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プレスリリース 発行No.292 平成23年12月2日

絶滅危惧種:巻貝 オキヒラシイノミの新産地を発見

環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧Ⅰ類に指定されている巻貝 オキヒラシイノミの新産地を、東邦大学大学院理学研究科の多々良有紀さんが鹿児島県北部のヨシ原から発見しました。この報告は、軟体動物多様性学会 学会誌 「Molluscan Diversity」3巻1号(2011年10月発行)に掲載されました。 今回の発見は、本種を保護するために新産地を含めた周辺に残る生息環境を、包括的に保全する必要性があることを示唆するものです。
絶滅危惧種:巻貝 オキヒラシイノミの新産地を発見

 大きさ3cmほどの巻貝 オキヒラシイノミは、日本・中国南部・ベトナム北部に分布し、国内では山口県の日本海沿岸と九州北部~西部の日本海沿岸および東シナ海沿岸の限られた場所に分布しているとされています。
 本種は、環境省のレッドリストで最も絶滅の危険が高い「絶滅危惧Ⅰ類」に指定されています。確認されていた生息地が20箇所以下ともともと少なく、さらに分布域である山口・福岡・鹿児島各県では既に絶滅したと報告されているなど、危機的な状況にあります。

 本学大学院理学研究科の多々良さんは、河口域や岩礁域の潮間帯に生息する微小な巻貝の系統分類を研究しています。2011年10月7日、国立科学博物館のコレクションビルディングフェローシップ (研究者の協力を得て標本を戦略的に収集・充実させる取組み) での調査中に本種を鹿児島県北部のヨシ原で発見しました。なお、この場所はこれまで確認された中で、最南部に位置します。

 河口の汽水域に広がるヨシ原や海岸の飛沫帯・転石帯といった陸~海への移行帯は、近年の埋め立てや護岸化などの開発によって消失・分断されており、多くの貝類が減少傾向にあります。中でも本種は、分布域のほとんどの県で絶滅が報告されていたり絶滅危惧種に指定されたりしています。このように個体群維持に危機的な状況の中で、本種の新産地が発見されたことは、大変喜ばしいことです。
 限られた範囲に生息する本種を保全するためには、生息環境の維持が極めて重要であると考えられます。熊本県南部~鹿児島県北部には、今回発見された新産地のような河口や小規模な入り江が点在していることから、この地方を含む九州西岸の生息環境を包括的に保全する必要性があると示唆しています。

※本論文では、本種の希少性から貝殻収集家や標本販売業者等による乱獲が懸念されるため、新産地の詳細については非公開としています。
<論文タイトル> 鹿児島県で発見された絶滅危惧種オキヒラシイノミ
           (腹足綱:有肺目:オカミミガイ科)の新産地
<著者> 福田宏・多々良有紀
<掲載誌> Molluscan Diversity 3巻1号(2011年10月発行)

【取材・内容に関するお問い合わせ先】
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