プレスリリース 発行No.797 平成29年7月25日
骨盤臓器脱、及び骨盤臓器脱に良好な結果をもたらしている手術法について
東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター長 泌尿器科学講座教授 永尾光一の開発による、自家組織(真皮)を用いた骨盤臓器脱手術(真皮移植法:永尾法)が、手術を行った患者さんに対して良好な結果をもたらしています。
現在、成人女性の3人に1人は骨盤臓器(膣、子宮頸部、子宮、膀胱、尿道、直腸など)の臓器脱に罹患すると言われており、80歳までに、10人の女性に1人以上が骨盤臓器脱手術を受けています。
本レポートでは骨盤臓器脱について、及び永尾教授が開発した自家組織(真皮)を用いた骨盤臓器脱手術についてわかりやすくお伝えします。
記
現在、成人女性の3人に1人は骨盤臓器(膣、子宮頸部、子宮、膀胱、尿道、直腸など)の臓器脱に罹患すると言われており、80歳までに、10人の女性に1人以上が骨盤臓器脱手術を受けています。
本レポートでは骨盤臓器脱について、及び永尾教授が開発した自家組織(真皮)を用いた骨盤臓器脱手術についてわかりやすくお伝えします。
1.骨盤臓器脱とは
骨盤底の筋肉や組織が骨盤臓器を支え上げられなくなり、骨盤臓器の正常な位置からの脱落(脱出)が生じることを骨盤臓器脱と呼びます。骨盤臓器には、膣、子宮頸部、子宮、膀胱、尿道、直腸などがあり、最も骨盤臓器脱になりやすい臓器は膀胱です。
2.骨盤臓器脱の原因は
骨盤臓器を支え上げているのは、骨盤底の筋肉、靱帯、及び筋膜の厚い部分ですが、骨盤底の筋肉が弱くなると靭帯と筋膜だけでは支えられなくなり、緩んで骨盤臓器が下垂して膣壁を押し出します。
要因には、重労働、多くの出産、加齢(特に閉経後)、肥満、便秘、喫煙、骨盤底手術、膠原病、遺伝などがあります。
要因には、重労働、多くの出産、加齢(特に閉経後)、肥満、便秘、喫煙、骨盤底手術、膠原病、遺伝などがあります。
3.骨盤臓器脱の種類
① 膀胱瘤および尿道瘤
膀胱瘤は、膀胱が膣の前壁に脱出し排尿障害を伴うこともあります。
尿道瘤は、尿道が膣の前壁に脱出します。
② 直腸瘤
直腸の一部が膣の後壁に脱出し、排便困難になることがあります。
③ 子宮脱
子宮が膣に脱出します。
④ 小腸瘤(膣断端脱)
子宮摘出術を受けた女性で子宮があった場所の膣が脱出する状態、及び膀胱、直腸、小腸を巻き込む状態で、
小腸を巻きこむことが多く、小腸瘤と呼ばれます。
膀胱瘤は、膀胱が膣の前壁に脱出し排尿障害を伴うこともあります。
尿道瘤は、尿道が膣の前壁に脱出します。
② 直腸瘤
直腸の一部が膣の後壁に脱出し、排便困難になることがあります。
③ 子宮脱
子宮が膣に脱出します。
④ 小腸瘤(膣断端脱)
子宮摘出術を受けた女性で子宮があった場所の膣が脱出する状態、及び膀胱、直腸、小腸を巻き込む状態で、
小腸を巻きこむことが多く、小腸瘤と呼ばれます。
4.骨盤臓器脱の症状
骨盤臓器脱の症状には以下のようなものがあります。なお、健診で発見された軽度の骨盤臓器脱では、全く症状がないこともありますので、注意が必要です。
①圧迫感・痛み・出血・悪臭
最も一般的な苦痛は、圧迫感、下垂感、痛み、出血、悪臭、下肢疲労感、腰痛です。
②排尿障害
膀胱瘤、尿道瘤、子宮脱で腹圧性尿失禁や排尿困難になることがあります。
③排便障害
肛門括約筋の真上の直腸にポケットができ排便障害を起こすことがあります。排便時痛、圧迫感、便秘の原因となることがあります。
④性交障害
骨盤臓器脱では、膣粘膜が易刺激性(過敏に)になり、性交中の痛みや心理的ストレスを引き起こします。
①圧迫感・痛み・出血・悪臭
最も一般的な苦痛は、圧迫感、下垂感、痛み、出血、悪臭、下肢疲労感、腰痛です。
②排尿障害
膀胱瘤、尿道瘤、子宮脱で腹圧性尿失禁や排尿困難になることがあります。
③排便障害
肛門括約筋の真上の直腸にポケットができ排便障害を起こすことがあります。排便時痛、圧迫感、便秘の原因となることがあります。
④性交障害
骨盤臓器脱では、膣粘膜が易刺激性(過敏に)になり、性交中の痛みや心理的ストレスを引き起こします。
5.骨盤臓器脱の手術以外の治療法について
症状が軽度な場合は体の負担が少ない以下の治療法があります。体重を減らし、重いものを持ち上げないようにし、禁煙することで骨盤臓器脱の進行を抑制することはできますが、症状が重くなった場合は手術をお勧めします。
