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プレスリリース 発行No.252 平成23年9月8日

-東京湾のDead Zoneを探る-
ベントスの生存を確認 しかし貧酸素水域は形成
~東邦大・東京海洋大合同チーム担当分 結果報告(速報)~

 毎年 夏場に東京湾に発生する貧・無酸素水域の生物相を明らかにするため、2011年8月5日 羽田沖・東京港沖において、東邦大学が東京海洋大学と協働で調査を行いました。この時期、Dead Zone(無生物域)になっていると思われていた羽田沖では、底層にも酸素があり多毛類をはじめとする生物の生存が確認されました。しかし、東京港沖では貧酸素水域が形成されており、生物の生存は厳しい状態でした。
~東邦大・東京海洋大合同チーム担当分 結果報告(速報)~

 この調査は、国の機関をはじめ東京湾周辺の自治体、市民団体、大学・研究機関、民間企業等136機関が連携・協働して行われた東京湾水質一斉調査の一環として行われました(参照:2011年7月31日プレスリリースNo.242)。東京湾水質一斉調査は今年で4回目を迎えましたが、水質(特に貧・無酸素状態)の直接的な影響を受けるベントス(底生生物:カニや貝、ゴカイなど)については調べられていませんでした。そこで東邦大学理学部生命圏環境科学科 風呂田研究室では、東京海洋大学と協働で東京湾における貧・無酸素水域の生物相を把握するため、羽田沖において水質だけでなくベントス調査も合わせて行いました。

《結果について》

例年より高い溶存酸素量を確認

 本調査は、採泥機を用いて4か所の測点で行いました。その結果、4か所のうち2つの測点において貧酸素水域(溶存酸素量3mg/L以下)が確認されました。しかし例年の調査に比べ、溶存酸素量が全体的に高い値を示していました。表面水温が例年より5℃近く低い値(25~6℃)を示しており、表面-底層の温度差があまりなかったことから、例年より表面-底層の海水の混合が起こりやすい状態になっていたと思われます。そのため、貧・無酸素化の進行が抑えられていたと考えられます。しかしその後、非常に暑い日々が続いた(特に8月中旬)こともあり 貧・無酸素化が進行し、例年通り東京湾内湾部の広い範囲で底層の酸素濃度がほぼゼロの状態になっていた模様です(参考:千葉県水産総合研究センター 貧酸素水塊速報)。

ベントスの生存を確認

 Dead Zoneだと思われていた羽田沖において、種数・生物量ともに乏しいですが、ベントス(底生生物)が生存していました。確認された生物は多毛類(ゴカイの仲間)、キセワタの一種、クシノハクモヒトデであり、その中でも多毛類が優占していました。多毛類は一般に貧酸素状態に強い種類だとされています。
 採集された海底の底質はヘドロ状で、腐乱臭が漂いました。これは嫌気性細菌が生成する硫化物によるもので、海底の貧酸素状態を示しています。本調査ではベントスの生存が確認されましたが、東京湾内湾部では暑い日が続く夏場には毎年 海底の貧・無酸素化、それに伴う青潮が起こっているため、今年もDead Zoneを形成していると思われます。風呂田研究室では、このような調査を継続的に実施していく予定です。
※「2011年度 東京湾水質一斉調査」全体の調査結果は、9月末頃に東京湾再生推進会議のウェブサイトから発表される予定です。
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/TB_Renaissance/Monitoring/General_survey/index.htm

【お問い合わせ先】
東邦大学 経営企画部 広報担当 / 理学部 東京湾生態系研究センター   森上 需
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TEL/FAX:047-472-1159    M Phone: 090-8722-8471