを起こした細胞では細胞膜が早期に破綻し、DAMPs(注6)と呼ばれる核内あるいは細胞質内に存在するタンパク質やDNAなどが放出され、強い炎症を周囲の生きた細胞に誘導することが知られていました。そこで、ネクロプトーシスに伴うDAMPsの放出のメカニズムを解明するために、DAMPsとして知られるHMGB1という核内のタンパク質に注目し、SMARTとHMGB1の細胞死に伴う挙動を観察しました。この際、SMARTを発現した細胞内で、HMGB1を可視化するためにmCherryと呼ばれる蛍光タンパク質と融合させた形でHMGB1を発現させました。この細胞にネクプトーシスを誘導すると、SMARTのシグナルが上昇したのち、かつ、細胞膜の障害が現れる前、というタイミングでHMGB1が核内から細胞質内に放出されており、その後すぐに細胞外に放出されることを見出しました。すなわち、ネクロプトーシスに伴うDAMPsの放出は2段階で行われることが明らかとなり、追加の検討により、最初はMLKLにより核膜が障害され、その後に細胞膜が障害されることが解明されました。このことはネクロプトーシスに伴いMLKLは細胞膜だけではなく、積極的に核膜の障害も誘導し、核内タンパク質を細胞外に放出していることを意味しています。
最後に、共同研究者の白崎博士らにより開発された1細胞分泌実時間イメージング法(注7)という新しい技術を用いてDAMPsの放出を1細胞レベルでイメージングする事に成功しました。この手法を用いてネクロプトーシスに陥った細胞からのHMGB1の放出を観察したところ、意外な事に細胞死に伴うHMGB1の放出が100分以上もかかる遷延モードと、放出が10分以内に終了するという破裂モードが存在することが初めて明らかになりました(図2)。またCHMP4B(注8)というタンパク質の発現を低下させるような処理をしたところ、遷延モードの細胞は消失し、全ての細胞が破裂モードになることを見出しました。このことは、CHMP4Bが、遷延モードと破裂モードの選択に必須のタンパク質であることを示しています。現在DAMPsのこの2つの放出モードの意義については解析中ですが、例えばウイルスが感染した細胞ではインターフェロンと呼ばれるタンパク質が産生されることが知られており、インターフェロンによりネクロプトーシスの実行因子であるMLKLの発現が上昇することも報告されています。MLKLの発現が上昇し、またCHMP4Bの発現が低下するような状況では、全ての細胞が破裂モードに変化し、強い炎症を周囲の細胞に引き起こすことで、ウイルス感染細胞の効率的な排除に関与していることも考えられます。また、一方で心筋梗塞や脳梗塞のようにネクロプトーシスが病気の悪化に関係するような状況では、DAMPsの破裂モードを遷延モードに変換するような薬剤が開発されれば、細胞死にひき続いて起こる炎症などを軽減することができるかもしれません。
以上に示してきた本研究の成果により、ネクロプトーシスおよびネクロプトーシスに伴い放出されるDAMPsが関与する病態の解明や、治療技術の開発が加速することが期待されます。また新規に開発したセンサータンパク質を発現する遺伝子改変マウスなどを作成することで、ネクロプトーシスが体の中でどのような状況で起こっているかを解析できるような新たな手法を提供できる可能性を示すことができました。
今回私たちのグループは、ネクロプトーシスが誘導される際に細胞膜障害を誘導する分子であるMLKL(注4)という分子を利用してFRET用のセンサータンパク質を作成し、世界で初めてネクロプトーシスの様子を蛍光イメージングする技術を開発しました。ネクロプトーシス誘導時にMLKL分子に起こる構造変化に合わせてFRET反応が起こるように蛍光タンパク質と組み合わせ、マウスやヒトの細胞でTNF(注5)などの刺激によりネクロプトーシスが誘導された際にネクロプトーシスの誘導の様子をリアルタイムで可視化できるセンサータンパク質を開発することに成功しました(図1)。