①骨盤底筋体操
骨盤臓器脱が軽度であまり症状が強くない女性は、骨盤底を強化する一連の筋肉収縮運動である「ケーゲル体操」を行うことで、進行を遅らせることができます。
ケーゲル体操は、ガスの通過を防ぐために使用する肛門括約筋と、排尿を止めるために締めつける尿道括約筋の2種類の骨盤底筋を同時に収縮させて強化するものです。はじめは、肛門括約筋と尿道括約筋を同時に3~5秒間収縮させ、その後同じ時間休みます。次には、最大10秒間収縮させた後、10秒間休みます。この動作10回を1クールとして、1日3~4クール(合計30-40回)行います。いずれも収縮させるのは肛門と尿道で、腹筋は収縮させないようにします。
②フェミクッション装着(体外式骨盤臓器脱治療用具)
手術適応ではなく、または今後挙児希望のある場合に使用されるもので、体外式骨盤臓器脱治療用具(柔軟性のある半球状クッション)を膣口にあてがうことで脱出部位を膣内に押しとどめ、違和感を改善するものです。クッションを適切な位置に保持するためのサポート機能を持った専用の下着を用います。
③ペッサリー装着(体内式骨盤臓器脱治療用具)
手術適応ではなく、または今後挙児希望のある場合に使用される体内式骨盤臓器脱治療用具(膣内に留置することで臓器の下垂を抑える器具)を装着するもので、素材はポリ塩化ビニール、シリコンなどでできています。高度の臓器脱には2つ使うこともあります(ダブルペッサリー)。骨盤臓器脱には、発症の可能性が高い合併症として膣壁びらん、出血、膣壁癒着、帯下の増加、尿路感染などがありますが、これらを防止するためには器具の自己脱着を行うことも必要です。
④エストロゲン軟膏
骨盤臓器脱は閉経後に多く見られます。更年期は、エストロゲンレベルが低下し、膣の乾燥を招く可能性があります。膣の乾燥が問題である場合は、エストロゲン療法について検討します。外科手術の前にエストロゲンで治療する場合があります。
①骨盤底筋体操
骨盤臓器脱が軽度であまり症状が強くない女性は、骨盤底を強化する一連の筋肉収縮運動である「ケーゲル体操」を行うことで、進行を遅らせることができます。
ケーゲル体操は、ガスの通過を防ぐために使用する肛門括約筋と、排尿を止めるために締めつける尿道括約筋の2種類の骨盤底筋を同時に収縮させて強化するものです。はじめは、肛門括約筋と尿道括約筋を同時に3~5秒間収縮させ、その後同じ時間休みます。次には、最大10秒間収縮させた後、10秒間休みます。この動作10回を1クールとして、1日3~4クール(合計30-40回)行います。いずれも収縮させるのは肛門と尿道で、腹筋は収縮させないようにします。
②フェミクッション装着(体外式骨盤臓器脱治療用具)
手術適応ではなく、または今後挙児希望のある場合に使用されるもので、体外式骨盤臓器脱治療用具(柔軟性のある半球状クッション)を膣口にあてがうことで脱出部位を膣内に押しとどめ、違和感を改善するものです。クッションを適切な位置に保持するためのサポート機能を持った専用の下着を用います。
③ペッサリー装着(体内式骨盤臓器脱治療用具)
手術適応ではなく、または今後挙児希望のある場合に使用される体内式骨盤臓器脱治療用具(膣内に留置することで臓器の下垂を抑える器具)を装着するもので、素材はポリ塩化ビニール、シリコンなどでできています。高度の臓器脱には2つ使うこともあります(ダブルペッサリー)。骨盤臓器脱には、発症の可能性が高い合併症として膣壁びらん、出血、膣壁癒着、帯下の増加、尿路感染などがありますが、これらを防止するためには器具の自己脱着を行うことも必要です。
④エストロゲン軟膏
骨盤臓器脱は閉経後に多く見られます。更年期は、エストロゲンレベルが低下し、膣の乾燥を招く可能性があります。膣の乾燥が問題である場合は、エストロゲン療法について検討します。外科手術の前にエストロゲンで治療する場合があります。
6.骨盤臓器脱の手術法について
骨盤臓器脱のある女性で、不快感や痛みを伴い生活の質を損なう場合には外科手術が推奨されます。手術を推奨する場合は、①どの臓器が脱出したか、②脱出の重症度、③将来子供を産む予定があるか、④年齢、⑤性的活動、⑥自覚症状の重症度、に考慮すべき必要があります。
