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プレスリリース 発行No.589 平成27年4月16日

東邦大学メディカルレポート
 脳震盪の知識とその対処法について
~ 新学期を迎え、スポーツで起こる脳震盪に対する正しい知識を ~

 東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科(東京都目黒区大橋2-17-6、診療部長:岩渕 聡)では、スポーツ頭部外傷の多くの診療例・治療例から、スポーツを通じて起こる頭部へのダメージについての様々な知見蓄積に努めています。
 新学期となり学校体育や運動部で新たな活動が始まる4月から5月にかけては、例年、体育の授業や部活動で脳震盪の発症例が増加する時期でもあります。
体を直接ぶつけ合うスポーツ以外にも、チアリーディングや運動会での組み体操などでは、落下により脳震盪を起こす危険があることも指摘されています。
 新入学生を迎えるこの時期は、生徒間での体格の差やスポーツ経験の差も大きく、学校でのスポーツによって脳震盪が起こりやすく、指導者をはじめとした関係者には正しい知識をもって対処することが求められます。当レポートでは、脳震盪の正しい知識とその対処法について、医療機関の立場からまとめてお知らせします。

●脳震盪が起こりやすいのは

上半身や頭部への強い衝突や接触の機会が多いラグビーやアメリカンフットボールはもとより、サッカーやバスケットボールのように接触の結果転倒したり、バレーボールのように飛び込むプレーが多いものなど、直接・間接を問わず頭部に衝撃を及ぼす可能性の高いスポーツでは他のスポーツに比べ脳震盪を起こす危険性が高くなります。
近年女子のスポーツが急速に多様化し、サッカーやラグビーの競技人口が増加していますが、これらのスポーツにおいては、男子と同様に衝突や接触により脳震盪を起こすケースが増えています。

月別では、新年度で練習がスタートする5月、及び夏休みで合宿や対外試合の多い8月に脳震盪の発生が多いことがわかります。

●脳震盪の症状とは

脳震盪の主な症状は、頭痛、めまい、ふらつき、力が出ない、集中できない等です。
意識の消失は重要な自覚症状ですが、脳震盪の9割以上は発症していても実際には意識を失っておらず、そのため、本人や周囲が脳震盪であると自覚・認識することなく、引き続き運動を行うことも多く、このことが繰り返して脳震盪を発症する危険を大きくすることに繋がっています。

発症の程度には個人差があります。症状が軽いからといって脳震盪を発症していないとは限りません。個々人の普段の状態との差がどの程度あるかをよく見極めこと、及びその変化を見逃さないことが重要です。

●脳震盪の怖さ

脳震盪は繰り返す“癖”がつきやすく、3回以上繰り返した場合には癖がついている可能性が考えられます。
脳震盪を繰り返すことで、軽い衝撃で頭痛やふらつきを自覚するようになったり、若くして認知症や怒りやすくなるなどの性格変化を呈したり、ひどい場合は重い障害が残ったり、さらには頭蓋内の出血などが原因で死に至ることもあります。
多くの場合外見だけでは異常が確認できないため、病院でCTやMRIを取るなどの適切な処置を受けずに、そのままやり過ごしてしまうことに起因しています。

●脳震盪を起こしたらどう対処するべきか

まずは、練習や試合からすぐに外れることが一番です。
その上で、できるだけ早く専門の医療機関で診断を受け、脳震盪が起こる原因を見つけ出すことが大切です。
一方で、頭痛やめまいが治ってもすぐに運動を再開するのは危険です。
再開するためには適切な回復期間を置くとともに、脳震盪発症のリスクが高い練習メニューを避けるなどの適切な対策を講じた上で、徐々に運動負荷を上げていく段階的復帰を行っていくことが必要です。

●学校体育や運動部、クラブ関係者が留意するべき点について

脳震盪の9割以上は意識を失わないことでもわかるように、外見では判断がつかないことも多く、また個々人の身体能力や、その時々の健康状態によっても差が生じるということを認識する必要があります。
脳震盪の疑いを見極めるためには、ひとり一人の日頃の状態をよく把握しておき、通常の状態とどの程度差が出ているかを把握することが重要です。
万一のために、普段から受診する医療機関を決めておくことも大切です。

過去に脳震盪に対処した経験を持つ指導者や関係者は知見を有していますが、多くの場合はそのような経験がないままに症状の見極めや判断を迫られることとなります。
そのような時には楽観的な判断をせずに、できるだけ早く専門の脳神経外科で受診することが大切です。


■東邦大学医療センター大橋病院では、脳震盪をはじめとしたスポーツ頭部外傷に関し、脳神経外科の中山晴雄講師を中心としたチームが専門的な診療にあたっています。

以 上

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