このタンパク質をSMART(Sensor for MLKL activation by RIPK3 based on FRET)と命名しました。どのようなメカニズムでSMARTにおいてFRET反応が起こっているかを様々な手法により検討したところ、このSMARTは細胞質から細胞膜へのMLKL分子の移行の様子を検出している事が明らかとなりました。このメカニズムをさらに解析する事で、より詳細なネクロプトーシス誘導から実行への機序が解明される可能性もあり、ネクロプトーシスの新しい阻害薬の開発につながることも期待されます。
一方で、ネクロプトーシスを起こした細胞では細胞膜が早期に破綻し、DAMPs(注6)と呼ばれる核内あるいは細胞質内に存在するタンパク質やDNAなどが放出され、強い炎症を周囲の生きた細胞に誘導することが知られていました。そこで、ネクロプトーシスに伴うDAMPsの放出のメカニズムを解明するために、DAMPsとして知られるHMGB1という核内のタンパク質に注目し、SMARTとHMGB1の細胞死に伴う挙動を観察しました。この際、SMARTを発現した細胞内で、HMGB1を可視化するためにmCherryと呼ばれる蛍光タンパク質と融合させた形でHMGB1を発現させました。この細胞にネクプトーシスを誘導すると、SMARTのシグナルが上昇したのち、かつ、細胞膜の障害が現れる前、というタイミングでHMGB1が核内から細胞質内に放出されており、その後すぐに細胞外に放出されることを見出しました。すなわち、ネクロプトーシスに伴うDAMPsの放出は2段階で行われることが明らかとなり、追加の検討により、最初はMLKLにより核膜が障害され、その後に細胞膜が障害されることが解明されました。このことはネクロプトーシスに伴いMLKLは細胞膜だけではなく、積極的に核膜の障害も誘導し、核内タンパク質を細胞外に放出していることを意味しています。
最後に、共同研究者の白崎博士らにより開発された1細胞分泌実時間イメージング法(注7)という新しい技術を用いてDAMPsの放出を1細胞レベルでイメージングする事に成功しました。この手法を用いてネクロプトーシスに陥った細胞からのHMGB1の放出を観察したところ、意外な事に細胞死に伴うHMGB1の放出が100分以上もかかる遷延モードと、放出が10分以内に終了するという破裂モードが存在することが初めて明らかになりました(図2)。またCHMP4B(注8)というタンパク質の発現を低下させるような処理をしたところ、遷延モードの細胞は消失し、全ての細胞が破裂モードになることを見出しました。このことは、CHMP4Bが、遷延モードと破裂モードの選択に必須のタンパク質であることを示しています。現在DAMPsのこの2つの放出モードの意義については解析中ですが、例えばウイルスが感染した細胞ではインターフェロンと呼ばれるタンパク質が産生されることが知られており、インターフェロンによりネクロプトーシスの実行因子であるMLKLの発現が上昇することも報告されています。MLKLの発現が上昇し、またCHMP4Bの発現が低下するような状況では、全ての細胞が破裂モードに変化し、強い炎症を周囲の細胞に引き起こすことで、ウイルス感染細胞の効率的な排除に関与していることも考えられます。また、一方で心筋梗塞や脳梗塞のようにネクロプトーシスが病気の悪化に関係するような状況では、DAMPsの破裂モードを遷延モードに変換するような薬剤が開発されれば、細胞死にひき続いて起こる炎症などを軽減することができるかもしれません。
以上に示してきた本研究の成果により、ネクロプトーシスおよびネクロプトーシスに伴い放出されるDAMPsが関与する病態の解明や、治療技術の開発が加速することが期待されます。また新規に開発したセンサータンパク質を発現する遺伝子改変マウスなどを作成することで、ネクロプトーシスが体の中でどのような状況で起こっているかを解析できるような新たな手法を提供できる可能性を示すことができました。
発表雑誌
-
雑誌名
「Nature Communications」(オンライン版の場合:2018年10月26日)
論文タイトル
A FRET biosensor for necroptosis uncovers two different modes of the release of DAMPs
著者
