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プレスリリース 発行No.038 平成21年2月23日

「どうして大人はいいのに子供はダメなの?」
~新たな禁煙指導材料の開発~

 「植物の成長に対するタバコ抽出液の影響を示す実験が未成年への禁煙指導の材料として非常に有効である」ことを東邦大学薬学部薬学総合教育センターが提唱し、理科教育学会発行雑誌「理科教育学研究」に受理されました。
成長段階とタバコの害との因果関係

 タバコの煙には2000種以上もの化学物質が含まれ、そのうち発がん性が少なくとも40数種類あることがわかっており、喫煙が健康を害することは周知の事実です。これまでタバコの害を見せる実験として、ミミズをヒトの血管に見立て循環器障害を説明する方法やミミズにタバコ抽出液を投与し反応を見る方法などがありました。しかし、成人では喫煙が許され、未成年には許されていないといった法的規制がなぜあるのかをうまく説明する方法はありませんでした。
 本研究ではブロッコリースプラウトを用いた実験から成長段階とタバコの害との因果関係を明らかにしました。また、この内容がタバコの害を認識させるのみならず、成人には許されることが未成年には許されないという矛盾を理解させる道具として有効であることを示しています。

 本実験ではブロッコリースプラウトを育てる水を成長段階ごとに、タバコ溶出液に換えて育て、タバコ溶出液に換えた時期と成長の関係について調べました。タバコ溶出液は、タバコを水に浸けこんで作リました。 1)種子の時からタバコ抽出液を使用する群 2)発芽した時からタバコ抽出液を使用する群 3)1㎝ほど成長した時からタバコ抽出液を使用群 4)タバコ抽出液を使用しない群 に分けて観察しました(7日間)。すると、●発芽率が低下すること ●地上部の成長が抑制されること ●地上部の成長はタバコ抽出液に換えた時期が早いほど成長の抑制の度合いが大きいこと が明らかになりました。ここで注目されるのは、成長が進んだ段階ではさほど影響を受けていないことに対し、成長がまだ進んでいない段階でタバコ抽出液にさらされると、大きく成長が抑制されることです。このことは、子供は大人よりもタバコの害を多く受けることとイメージが一致し、タバコが体に悪いということと同時に法的に成人には許されることが未成年には許されないことを説明するのに分かりやすい道具になり得ます。
 喫煙者の90%は未成年の内に喫煙を開始している現状からも、できるかぎり若い年齢のうちにタバコの害を理解させる必要があります。本実験は、特別な材料や設備を使用しないため、学校現場などで生徒が参加して簡単に行うことができ、保健・体育の授業だけでなく、理科の実験としても活用することができます。薬学総合教育センターでは、今後本実験を船橋市内の小・中学校を中心に紹介していく予定です。

【お問い合わせ先】
 東邦大学 経営企画部 広報担当   森上 需
 TEL/FAX:047-472-1159 M Phone: 090-8722-8471
 E-mail: press@toho-u.ac.jp