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プレスリリース 発行No.016 平成20年9月3日

オカダトカゲ 幼体の尾は紫外線も反射している!
~幼体時の島嶼間における捕食回避方法の違いか?~

「オカダトカゲには幼体時、尾部において紫外線を多く反射しているグループがいる」ことを東邦大学理学部地理生態学研究室の栗山武夫 大学院生と森本元 理学部東京湾生態系研究センター訪問研究員/立教大学理学部研究員(PD)が明らかにしました。これは島によって捕食からの回避方法が異なっている」ことを示唆しており、他の陸域と隔離している島嶼部において、生物(爬虫類)進化・分散機構をたどる上で重要な情報となります。
オカダトカゲ
オカダトカゲPlestiodon latiscutatusは伊豆諸島・伊豆半島の固有種で、生息域(島ごと)によって生態・体色の変異がみられることで知られています。トカゲの仲間は、一般に幼体時、尾部が青色を呈しています。これは、普段は身を隠して天敵に見つからないようにしています(一次捕食回避)が、見つけられてしまった時に尾部を目立たせていることで急所への攻撃を防ぎ、捕食から回避している(二次捕食回避:トカゲの尾っぽ切り)ためといわれています。
本研究では、島嶼部(神津島・八丈小島)に生息する本種に注目したところ、八丈小島のオカダトカゲ幼体の尾部ではほとんど紫外線を反射していないのに対して、神津島のそれでは、尾部の中央部より末端側で入射した紫外線の40%ほどを反射していました。また、神津島の本種では、色素構造が紫外線を反射する構造になっていたことも確認できました。このことから神津島では、単に尾部において青色だけで目立たせているわけではなく、紫外線も多く反射させることで目立たせていることが考えられます。(紫外線は人間の視覚では認識できませんが、トカゲの天敵であるヘビや鳥をはじめとする他の多くの動物では色として認識しています。)

神津島のオカダトカゲにおいてこのようなことがみられるのは、神津島にはヘビが天敵として生息していることにあると思われます。八丈小島ではヘビが存在していません。紫外線を反射することは、一次捕食回避の効果を弱めることにつながりますが、神津島ではヘビに遭遇することが多いため、紫外線を反射させるタイプが生き残ったと考えられます。今後、これらのことを示すために、青色・紫外線を反射する塗料を用いた実験などを行っていく予定です。

この研究成果は海によって囲まれた島嶼において、食物連鎖がどのように形成されているかを示すひとつであり、また島嶼間で本種がどのように拡がって、どのように独自の進化を遂げたのかを解明する一助になるものです。

【お問い合わせ先】
 東邦大学 経営企画部 広報担当 / 理学部 東京湾生態系研究センター  森上 需
 TEL/FAX:047-472-1159 M Phone: 090-8722-8471
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