Shin Murai, Yoshifumi Yamaguchi , Yoshitaka Shirasaki, Mai Yamagishi, Ryodai Shindo, Joanne M. Hildebrand, Ryosuke Miura, Osamu Nakabayashi, Mamoru Totsuka, Taichiro Tomida, Satomi Adachi-Akahane, Sotaro Uemura, John Silke, Hideo Yagita, Masayuki Miura, Hiroyasu Nakano*
Vol 9, 4457, 2018DOI番号
10.1038/s41467-018-06985-6
アブストラクトURL
https://www.nature.com/articles/s41467-018-06985-6
用語解説
(注1)ネクロプトーシス
アポトーシス(注2参照)とは異なったタイプの制御された(つまりもともと私達の細胞の中にある遺伝子により実行される)細胞死であり、細胞膜が早期に障害され破裂することから周囲に強い炎症を惹起すると考えられている。アポトーシスとは異なり発生過程での意義は明確ではないが、心筋梗塞や脳梗塞などの虚血再灌流障害に伴い誘導されることや、ある種のウイルス感染の排除に関係していることが報告されている。ネクロプトーシスを制御する薬剤が心筋梗塞や脳梗塞の治療薬になる可能性が期待されている。一方で、一般的に使用されるネクローシスという言葉は、細胞死の形はネクロプトーシスに類似しているが、私達の細胞の中にある遺伝子の働きとは無関係におこる(制御されていない)偶発的な細胞死のことを示す。
(注2)アポトーシス
最も古くから研究されてきたプログラムされた(制御された)細胞死であり、個体の発生の段階の特定の組織(有名なのは指と指の間に胎児期に存在する指間膜の消失)や、細胞を抗がん剤や放射線などを照射した時にも見られる。カスパーゼと呼ばれるプロテアーゼの活性化により引き起こされ、細胞膜は保たれるために、ネクロプトーシスとは異なり、周囲に強い炎症を引き起こすことは少ない。
(注3) FRET(Forester Resonance Energy TransferあるいはFluorescence Energy Transfer)
2つの蛍光分子がごく近接して存在する場合に、1つの蛍光分子からもう1つの蛍光分子へとエネルギーが移動すること。この原理を利用することで、相互に作用することの予測される2種類のタンパク質と、それぞれ励起波長の異なる2つの蛍光タンパク質とを融合タンパク質として発現させることで、細胞内における2種類のタンパク質の相互作用を、リアルタイムで観察することが可能となった。
(注4) MLKL
ネクロプトーシスの実行因子であり、RIPK3と呼ばれるリン酸化酵素によりリン酸化を受け、3〜4個の分子が集合し(多量体化)、その後細胞膜へと移動し、細胞膜に小さな穴を開けることで、ネクロプトーシスを誘導すると考えられている。MLKLを欠損した細胞ではネクロプトーシスは誘導されない。
(注5) TNF
TNFは腫瘍壊死因子とも呼ばれ、マクロファージなどの細胞により産生され、ある種の細胞には細胞死を誘導する。
(注6) DAMPs (Danger-associated molecular patterns)
もともと我々の細胞内あるいは核内にあり、細胞死に伴って細胞膜や核膜などが障害された結果、細胞外に放出される様々なタンパク質やDNAなども含めた物質の総称。興味深いことに本来細胞内や核内に存在する時にはそれらの物質は、炎症反応を誘導することはないが、一度細胞の外に出ると強い炎症応答などを引き起こす。中でも核内のタンパク質であるHMGB1は代表的なDAMPsの一つ。
(注7)1細胞分泌実時間イメージング法
サンドイッチ蛍光免疫染色法と全反射蛍光顕微鏡技術を組み合わせることで、細胞から分泌された因子をその場で蛍光染色・可視化し、細胞の様子と共にタイムラプス撮影する方法。
(注8) CHMP4B
細胞内の小胞輸送や、細胞質分裂、ウイルスの出芽などに関与することの知られているESCRT-III複合体を構成する一つのタンパク質。傷害を受けた細胞膜の修復に関与することも知られている。
