プレスリリース 発行No.207 平成23年4月21日
花粉の行方 ~受粉に使われなかった花粉はどこへゆく~
ヒトの鼻? 湖の底? もしくは 食べられる? … 明らかに
| 「湖面に落ちた花粉の一部が、ツボカビに利用されている」ことを理学部生命圏環境科学科 鏡味麻衣子講師とその共同研究者らの研究グループが明らかにし、この研究論文が米国の論文誌「Limnology and Oceanography」に受理され、2011年5月号に掲載されました。 |
マツやスギなど陸上植物が放出した花粉の一部は、湖沼に入ってきます。特に春先には湖面が黄色になるほどで、生態学(物質循環)的に湖沼への有機物負荷量としては軽視できません。従来、これらの花粉は分解されずに沈み、湖底に堆積すると考えられてきました。このことは、「花粉は湖沼における主な分解者であるバクテリア(細菌類)に分解されない難分解性有機物であること」、また「湖沼において菌類は殆ど存在しないと考えられてきたこと」によります。
しかし、近年 鏡味講師らは琵琶湖や印旛沼などにおいて、菌類(ツボカビ・子嚢菌・接合菌・担子菌)が多く存在することを明らかにしています。ツボカビにおいては、「動物プランクトンが捕食できない大きな植物プランクトン(湖底に沈むと考えられてきた)にツボカビが寄生し、そのツボカビの遊走子が動物プランクトンに捕食される」という、ツボカビを介した物質循環の経路(Mycoloop)を新たに発見しました。
湖沼の富栄養化による有機物量増加とその分解に伴う酸素消費は、湖底の貧酸素化をもたらします。そのため分解過程の解明は、陸水学をはじめ湖沼の保全、水質管理において重要な研究課題となっています。ツボカビをはじめ菌類の湖沼における役割を明らかにすることは、菌類も考慮した湖底における分解過程解明の第一歩といえます。
また、ツボカビが花粉を分解していた事実は、湖底の堆積物に含まれた花粉を指標として過去の植生や環境を分析する研究において、堆積物に花粉があるにもかかわらず内容物が分解されているため、DNA が検出されない等の事例が出てきており、より一層の注意をはらう必要があることを示しています。
※この研究は、日仏交流促進事業〈SAKURA プログラム〉の一環としてブレーズ・パスカル大学(フランス クレルモンフェラン)と共同で行われているものです。
理学部プレスリリース 2007/4/24 「ミジンコはツボカビがお好き!?~食物網におけるツボカビの生態的役割を解明~」
全学プレスリリース 2009/2/24 「ツボカビは印旛沼の水質のカギを握っている!?~印旛沼で4種 確認~」
〈論文タイトル〉Food quality of anemophilous plant pollen for zooplankton.
〈 著 者 〉Hélène Masclaux, Alexandre Bec, Maiko Kagami, Marie-Elodie Perga,
Telesphore Sime-Ngando, Chiristian Desvilettes, Gilles Bourdier
〈 掲 載 誌 〉Limnology and Oceanography Vol.56(3), May 2011Hélène Masclaux
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