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総合診療・救急医学講座(大森)

所属教員名

佐々木陽典  / 教 授
本多 満   / 特任教授
前田 正   / 准教授
鈴木 銀河  / 講師
宮﨑 泰斗  / 院内講師
ウィリアムズ 規子 / 助 教
中道 嘉   / 助 教
河越 尚幸  / 助 教
熊手 絵璃  / 助 教
竹本 育聖  / 助 教
佐藤 高広  / 助 教
小松 史哉  / 助 教
齋藤 隆弘  / 助 教
山田 篤史  / 助 教
鹿嶋 直康  / 助 教
鈴木 健志  / 院内助教
芹澤 響   / 助 教
竹下 智史  / 院内助教
山本 咲   / 助 教
繁田 知之  / 院内助教
森 岳雄   / 院内助教
鈴木 美音  / 院内助教
増山 由華  / 院内助教
松本 愛子  / 院内助教
小堀 俊満  / 院内助教
中村 雄介  / 院内助教
甲藤 大智  / 院内助教
西岡沙莉亜  / 院内助教
柏木 克仁  / 大学院生

運営責任者

講座の概要

東邦大学総合診療・救急医学講座の歴史は臓器別診療科再編が行われた2003年4月に始まりました。総合診療内科7名、総合外科2名、救命救急センター2名、感染管理部1名、東洋医学科1名で開始しました。その後、徐々に人員が拡充され、2015年からは東洋医学科が東洋医学講座として独立し、救命救急センターは大森病院中央診療部門と位置づけられ、現在に至っています。杉本元信教授が初代教授として第2内科から着任され、2010年より瓜田純久が引き継ぎ、2012年には先端健康解析センター設立に伴い、中嶋 均先生が教授に昇任しました。2013年には総合外科の島田長人先生、救命救急センターの吉原克則が臨床教授に昇任され、現在に至っています。東洋医学、総合外科および救命救急センターについては、各ホームページをご参照ください。

総合内科は設立時より、積極的に多施設での武者修行を症例しており、沖縄中部病院、関東労災病院、東海大学、さんむ医療センターなどで研修し、サブスペシャリティとして、2階建て部門の専門医取得を目指しています。設立後、総合内科専門医および日本病院総合診療専門医、プライマリケア専門医だけではなく、感染症専門医、糖尿病専門医、腎臓専門医、胃腸専門医、H.pylori除菌認定医などが誕生しています。診療はジェネラル、研究はスペシャルを旗印として、医局員が協力して社会に貢献できるように努力しています。

研究の概要

総合診療科はもっとも研究から距離を置いた診療科に思われがちですが、私たちの研究室では、臨床研究と基礎研究を並行して行っています。臨床では多くの疑問点に遭遇し、解決するために多くの文献を検索します。それでも解決できない問題点は動物実験や細胞培養などの基礎実験で確かめることになります。基礎と臨床が融合した研究が多いのが特徴です。臓器は独立して存在する訳ではなく、それぞれが多くの方法で情報をやりとりしながら、恒常性を保つように振る舞います。臓器別の形態学を中心とした研究よりも、疾患によって生じた臓器の変化に対して、身体全体としての反応を総合的に研究することにより、総合診療科として個性的な研究が可能となります。

