薬物動態学教室
所属教員
スタッフ名 | 主な担当 |
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宮内正二/教授 | 薬物動態学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、薬物動態学実習、先端応用薬学総論Ⅳ |
清水真紀/助教 | プレゼンテーション、薬物動態学実習、放射薬品学実習 |
体内における薬物の動きを経時的に追跡
薬は服用後、腸からの吸収、血流による輸送、組織への分布を経て、薬効を発揮し、肝で代謝され、または腎から尿中へ排泄されます。患者が服用した薬物が各単位過程を複雑にたどった結果が治療効果であり、薬物血中濃度時間推移は治療効果の指標となります。教室の研究テーマは、これらの吸収、分布、代謝、排泄の各単位過程の速度論的解析です。さらに各過程で関与する輸送担体や酵素などの蛋白の性質を研究し、臨床での薬物併用による代謝阻害、酵素誘導などの影響出現の推定を目指しています。
教員からのメッセージ
これら医薬品を輸送する輸送担体の特徴として、基質認識に対して寛容性を示し、構造の異なる様々な医薬品を輸送するという点が挙げられます。この基質認識機構が癌細胞に発現している多剤排出輸送担体 (MDR) に備わっている特徴に類似している点は非常に興味深いものがあります。更に、様々な基質を認識し輸送するという能力は、言い換えれば、多彩な輸送能力ということを意味します。薬物療法において問題となっている薬物間相互作用の観点からも、この多彩な輸送能力について解明する必要があると考えております。近年、当教室では輸送担体の機能リポジショニングという探索研究を始めております。この研究を通して、既知の輸送担体に関する新たな生理学意義を解明することができると考えています。様々な観点から、輸送担体の輸送分子機構の詳細を明らかにし、輸送担体の機能研究の新展開、また、少しでも医療にフィードバックできればと考えております。研究テーマとしては、以下に挙げる4項目が行われております。
1 多彩な輸送能力を示す輸送担体の輸送分子機構の解明とその機能リポジショニング
2 薬物の生体膜透過における細胞外タンパク質(血清アルブミン)と薬物輸送担体との相互作用機構の解明
3 pH変化に応じて活性調節を受ける医薬品輸送担体の輸送機構の解明と輸送担体が関与する薬剤性臓器障害の発症機構の解明
4 P糖タンパク質や有機アニオン輸送担体(OATP1B3)などの輸送担体を介した薬物間相互作用および生薬由来成分の輸送に関わる薬物輸送担体の解明
学生から見た研究室
『D2滝口貴晴』
先生が講義で説明されるように、薬物動態学は薬の一生を科学する学問です。薬の体内動態であるADME(吸収・分布・代謝・排泄)の過程を明らかにし、期待する薬効や毒性・副作用の回避を予測して投与設計を行います。これらの情報は、医薬品開発、臨床での服薬指導や疑義照会などに用いられ、効果の高い薬物治療に貢献しています。
当研究室の主な研究テーマは、ADME過程の全てに関与する、薬物の輸送担体(トランスポーター)です。培養細胞やアフリカツメガエルの卵母細胞などを用いて、既知の輸送担体の機能解析や未知の輸送担体の探索を行っています。私は、腎臓の近位尿細管に発現する輸送担体に注目し、薬物の再吸収や尿毒素の蓄積への関与を研究しています。薬剤性腎障害の回避や、慢性腎臓病(CKD)の予防に繋がる研究であり、その社会的意義を感じながら、日々研究に務めています。
当研究室はフレックスタイム制を採用していて、趣味や遊び、アルバイトの時間も確保しながら研究を進められます。自由ではある反面、実務実習や就職活動、国家試験対策など5、6年次は、やるべきことが多く、自己管理能力が重要です。また、研究は個人やテーマ毎に進めていますが、研究室というコミュニティでは協調性も求められます。このような自己管理能力や協調性は、薬剤師としても、研究者としても必要であり、研究生活を通して身に付けたいものと考えています。