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プレスリリース 発行No.616 平成27年7月29日

東邦大学メディカルレポート
 
 夏休みの海外旅行での健康管理のポイントについて
~ 楽しい旅行にするための健康管理とは ~

 東邦大学羽田空港国際線クリニック(所長:高木 賢治)では、羽田空港の国際線ターミナルにおいて、旅行者の病気・けがの治療や、必要に応じた専門施設への搬送等、旅行者の安心・安全と健康の管理にあたる中で、多くの診療例・治療例から海外旅行の前後における健康管理の在り方についての知見蓄積に努めています。
 夏休みやお盆休みを利用した海外への旅行に際しての健康管理のポイントを、医療機関の立場からのアドバイスと合わせて、まとめてお知らせします。

●海外旅行出発のおよそ1週間前からの健康管理のポイント

① 出発の数日前からは、栄養、睡眠を十分にとって健康状態を良好に保ち、抵抗力をつけておくことが大切です。
夏の夜は寝苦しく、寝ている間に汗をかきやすいため、高齢者はもとより、高齢者でなくても脱水症状を起こしやすくなります。
寝不足と脱水は夏の健康を損なう大きな要因です。お酒の飲み過ぎにも注意しながら、寝る前には適度な水分補給を心がけるようしましょう。
 
② 出発前には自分の健康状態をチェックしましょう。
気候の違いや旅先での食事などは旅行の大きな目的や楽しみでもありますが、体調面での変化要因ともなりますので、出発時の健康状態には注意を払うことが必要です。
普段かかりつけの医師がいる人は、旅行に関して相談しましょう。
持病がある場合は、常用薬を準備し機内に持参しましょう。
事前にかかりつけ医に受診できなかった場合でも、一般的な薬であれば空港内の医療機関で処方してもらうことは可能です。

③ 渡航する先で、どのような感染症が流行しているのかなど、事前に情報を得ておきましょう。
出かける国やエリアについて、外務省や厚生労働省がホームページで注意喚起していないかどうかを必ず確認し、注意喚起されている場合、どのようなことに気をつけるべきかを確認し、適切な準備と対処をすることが大切です。

(参考) 現在注意喚起が行われている感染症:中東呼吸器症候群(MERS)
中東呼吸器症候群(MERS)はウィルス性の感染症で、2012年に初めて確認され、中東地域をはじめ、ヨーロッパ・アフリカ・アジア・北米でも患者が報告されています。
主な症状は発熱、せき、息切れなどで、特に高齢者や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患がある人で重症化する傾向がみられます。

●旅行当日の健康管理のポイント

① 航空機内の気圧はおよそ0.8気圧で、これは富士山5合目の気圧に相当し、酸素量も地上より20%も少なくなっています。
また、湿度も5~15%とたいへん低く、サハラ砂漠よりも乾燥した状態になっています。軽く重ね着ができる衣類やマスクなどを用意して着用することで、風邪をひいたりしないようにしましょう。
 
② 6時間以上搭乗する場合、ロングフライト血栓症を発症する危険性があります。
これは、下肢の筋肉内の静脈である深部静脈に血栓(血の塊り)ができるもので、この塊りがはがれて静脈内を流れていき、心臓を経て肺に詰まると死に至ることもあるたいへん危険な病気です。  この血栓症を予防するには、機内で次のような工夫をすることも大切です。
   ・ゆったりとした服装で搭乗する。
       ・2~3時間毎に席を立って軽く機内を歩く。
       ・血行が悪くなるので、なるべく足を組まない。
   ・こまめに、かつ十分に水分をとる。
  
③ 格安航空会社の航空機を利用する場合は、早朝や深夜に出発する便も多く、その際にはラウンジで長時間過ごす必要があるなど、出発前に日頃とは異なる生活リズムになる場合があり、健康管理に注意が必要です。
    ・ゆったりと休息できる場所を確保して、リラックスして時間を過ごしましょう。
      可能なら空港付近のビジネスホテル等に前日宿泊するのをお勧めします。
      空港内のベンチ等で寝ることは、健康管理上あまり好ましくありません。
    ・十分な睡眠、水分の補給に努めてください。

●渡航先での過ごし方のポイント

① 暑い国に渡航する場合は、熱中症や脱水、過度な日焼けに注意しましょう。
日差しの強い国へ旅行する場合は、帽子や折り畳みの日傘を持参しましょう。
旅行先ではついついスケジュールを詰めてしまいがちですが、気分が悪い時は無理をせず休み、体調を回復させ余裕をもって行動しましょう。
 
② 生水を飲むことは避けましょう。
渡航先にもよりますが、水道水も必ずしも安全ではありません。
旅行先の水に信頼を持てないようであれば、飲み水として日本からミネラルウォーターを持参するのもよいでしょう。
また、食事は生ものを避けて、過熱した料理を摂るようにしましょう。
夏は、病原性大腸菌など菌が繁殖しやすい時期ですので、食事や飲料にはより一層の注意が必要です。

●帰国前日から帰国当日の健康管理のポイント


① 帰国前日にはつい食べ過ぎたり、睡眠時間を削ってまで観光したりしがちですが、機内での体調変化や、帰国してからの体調悪化の原因となることも少なくありません。
食事に気をつけ(例えば、辛いものを食べ過ぎないなど)、なるべく睡眠を十分にとっ
て帰国の途につくようにしましょう。
 
② 帰国当日に高熱や下痢症状がひどいままの状態で出発空港に着いた場合は、まず空港の検疫所に相談しましょう。
 
③ 小さな子供連れの旅行の場合には、さらなる注意が必要です。
 子供は自分で体調をコントロールしにくく、外部環境による体調変化も大人と比べてはるかに早く、激しくなりがちです。特に乳幼児の場合は、常に様子を確認し、こまめな水分補給としっかりとした食事を確保するようにしましょう。
 旅程や食事なども子供のペースで調整することを心がけることが大切です。
 
                                                             以上
 
東邦大学羽田空港国際線クリニック
羽田空港国際線旅客ターミナル1F

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