臨床研究

  1. 形態解析研究:生体は複雑な形をしていますが、自己相似性があることから、複雑性をフラクタル次元で表現できることが知られています。しかしながら、その解析方法は臨床医学にほとんど活用されていません。フラクタル解析を中心として、内視鏡画像によるH.pylori感染胃炎の診断、大腸腺腫の悪性度、胸部CTでの肺気腫重症度診断、肺炎の原因による次元の変化、肺がんと炎症性結節の鑑別診断、肺機能とLAAの分布など、超音波検査では、びまん性肝疾患、甲状腺疾患、リンパ節腫大の鑑別、頸動脈プラークの解析など、臓器横断的な研究を進めています。
  2. 消化吸収機能研究:癌や潰瘍がなくても患者さんは多彩な腹部症状を訴えて来院されます。消化管運動および消化吸収能、小腸細菌増殖など、機能的研究を行って、臨床にフィードバックしています。過敏性腸症候群の難治性の消化器症状を訴える患者さんが多数紹介されてきます。
  3. 腸内細菌研究:急性腸炎は極めてコモンな疾患ですが、対応は十分とは言えない状況です。便検体を用いて迅速抗原検査、遺伝子解析を行って、的確な診断を行い、ギランバレー症候群などの二次的疾患への迅速な対応に繋げています。
  4. アルコール研究:13C化合物を投与して呼気試験を行い、アルコール性脂肪肝で酢酸代謝が低下していることを明かにしました。
  5. 糖代謝研究:糖尿病は診断時より10年ほど前からインスリン抵抗性が始まっていることが知られていますが、総合診療科には多くの糖尿病の方が受診されます。グルコース呼気試験やラクツロース水素呼気試験を行い、糖尿病において小腸の消化吸収能が大きく変化していること、0.1gと少量のグルコースを用いた呼気試験で診断できる可能性について報告しています。
  6. 認知症研究:認知症はこれからの日本で激増が予想される疾患です。その早期診断方法をタッチパネルを用いて行い、SPECTとの比較研究を行っています。
  7. 生体ガス研究:生体ガスは呼気、皮膚ガスなどがありますが、尿素呼気試験以外、ほとんど医学応用はされていません。これまで、腸内細菌の状態を把握するため、呼気中水素・メタンガスの有用性を報告しています。現在はGC-MSを用いて、心不全、腎不全、糖尿病、脂質異常症など、生体の代謝が障害される病態での生体ガスのプロフィールの変化を研究しています。これにより、血液、尿に続く第3の検体として、生体ガスの臨床応用を研究し、臨床に還元したいと考えています。
  8. 感染症研究:真菌研究、MRSA研究、H.pylori感染の研究を行っています。また、感染している病原体によって生体ガスが異なる可能性があり、研究を進めています。
  9. 細胞培養:肝癌細胞の培養を行い、がん細胞の糖代謝を検討しています。臨床では、PET-CTを用いると、がん細胞では好気的解糖系が傷害されているにも拘わらず、癌病巣が明瞭に描出されます。その機序を明かにすると同時に、癌治療への足がかりを模索しています。
  10. 動物センターでの研究:2型糖尿病モデルラットを用いて、発症早期の糖代謝の研究、糖尿病における腸内細菌の状態、糖尿病における認知機能の変化など、またアルコール飼育ラットを用いて、アルコールが認知機能に及ぼす影響、アルコール代謝、腸内細菌に関する研究を行っています。
  11. 疫学的研究:大学病院総合診療科で最多の患者数を活用し、これまで逆流性食道炎、H.pylori感染、狭心症、パルボウイルス感染症、消化管出血、伝染性単核球症、などの疫学研究を行ってきました。また、九州大学との共同研究では、石垣島胃カメラ検診において、H.pylori感染、除菌に及ぼす食事、腸内細菌の特性などの研究を行ってきました。今後も石垣島胃カメラ検診は継続していきます。
癌の診断を中心とした形態学が大きく進歩する一方、形態に異常はないものの、症状が頑固な機能性疾患の存在が明らかとなっています。臨床研究は良好な医師・患者関係があってこそ継続できるものであり、「人」「コミュニケーション」を重視した臨床に立脚した研究を発展させていきたいと考えています。

