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プレスリリース 発行No.785 平成29年6月22日

- 加齢によって起こりやすい眼の病気 -
~ 定期検診による早期発見・早期治療が治療の第一歩 ~

東邦大学医療センター大森病院眼科(大田区大森西6-11-1、教授:堀裕一)では、東京城南地区の眼科医療の中核として、最新の手術機械・技術による質の高い眼科医療を目指しています。
眼は体の中では小さな器官ですが、「人間が得る情報の80%は視覚を通して入ってくる」ともいわれ、その重要性は極めて高いものです。しかし、加齢とともに視力が下がったり、視野が狭くなったりといった問題が生じることがあります。こうした眼の異常によって日常生活に影響が及ぶことも少なくありません。
当レポートでは、眼の病気の中で加齢によって症状が出やすい「白内障」、「緑内障」そして眼底疾患の中から「加齢黄斑変性」を取り上げ、その原因や治療法についてわかりやすくお伝えします。

1.白内障の原因と治療法

私たちの眼はよくカメラに例えられます。「水晶体」がレンズ、「網膜」がフィルムに相当します。加齢などで水晶体が濁ることで、光の通り道がさえぎられることで視力が低下するのが「白内障」です。白内障はその原因によって分類されますが、加齢性(老人性)白内障は最も患者さんが多く、誰にでも起こる病気です。

「かすんで見える」、「まぶしく感じる」、「暗くなると見えにくくなる」、「一時的に近くが見えにくくなる」、「二重、三重に見える」などといった自覚症状がある場合は白内障の可能性があり、早めの診断が必要です。白内障の診断や治療に必要な検査には以下のものがあります。

  • 視力検査
    眼鏡やコンタクトレンズによって矯正した視力を「矯正視力」といいますが、検査でメガネを変えても視力が上がらない(矯正視力が低下している)場合、眼の病気の疑いがあります。
  • 眼圧検査(緑内障の項を参照)
  • 散瞳検査(水晶体検査・眼底検査)
    水晶体の濁りの程度を検査します。この検査では瞳孔を広げて行う散瞳(さんどう)検査が行われます。強制的に眼を広げる検査用点眼を使用します。
白内障の治療には水晶体再建術を行います。 これは、濁った水晶体を人口水晶体(眼内レンズ)に取り換える手術です。 近年では、切開幅が3 ミリ程度と小さく、縫合の必要がなくなりました。 また、使われる眼内レンズが柔らかい素材になったため、小さく折りたたんで挿入したりすることが可能になり、患者さんの心理的、肉体的な負担が軽減しています。

手術で用いられる眼内レンズは直径6 ミリ程度の単焦点レンズです。濁りの部分を取り除いた後に挿入されます。 なお、保険適応外診療になりますが、遠くも近くも見えやすくなり眼鏡に依存せずに済む「多焦点眼内レンズ」もあります。

白内障の手術は国内で年間約100 万件行われ、多くの人が視力を取り戻していますが、まれに「眼内炎」といわれる感染症にかかったり、外傷や打撲で眼内レンズがずれたりすることがありますので、日常生活にも注意が必要です。 また、術後の点眼も重要です。

2.緑内障の原因と治療法

眼球の内側にある網膜で得られた視覚情報は、視神経を通って脳に伝達されます。 ここで初めて私たちは「ものが見えた」と感じることができます。 しかし、この視神経に問題が生じると視力や視野に支障が出てきます。 「緑内障」はこの視神経の障害によって起きる病気です。 40 歳以上の17 人に1 人(約6%)が発症するといわれ、成人の失明原因のトップでもあります。

眼の内圧のことを「眼圧」といい、この数値に異常がなければ眼球の張りや形が保たれ、正常な視機能を維持できます。 眼球の中には「房水(ぼうすい)」という透明な液体が循環しており、これが眼圧を一定にコントロールする役割を果たしています。 房水は眼の中で産生と流出が絶えず繰り返されており、10~21 ㎜ Hg の間で保たれていると正常眼圧とされます。 しかし、緑内障になると房水の産生と流出のバランスが崩れて眼圧が上昇し、視神経が圧迫されて視野が欠けるといった症状が現れます。

「原発緑内障」は緑内障の中でも最も多く、房水の詰まり方の違いによって、「開放隅角(ぐうかく)緑内障」と「閉塞隅角緑内障」に区分されます。 どちらも進行を食い止めるには眼圧のコントロールが治療の基本です。 緑内障の診断や治療に必要な検査には以下のものがあります。

  • 眼圧検査
    圧縮した空気を角膜に吹きつけて測定する方法や、角膜の表面に眼圧計を接触させて測定する方法があります。 緑内障の診断や治療方針を決めるうえで最も大事な検査です。
  • 隅角(ぐうかく)検査
    肉眼ではわからない眼の異常を発見するのに行われる検査です。 開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障を見分けることができます。
  • 眼底検査
    網膜や視神経といった眼底の状態を調べるための検査です。緑内障の場合、視神経線維の萎縮や視神経乳頭の陥没が見えます。
  • 視野検査
    一方の眼で真ん中を注視した時に見える範囲を視野といい、視野狭窄の程度を調べるための検査です。
緑内障の中で最も患者さんの数が多い開放隅角緑内障の治療は点眼薬が基本です。 これによって眼圧を降下させます。 点眼薬には房水の流出を促進するものやこの産生を抑制するものなどがあるほか、近年は新しい薬も使用されています。 薬物治療で効果が見られない場合は、レーザー光治療や手術によって房水の流れを正常化します。

なお、瞳孔が開きやすくなったり、副作用で眼圧上昇を起こしたりする薬剤がありますので、緑内障の治療を行っている患者さんが他の病気の治療で薬を服用する場合、特に注意が必要です。

3.加齢黄斑変性

網膜の中心部にある黄斑(おうはん)に年齢を重ねることで支障が出てくる病気のことを「加齢黄斑変性」といい、網膜の外側の膜(脈絡膜)から伸びてくる「新生血管」が網膜に侵入してくることによって起こります。
新生血管はもろく、出血することもありますが、この新生血管が黄斑に悪影響を及ぼし、視機能の低下を招きます。
一般にはなじみの薄い病名ですが、誰でも発症する可能性があり、適切な治療をしないと失明の原因につながることもあります。
3.加齢黄斑変性

視機能が正常に働かなくなるため、「直線が歪んで見える」、「中心が暗く見える」、「ぼやけて見える」といった症状が現れます。視野の中心部に異常が起き、周辺部は正常なことが多いのが特徴です。高齢化の進展につれて近年増加しており、特に60歳以降に急激に増える病気とされます。

加齢黄斑変性の検査では、眼の奥に光をあてて網膜を直接観察する眼底検査で血管の状態を調べることが大事です。血管の状態把握のために、腕の静脈から蛍光色素の入った造影剤を注入して眼底カメラで観察する「蛍光眼底造影」という方法が用いられます。このほか網膜の層構造を断面的に観察できる「光干渉断層計」という検査法もあります。

加齢黄斑変性の治療には「抗血管新生薬療法」という新生血管の成長を活発化させる物質(VEGF、血管内皮細胞増殖因子)の働きを薬で抑制する方法が用いられます。薬物治療で効果がない場合はレーザーを用いたり、手術を行ったりします。

眼の異常が起きても、痛みがなければ放置している人が少なくありません。日常生活に支障がなければ、放置してしまうこともあるでしょう。しかし、緑内障や加齢黄斑変性は、早期発見、早期治療がとても重要です。日ごろから生活習慣の改善を心がけ、定期的に眼科での検診を行うようにすることが、長く健康な眼を維持するための秘訣です。

以上

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