プレスリリース

メニュー

プレスリリース 発行No.790 平成29年7月3日

東邦大学医療センター大森病院眼科講師 松本 直が
第42回小児眼科学会で第13回日本小児眼科学会賞を受賞

 去る2017年6月16日から18日に金沢市で開催された、第73回日本弱視斜視学会総会・第42回日本小児眼科学会総会合同学会において、東邦大学医療センター大森病院眼科講師松本 直(小児眼科外来⦅未熟児、斜視⦆・神経眼科外来担当)が第13回日本小児眼科学会賞を受賞しました。また、合わせて「正常新生児の眼血流変化」をテーマに受賞記念講演を行いました。
受賞した論文は、「Matsumoto T, Itokawa T, Shiba T, Katayama Y, Arimura T, Hine K, Mizukaki N, Yoda H, Hori Y. Ocular blood flow values measured by laser speckle flowgraphy correlate with the postmenstrual age of normal neonates. Graefes Arch Clin Exp Ophthal. 254: 1631-1636, 2016」で、正常新生児の早期における眼循環の変化について検討したものです。 新生児用に改良した、レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)を用いて安静時の視神経乳頭における眼血流を計測し、その血流値であるMBRと検査時の修正日数、体重との相関を検討。血流値は修正日数と相関を認めたものの、体重とは有意な結果は示さなかったことから、眼循環は全身循環量の指標である体重よりも、修正日数に影響をうけ、眼球発達と関係していると考えられると結論しました。 この研究は、今後新生児の眼循環変化をきたしていると考えられる未熟児網膜症の診断や、治療効果判定に眼循環測定が有効である可能性を探るための第一歩となると考えられます。
 受賞記念講演は、下記のとおりです。
演題名: Ocular blood flow values measured by laser speckle flowgraphy correlated with the postmenstrual age of normal neonates.
ショートタイトル:正常新生児の眼血流変化
本文:
 新生児の眼血流動態を研究することにより、未熟児網膜症のような新生児眼疾患と眼血流の関係が解明できる可能性がある。現在までカラードップラーイメージングを用いて、眼動脈の血流速度測定が行われてきた。しかし、現在まで明確な知見はない。我々は過去に改良型レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)を用いる事により、新生児眼血流測定が可能であり、その結果に再現性が良好(変動係数10%以下、級内相関係数0.8以上)であることを報告した。LSFGは眼血流を非侵襲的に測定が可能であり、眼内に照射したレーザー光が、網膜および脈絡膜内の赤血球から反射されるスペックルパターンの変化に基づき、赤血球の相対速度を測定することができる。測定結果はMean blur rate(MBR)で示され、相対値での評価となる。
 今回、我々はLSFGを用いて新生児の視神経乳頭血流を測定し、検査施行時の妊娠修正日数、体重との関係を検討した。対象は東邦大学医療センター大森病院で出生し、2015年3月~12月までに眼底検査依頼のあった児、24例24眼(男児:女児=11:13)、妊娠修正日数248〜295日(267.5±13.9日);34~42週、体重1667〜3314g(2245.3±387.3g)に検査を行った。検討には、初回検査の結果を使用した。未熟児網膜症などの眼底疾患を認めた児は除外した。仰臥位、睡眠時の視神経乳頭のMBRを測定し、視神経乳頭全体(MBR-A)、血管領域(MBR-V)、組織領域(MBR-T)を算出した。研究は東邦大学倫理委員会承認(♯27-19)のもと行った。
 妊娠修正日数と視神経乳頭のMBRとの間に正の相関(MBR-A;r=0.64,p=0.0007、MBR-V;r=0.62,p=0.0012、MBR-T;r=0.62,p=0.0012)を認めた。体重とMBR に相関は認めなかった。この事は視神経乳頭の眼血流が、全身の成長による循環の変化よりも日数の変化による網膜血管の伸展などの眼球発達に関与していると考えられ、新生児眼血流測定が眼球、網膜循環の成長の指標となる可能性が示唆された。また、この研究結果が新生児初期の眼血流の標準値を定義し、未熟児網膜症の眼血流研究の第一歩となると考えられる。
利益相反公表基準:該当なし
松本 直(まつもと ただし)
<略歴>
1998年 東邦大学医学部 卒業
1998年 東邦大学医学部眼科学講座 入局
2004年 西横浜国際総合病院眼科医長
2006年 東邦大学医療センター大森病院 眼科病院助手
2008年 東邦大学医学部助教
2012年 東邦大学医療センター大森病院 講師(病院)
2016年 東邦大学医学部講師
     現在に至る

以上

リリースに関するお問合せ

学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 大田区大森西5-21-16  TEL 03-3762-4151  FAX: 03-3768-0660
E-mail:press[@]toho-u.ac.jp  URL: http://www.toho-u.ac.jp
※E-mailはアドレスの[@]を@に替えてお送り下さい。