代表論文

  1. Kawagoe N, Kano O, Kijima S, Tanaka H, Takayanagi M, Urita Y. Investigation of Metabolism of Exogenous Glucose at the Early Stage and Onset of Diabetes Mellitus in Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty Rats Using [1, 2, 3-13C]Glucose Breath Tests. PLoS ONE 11(8): e0160177
  2. Zai H, Watanabe T, Kawagoe N, Takemoto I, Tanaka H, Kijima S, Maeda T, Miyazaki T, Urita Y, Nakajima H. Effect of the bile acid-binding resin colestimide in refractory bile acid malabsorption in patients with chronic diarrhea. Toho J Med 2:61-66, 2016.
  3. Tanaka H, Urita Y, Kawagoe N, Sasaki Y, : Watanabe T, Kawaguchi T: A mathematical model of the pathophysiology of reflux esophagitis. Toho J Med, 2: 8-15, 2016.
  4. Kainuma M, Furusyo N, Urita Y, Nagata M, Ihara T, Oji T, Nakaguchi T, Namiki T, Hayashi J.: The association between objective tongue color and endoscopic findings: results from the Kyushu and Okinawa population study (KOPS). BMC Complement Altern Med. 2015 Oct 16;15:372. doi: 10
  5. Maeda T, Yoshizawa S, Hirayama T, Saga T, Tateda K, Urita Y.: Neurosyphilis Mimicking Ramsay Hunt Syndrome.J Nippon Med Sch.;82 :254-6, 2015.
  6. Urita Y, Goto M, Watanabe T, Matsuzaki M, Gomi A, Kano M, Miyazaki K, Kaneko H. Continuous consumption of fermented milk containing Bifidobacterium bifidum YIT 10347 improves gastrointestinal and psychological symptoms in patients with functional gastrointestinal disorders. Bioscience of Microbiota, Food and Health 34, 2015.
  7. Zai H, Matsueda K, Kusano M, Urita Y, Saito Y, Kato H.: Effect of acotiamide on gastric emptying in healthy adult humans. Eur J Clin Invest. 2014;44(12):1215-21
  8. Sanaka M, Urita Y, Yamamoto T, Shirai T, Kimura S, Aoyagi H, Kuyama Y.: Right recumbent position on gastric emptying of water evidenced by (13)C breath testing. World J Gastroenterol. 2013 Jan 21;19(3):362-5
  9. Urita Y, Watanabe T, Kawagoe N, Takemoto I, HTanaka H, Kijima S, Kido H, Maeda T, Sugasawa Y, Miyazaki T, Honda Y, Nakanishi K, Shimada N, Nakajima H, Sugimoto M, Urita C: Role of infected grandmothers in transmission of Helicobacter pylori to children in a Japanese rural town. J Paediatr Child Health 49:394-398,2013.
  10. Urita Y, Noda T, Watanabe D, Iwashita S, Hamada K, Sugimoto M: Effects of a soybean nutrition bar on the postprandial blood glucose and lipid levels in patients with diabetes mellitus. Int J Food Sci Nutr. 2012 Jun 20.

教育の概要

学部

大学病院総合診療科の指導医は、大きく2極化しており、ひとつは「教育が専門」で、外来・入院ともに患者を診察することの極めて少ない指導医、もう一つは自ら率先して外来・入院診療を行う実践型指導医です。東邦大学総合診療・救急医学講座は後者が揃っており、臨床参加型実習では多数の症例を経験できます。

一方、症候学では病名を挙げて、鑑別診断を列挙する診断学とは一線を画し、「病名を用いない診断学」を体験していただきます。疾患名は「集合」であり、集合を構成する元から集合名を当てることよりも、ある症候を訴える患者の生体内で何が起こっているのか、推論することを目標とします。そのためには、感染に対する免疫系の動き、痛みシステム、遺伝情報の伝達など、症候学の基礎となる分野について、短時間で解説します。さらに、発生学に立脚した臓器の特性、共有しているシステムなど、学んでいただきます。

