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プレスリリース 発行No.846 平成29年12月18日

東邦大学メディカルレポート
- がんにならないための日常生活 -
~ タバコ、ピロリ菌、飲酒、そして肥満には特に注意 ~

東邦大学医学部医学科臨床腫瘍学講座(大田区大森西5-21-16、講座責任者:教授 島田英昭)は、文部科学省の「がんプロフェッショナル養成基盤推進事業」の一環として腫瘍専門医の育成とがんの臨床研究を目的として、平成24年8月に新設された講座です。臨床腫瘍学とは、がん患者の診療にあたって全身的治療を専門とする学問領域であり、腫瘍外科学、腫瘍内科学(薬物療法)、放射線治療学、緩和医療学の4つの領域を臓器横断的に学ぶ学問です。

現在、日本人の2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで亡くなる時代になりました。がんは放置すると血管やリンパ管を通じて全身に転移し、患者の生命を脅かす非常に怖い病気ですが、早期診断・早期治療を行えば十分完治可能でもあります。しかし最も重要なことは、日々の生活においていかにしてがんにならないように予防を心がけるかです。

一部の遺伝性腫瘍を除けば、多くのがんの原因として挙げられているのは、喫煙、アルコール、肥満などの環境因子です。当レポートでは、普段どのようなことに注意して生活を送ればがんになることを回避できるかを、腫瘍専門医の立場からわかりやすくお伝えします。

1.がんの一次予防で大切な12のこと

私たちの体内では、絶えず細胞分裂が繰り返され、新しい細胞との入れ替えも行われています。その中で、突然変異によって正常な細胞のうちの一部が「がん化」し、無秩序に分裂を繰り返し、増殖するというのが発がんのメカニズムです。では、どうすればこのような発がんメカニズムが起こりにくくすることができるのか、言い換えれば、どのようにすればがんを予防することができるのでしょうか。以下、順にお伝えしていきます。

がんの予防には、そもそもがんにならないようにするための「1次予防」と、がんを早期発見する「2次予防」があります。2次予防には、特定の病気などを発見する「検診」と健康か否かを確認する総合的な「健診」があります。胃がんや乳がんといった特定のがんを調べる検査は検診です。

がんの1次予防で重要な12項目は以下の通りです。
  1. タバコは吸わない
  2. 他人のタバコの煙をできるだけ避ける
  3. お酒はほどほどに
  4. バランスの取れた食生活を
  5. 塩辛い食品は控えめに
  6. 野菜や果物は豊富に
  7. 適度に運動
  8. 適切な体重維持
  9. ウイルスや細菌の感染予防と治療
  10. 定期的ながん検診を
  11. 身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
  12. 正しいがん情報でがんを知ることから

2.タバコ、ピロリ菌、飲酒、そして肥満に注意

タバコは、がんの最大の原因といっても過言ではありません。非喫煙者と比較した喫煙者のがんによる死亡の危険性(男)は、咽頭がん死亡のリスクは32.5倍、肺がんは4.5倍、食道がんは2.2倍です。全てのがんを平均すると死亡リスクは1.65倍です。中学生や高校生の頃からタバコを吸い始めると肺がんの死亡リスクが高まるというデータもあります。例えば、15歳までに喫煙を始めた人が60歳で肺がんによって死亡するリスクは非喫煙者に比べて30倍、16~25歳の間に喫煙を始めた人は15倍といわれます。

タバコの煙には、4000種類以上の化学物質と250種類以上もの毒物もしくは発がん性物質が含まれており、いわば「タバコの煙を吸うことは“殺虫剤”を吸うのと同じこと」です。一日も早く禁煙することが大事ですが、現在喫煙している人でも10年間禁煙を続けると肺がんリスクは30~50%、5年間禁煙を続けると食道がんリスクは50%、それぞれ減少します。

中高年の7、8割がピロリ菌に感染しているといわれています。ピロリ菌に感染すると胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを起こしやすくなり、さらに喫煙や塩分の取り過ぎなどが重なると、胃がんを発症する危険が高まることがわかっています。従って、体内にピロリ菌がいればこれを除菌することが胃がんが発生する確率を下げることにつながります。

飲酒にも注意が必要です。アルコールは、肝臓でアセトアルデヒドを経て無害な酢酸、そして水と二酸化炭素に分解されますが、アセトアルデヒドは発がん性物質として知られています。時々飲む人に比べ、たくさん飲む人や大量飲酒者が食道がんを発症するリスクは男性で4.6倍、大腸がんでは2.1倍です。適切な飲酒量は、「純アルコールで1日平均20g程度」です。これは500mlの缶ビール1本分に相当します。特に、飲酒後に顔の赤くなる方はがんが発生するリスクが高くなりますので、注意が必要です。

肥満もがんの発症と因果関係が指摘されています。例えばBMI(体重(kg)÷身長(m)の2乗)が30より高い場合、子宮体がんは3.5倍、食道がんは3.0倍、肝臓がんは1.5~4.0倍となっています。好きなだけ食べる人に比べ、摂取カロリーを3割減らせば、がんの発生率が15~20%低いというデータもあるため、カロリーを上手にコントロールするようにすることが大切です。

女性の場合、閉経後の肥満は乳がんや子宮体がんのリスクが高まるので注意が必要です。乳がん予防には大豆食品が効果的です。大豆に含まれるイソフラボンを1日あたり40㎎摂取することを心掛けましょう。納豆1パック(45g)ならイソフラボン量は33㎎に相当します。なお、大豆製品は前立腺がん、胃がん、大腸がんなどの予防効果もあると報告されます。

3.善玉菌を増やすための食材

腸内の壁面には無数の細菌がひしめき合っていますが、その様子を顕微鏡で覗くと、花畑のようであることから「腸内フローラ」と呼ばれます。腸内には体によい働きをする善玉菌、体に悪い働きをする悪玉菌、そしてどちらにも属さない菌があります。健康維持には善玉菌が常に優勢な状態で働いていて、腸内フローラを整えられていることが大事です。

善玉菌を優勢に保つには「助っ人食材」と「エサ食材」の2つが必要です。善玉菌の助っ人食材は発酵食品に代表されます。例えば、ヨーグルト、納豆、みそ、乳酸菌飲料、塩こうじなどです。そして善玉菌のエサ食材には2種類あります。一つは、食物繊維が豊富な大根、にんじん、山芋、さつまいもなどです。そしてもう一つはオリゴ糖が豊富なごぼう、アスパラガス、玉ねぎ、とうもろこしなどです。助っ人食材は夕食に、エサ食材は朝昼晩の3食に取り入れるとさらに効果的です。

以上のように、がんの予防には「1次予防」と「2次予防」(がん検診)を上手に組み合わせ、日常生活の中でできることをひとつずつ増やしながら、それらを継続させていくことが大切です。

ただ、禁煙や肥満の解消など、自分一人で解決したり実践したりすることが難しいと感じた際には、医療機関を受診し、専門的な診断・治療やアドバイスを受けることをお勧めします。

以上

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