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プレスリリース 発行No.818 平成29年9月29日

皮膚がんの早期発見で覚えておきたいこと~
ほくろと悪性黒色腫(メラノーマ)の5つの見分け方 ~

 東邦大学医療センター大森病院皮膚科(大田区大森西6-11-1、診療部長:石河 晃)では、最新の知識をもとにあらゆる皮膚疾患を正確に診断し、最善の対応を取ることをモットーに診療しています。また、香粧品、日用品、植物、外用剤などによる接触皮膚炎、職業性皮膚炎、薬疹、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の原因あるいは増悪因子となる抗原の検索を積極的に行っています。さらに、乾癬やアトピー性皮膚炎などの慢性疾患では、特にスキンバリア機能の回復を重視して診療、研究にあたっています。

 私たちの全身を覆う皮膚は、暑さや寒さを感知したり、外部からの刺激や細菌の侵入から身体を守ってくれる大切な臓器です。皮膚は常に外部にさらされており変化には敏感といえますが、一方で、皮膚の異変を放置することで症状が進行してしまうことも少なくありません。

 発症頻度が年々増加しているといわれている皮膚がんには、比較的おとなしい性質のものから悪性度の高いメラノーマまであります。内臓のがんと違い患者さん自身が目視できる皮膚がんは、本来早期発見がしやすいはずです。そのためにはどのような見かけのものががんの可能性があるのか、あるいはどのタイミングで皮膚科を受診すべきか等を知っておくことはとても大切です。
 当レポートでは、代表的な皮膚がんの症状を解説し、良性・悪性の見分け方の基本や治療法についてわかりやすくお伝えします。

1.悪性黒色腫(メラノーマ)の特徴、疑うポイントそして治療法

 皮膚がんは、黒くなるもの、赤くなるもの、その他の三種類に大別することができます。このうち、黒いものには「悪性黒色腫(メラノーマ)」と「基底細胞癌」があります。

 悪性黒色腫(メラノーマ)は、中年以降の人に起こりやすい悪性度の高いがんです。この30年で発症頻度が2倍以上になっており、日本人での発症率は1.5~2人/10万人です。全身の至る所に発症しますが、以下の4つのタイプに分類することができます。
 「悪性黒子型」は顔面に発症することが多く、「表在拡大型」は黒い平らなほくろとなりやすく、白人では最も多いタイプです。「結節型」は盛り上がった黒い固まりとなり、「末端黒子型」は手のひらや足の裏などに発症します。この「末端黒子型」は日本人に多く、およそ2人に1人がこのタイプです。

 悪性黒色腫(メラノーマ)を疑うポイントとしては以下の5つがあります。これらのうち4つ以上あてはまると悪性を疑う必要があり、2つ以下の場合は良性、つまり色素性母斑(ほくろ)と考えて良いといえます。
1. 形:ほくろは円形や楕円形であるのに対し、メラノーマは整った形をしていない。
2. 境目:ほくろはくっきりしているのに対し、メラノーマはギザギザ、ぼんやりしている。
3. 色:ほくろは均一であるのに対し、メラノーマはむらがある。
4. 大きさ:ほくろは6ミリ以下であるのに対し、メラノーマは6ミリ以上ある。
5. 隆起:一部のほくろは隆起するが、メラノーマは進行すると隆起する。

 なお、褐色の色素斑には「日光黒子(こくし)」、別名「老人性色素斑」というものがあります。その名の通り加齢とともに起こりやすく、紫外線が大きく影響します。メラノーマと似たような症状があり見分けにくいですが、良性の腫瘍です。さらに、日光黒子の一種で隆起してくる「脂漏性角化症」などを正確に判別するには、専門医を受診し、ダーモスコピー(皮膚表面の乱反射を取り除き、約10倍に拡大して色素性病変を診断する医療器具)によって検査を行うことが必要です。

 悪性黒色腫(メラノーマ)の治療には、がんを全て切除するのが基本です。がんの周辺には目に見えないがん細胞がある可能性もあるため、がんの端から3ミリから2センチほど外側までを切除します。このほか、がんが最初に転移するリンパ節であるセンチネルリンパ節を生検して、その部分のみ、あるいはその周辺のリンパ節を切除するリンパ節郭清(かくせい)と呼ばれる治療法などが用いられたりすることもあります。

2.基底細胞癌の特徴と治療法

 基底細胞癌は、悪性黒色腫(メラノーマ)よりも発症率の高いがんで、毛を包む組織である毛嚢(もうのう)から発生すると考えられています。多くは鼻や瞼といった顔面の中央に起こり、表面に光沢があり、黒くつやつやとした腫瘍です。中心が潰瘍化したり、毛細血管が拡張したり、周囲の組織を破壊しながら進行します。

 治療には主に手術による切除が用いられます。生命予後は極めて良いとされていますが、放置するとその部分を破壊しながら際限なく大きくなっていきます。長年の間に目や口や鼻が変形したり、なくなってしまったりする場合もまれにありますので完全に切除することが大切です。

3.有棘(ゆうきょく)細胞癌とその類症の特徴と治療法

 皮膚がんのうち赤くなるものとして「有棘細胞癌とその類症」があり、皮膚がんの中で最も発症頻度が高く、全体の約3割を占めます。これは表皮を構成する角化細胞から発症するがんです。この類症として「日光角化症」や湿疹と誤診されやすい「Bowen(ボーエン)病」があります。これらを放置すると有棘細胞癌に進行します。
 日光角化症は、慢性的に日光(紫外線)のよくあたる顔などに発症する皮膚がんの前癌病変で、高齢者に起こりやすいことから「老人性角化症」とも呼ばれ、かさつきのある紅斑が特徴です。かゆみがあまりない一方で、数か月以上治らない、境界が不明瞭といった特徴があります。治療には薬物療法、凍結療法などが用いられます。

 有棘細胞癌も日光角化症同様、日光に長く露出することが最大の誘因とされます。また、やけどなどの瘢痕(はんこん)や慢性の皮膚潰瘍などが原因となることもあります。治療には転移がなければ手術による切除が行われます。転移があったり手術が困難な場合には、放射線療法や化学療法などが用いられます。

 以上述べてきたように、皮膚がんの予防には日光(紫外線)を必要以上に浴びることを避けることが大事です。日焼け止めを日ごろから使うなどするように心がけましょう。そして、ほくろと皮膚がんの見分け方を参考にして、ご自身や身近な人に気になる症状がある場合は、専門医に相談しましょう。「早期発見・早期切除」が皮膚がん対策の何よりの近道です。
以上

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