アポトーシス(注2参照)とは異なったタイプの制御された(つまりもともと私達の細胞の中にある遺伝子により実行される)細胞死であり、細胞膜が早期に障害され破裂することから周囲に強い炎症を惹起すると考えられている。アポトーシスとは異なり発生過程での意義は明確ではないが、心筋梗塞や脳梗塞などの虚血再灌流障害に伴い誘導されることや、ある種のウイルス感染の排除に関係していることが報告されている。ネクロプトーシスを制御する薬剤が心筋梗塞や脳梗塞の治療薬になる可能性が期待されている。一方で、一般的に使用されるネクローシスという言葉は、細胞死の形はネクロプトーシスに類似しているが、私達の細胞の中にある遺伝子の働きとは無関係におこる(制御されていない)偶発的な細胞死のことを示す。
(注2)アポトーシス
最も古くから研究されてきたプログラムされた(制御された)細胞死であり、個体の発生の段階の特定の組織(有名なのは指と指の間に胎児期に存在する指間膜の消失)や、細胞を抗がん剤や放射線などを照射した時にも見られる。カスパーゼと呼ばれるプロテアーゼの活性化により引き起こされ、細胞膜は保たれるために、ネクロプトーシスとは異なり、周囲に強い炎症を引き起こすことは少ない。
(注3) FRET(Forester Resonance Energy TransferあるいはFluorescence Energy Transfer)
2つの蛍光分子がごく近接して存在する場合に、1つの蛍光分子からもう1つの蛍光分子へとエネルギーが移動すること。この原理を利用することで、相互に作用することの予測される2種類のタンパク質と、それぞれ励起波長の異なる2つの蛍光タンパク質とを融合タンパク質として発現させることで、細胞内における2種類のタンパク質の相互作用を、リアルタイムで観察することが可能となった。
(注4) MLKL
ネクロプトーシスの実行因子であり、RIPK3と呼ばれるリン酸化酵素によりリン酸化を受け、3〜4個の分子が集合し(多量体化)、その後細胞膜へと移動し、細胞膜に小さな穴を開けることで、ネクロプトーシスを誘導すると考えられている。MLKLを欠損した細胞ではネクロプトーシスは誘導されない。
(注5) TNF
TNFは腫瘍壊死因子とも呼ばれ、マクロファージなどの細胞により産生され、ある種の細胞には細胞死を誘導する。
(注6) DAMPs (Danger-associated molecular patterns)
もともと我々の細胞内あるいは核内にあり、細胞死に伴って細胞膜や核膜などが障害された結果、細胞外に放出される様々なタンパク質やDNAなども含めた物質の総称。興味深いことに本来細胞内や核内に存在する時にはそれらの物質は、炎症反応を誘導することはないが、一度細胞の外に出ると強い炎症応答などを引き起こす。中でも核内のタンパク質であるHMGB1は代表的なDAMPsの一つ。
(注7)1細胞分泌実時間イメージング法
サンドイッチ蛍光免疫染色法と全反射蛍光顕微鏡技術を組み合わせることで、細胞から分泌された因子をその場で蛍光染色・可視化し、細胞の様子と共にタイムラプス撮影する方法。
(注8) CHMP4B
細胞内の小胞輸送や、細胞質分裂、ウイルスの出芽などに関与することの知られているESCRT-III複合体を構成する一つのタンパク質。傷害を受けた細胞膜の修復に関与することも知られている。
添付資料
以上
お問い合わせ先
【本発表資料のお問い合わせ先】
東邦大学医学部生化学講座生化学分野 教授 中野裕康
〒143-8540大田区大森西5-21-16
TEL:03-3762-4151 FAX:03-5493-5412
Email: hiroyasu.nakano[@]med.toho-u.ac.jp
※E-mailはアドレスの[@]を@に替えてお送り下さい。
【本ニュースリリースの発信元】
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16
TEL : 03-5763-6583
FAX : 03-3768-0660
Email: press[@]toho-u.ac.jp ※E-mailはアドレスの[@]を@に替えてお送り下さい。
URL: www.toho-u.ac.jp