骨盤臓器脱の手術には、膣からと腹部からのアプローチがあり、人工メッシュを使わない従来手術(膣壁形成術、子宮摘出)と人工メッシュ手術があります。人工メッシュ手術には、①骨盤臓器脱のための経膣人工メッシュ、②骨盤臓器脱のための経腹人工メッシュ、③腹圧性尿失禁のための人工メッシュスリングの3種類がありますが、経膣人工メッシュ手術では、術中合併症として膀胱損傷、尿管損傷、直腸損傷、出血が、また術後合併症として感染、人工メッシュびらん・露出・周辺臓器への露出、慢性的な疼痛、排尿障害などが挙げられています。また、骨盤臓器脱は尿漏れ(失禁)を伴うこともあり、そのような場合には手術中に人工メッシュスリングを用い、予防または減少させるための処置を行うことがあります。
骨盤臓器脱の手術には、膣からと腹部からのアプローチがあり、人工メッシュを使わない従来手術(膣壁形成術、子宮摘出)と人工メッシュ手術があります。人工メッシュ手術には、①骨盤臓器脱のための経膣人工メッシュ、②骨盤臓器脱のための経腹人工メッシュ、③腹圧性尿失禁のための人工メッシュスリングの3種類がありますが、経膣人工メッシュ手術では、術中合併症として膀胱損傷、尿管損傷、直腸損傷、出血が、また術後合併症として感染、人工メッシュびらん・露出・周辺臓器への露出、慢性的な疼痛、排尿障害などが挙げられています。また、骨盤臓器脱は尿漏れ(失禁)を伴うこともあり、そのような場合には手術中に人工メッシュスリングを用い、予防または減少させるための処置を行うことがあります。
7. 自家組織(真皮)を用いた骨盤臓器脱手術(真皮移植法:永尾法)について
骨盤臓器脱手術には、人工メッシュを用いた経腟や腹腔鏡などの手術法がありますが、上記のような合併症のリスクがあることに加え、患者さんの中には異物挿入や腹腔鏡手術を怖がる方も少なくありません。そこで、永尾教授は人工メッシュを使わない骨盤臓器脱手術方法に新たに自家組織(真皮)移植法を追加して、安全性と有効性を高める方法を開発しました。真皮移植法(永尾法)は、真皮に裏面(膀胱側)と表面(膣粘膜側)の両側から血流が供給されるので真皮の生着率が高く、また、真皮移植片・膀胱・子宮を非吸収糸で骨盤筋膜腱弓や仙棘靭帯などの硬い組織に確実に釣り上げるので安全性と有効性の高い手術です。
術後の生活の質等を総合的に勘案すると、将来子供を産む予定がある年齢層の女性にとっては、特に有用な手術法であると考えられます。
真皮移植は、形成外科領域や生殖手術領域で確立した手術法です。わき腹の余った皮膚から表皮が残存することのないよう、丁寧に表皮を剥がします。表皮が残存した場合は、アテローム(粉瘤)ができる可能性が考えられますが、東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンターでの手術では、これまで発生はありません。一方、皮膚採取部の傷跡は、脇腹の余った皮膚を使用するため変形は起こりません。また、傷跡は形成外科的に丁寧に縫合しますので、細い線が残る程度でほとんど目立ちません。
真皮移植法は、頻度と再発リスクが高い膀胱瘤手術に最も適していますが、子宮脱、直腸瘤や小腸瘤にも有用と考えています。
術後の生活の質等を総合的に勘案すると、将来子供を産む予定がある年齢層の女性にとっては、特に有用な手術法であると考えられます。
真皮移植は、形成外科領域や生殖手術領域で確立した手術法です。わき腹の余った皮膚から表皮が残存することのないよう、丁寧に表皮を剥がします。表皮が残存した場合は、アテローム(粉瘤)ができる可能性が考えられますが、東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンターでの手術では、これまで発生はありません。一方、皮膚採取部の傷跡は、脇腹の余った皮膚を使用するため変形は起こりません。また、傷跡は形成外科的に丁寧に縫合しますので、細い線が残る程度でほとんど目立ちません。
真皮移植法は、頻度と再発リスクが高い膀胱瘤手術に最も適していますが、子宮脱、直腸瘤や小腸瘤にも有用と考えています。
本件の真皮移植法(永尾法)については、第19回日本女性骨盤底医学会(2017年7月29日~30日、於:福井市)の中で現状報告が行われる予定です。
以上
本リリースの配信元
学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16 TEL 03-3762-4151 FAX: 03-3768-0660
E-mail:press[@]toho-u.ac.jp URL: http://www.toho-u.ac.jp
※E-mailはアドレスの[@]を@に替えてお送り下さい。