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プレスリリース 発行No.213 平成23年4月28日

津波後、干潟の生物はどうなったのか?
~大きな影響を受けていた一方で、生残も確認~
日本貝類学会で報告

東邦大学理学部生命圏環境科学科の大越健嗣教授(石巻専修大学客員教授)は3月11日の大地震で津波が押し寄せた宮城県と福島県の海岸の変化や生物(特に貝類)の生息状況を調査し、九州大学で行われた日本貝類学会平成23年度大会(4月16~17日)の総会で発表しました。
 今回の調査で、津波が海岸の生物にも大きな影響を及ぼしていたことが初めて確認され、同時に浅海に生息する貝の一部については生き残っていることも明らかになりました。
日本貝類学会で報告
 大越教授は昨年8月まで宮城県石巻市にある石巻専修大学で宮城県と福島県の干潟をフィールドにして研究を行っていました(プレスリリース2011/4/7 参照)。そこで、地震・津波以前のデータが豊富な宮城県石巻市の万石浦と佐須浜、東松島市の東名浜、福島県相馬市の松川浦の4か所について、4月5日から10日まで緊急調査を行いました。

【東名浜(宮城県東松島市:写真左)】 津波で約3mの堤防が壊滅し、海岸には瓦礫や船、車が散乱していました。地震前にはアサリや外来生物のサキグロタマツメタなどの貝類が生息していましたが、4月5日の最大干潮時にも干潟はほとんど干出せず、海岸は赤土が露出し生物も確認できませんでした。
【松川浦(福島県相馬市):写真右】 アサリやアオノリ(ヒトエグサ)の産地として有名でした。外海と松川浦の間にある砂州は、道路とともに一部決壊し、外海とつながる新たな開口部ができていました(Google Earth 等で確認できます)。4月8日の最大干潮時には、松川浦にそそぐ宇田川河口では、通常は50cmぐらいまで深く潜るオオノガイとサビシラトリガイが多数干潟表面に打ち上げられ、一部はまだ生きていました(写真右、貝の奥は捜索中の自衛隊員)。一方で以前の調査時にみられた砂の浅いところに生息するイソシジミとソトオリガイは1個体も発見されませんでした。このことから、津波の影響で表層の砂とそこに生息していた生物は流され、深部に生息する生物が掘り出されたと考えられます。
【万石浦・佐須浜(宮城県石巻市)】 万石浦ではアサリやウミニナ、ホソウミニナなどは少数生きていることが確認されました。しかし、ここでも最大干潮時になっても潮はほとんど引かず、満潮時は周辺住宅の床上まで冠水するところがあります。佐須浜では、10年以上継続調査を行っていた岩盤表面では、固着しているマガキの多くが死滅し、付着性の貝のヒザラガイも生貝は1個体も発見できませんでした。ここでは、大量の瓦礫が岩盤の上をごろごろと動く間に、表面の生物が剥ぎ取られたり、貝殻が壊され死滅したものと考えられます。

 これまで、「貝は全滅、養殖施設は壊滅」という報道が複数ありましたが、浅海に生息する貝の一部は生き残っていることが、今回はじめて明らかになりました。一方、津波により大きなダメージを受けた種もいる可能性が示唆されました。また、津波の影響は海岸近くに生息するカタツムリのような陸貝や海水をかぶった水田や水路に生息するタニシのような淡水貝にも及ぶものと考えられます。本学では、東京湾も含め今後も継続して調査を行う予定です。

参照:プレスリリース

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