系統講義は臓器や疾患名で構成されていますが、総合診療の講義は症候が中心になります。問診からアラームサインを見極め、バイタルサインに始まる初期対応から治療、work up、入院治療から慢性期の対応、さらに退院後の外来管理から地域連携病院への逆紹介など、継続的な医師患者関係の重要性を理解できるように努めます。地域を思い、ヒトを慈しむマインドに溢れた総合医育成のため、いかなる医療環境でも適正な総合診療を実践できる医師養成を意識した講義を目指します。

大学院

東邦大学総合診療・救急医学講座の特徴は多くの症例を背景とした臨床研究と同時に、基礎研究を行うことができることです。臨床では、原因不明の症候に対して,思考回路を再構築して臨床推論を進め、発症機序を考察し、それに基づいて適切な治療を多職種チームで実践できる人材の育成をめざします。「異常なしから再出発する継続的な思考回路」の構築ができるように、臨床研究と基礎研究を並行して行います。初期研修で興味をもったテーマを中心に研究を決めて行きます。必要に応じて、多施設での研究も行います。これまで行っている研究を参照ください。4年間で2編の論文完成を目指しています。

診療の概要

「何でも診たい、治したい」というマインドは医師を志す原点ですが、近年、原点が大きく揺らいでいるように思えます。患者さんの要求も多様化し、想定外のトラブルを回避する意識も働き、最も自信のある疾病のみを診療する「過度な専門医志向」が加速している現状です。病院内と社会で総合診療医が担うべき役割は大きく変化しており、社会ニーズに応えられるように、我々総合診療医も進化しなくてはなりません。

総合診療科は年間4万名以上の外来患者、1200名以上の入院患者を診療しており、大学病院総合診療科では最多の患者数を抱えています。半径5km以内の患者数が80%を占めており、特定機能病院でありながら、地域医療機関としての役割も担っています。また、大田区総合診療研究会を通して、蒲田医師会、大森医師会、田園調布医師会との医療連携は極めて密である。地域医療の先生方が求める対応、紹介状なしで駆け込む1次救急、さらに救急救命センターによる3次救急医療を同じフロアで行う機動的な体制で運営しています。自ら率先して外来・入院診療を行う実践型指導医が多数在籍しており、外来患者の95%、入院患者の85%が総合診療科で治療が完結している診療科です。専門診療科がより専門性を高めることができるように、総合診療科の守備範囲を大きく広げています。

その他

社会貢献

  1. 石垣島胃カメラ検診:2006年から毎年10−12月に行っています。指導医とレジデントがペアで参加し、社会貢献とともに内視鏡手技を学ぶ貴重な機会となっています。年によっては夏休み期間に小児科検診にも参加してきました。
  2. 医療過疎地区への派遣:新潟、高知、靑森など医師不足の病院へ、当直業務を中心に医局員を派遣しています。
  3. 区民公開講座:大森病院の公開講座に、これまで3度講演しています。今後も要請に応じて、講師を派遣させていただきます。
  4. 医師会講演・地域研究会:大田区医師会を中心に積極的に講演を行っています。とくに大田区総合診療研究会では紹介された患者さんの病態を紹介元の先生とともに考えることができるため、地域連携の貴重な機会となっています。
  5. 検診業務:先端健康解析センターの中嶋教授を中心として、積極的に検診を進めており、地域住民のヘルスケアに貢献しています。

学会活動

  1. 日本病院総合診療医学会:第13回学術総会を2016年9月に開催しました。31演題を発表しています。専門医11名、評議員6名。
  2. プライマリケア連合会:指導医の佐々木陽典を中心に毎年参加しています。
  3. 日本内科学会:指導医(瓜田純久)を中心に、積極的に参加しています。総合内科専門医7名が在籍。
  4. 消化器関連:日本消化器病学会(認定医5名、評議員3名)、日本消化器内視鏡学会(指導医3名、評議員3名)、日本消化管学会(指導医3名、代議員3名)、日本高齢消化器病学会(監事1名、評議員1名)、日本消化吸収学会(副理事長1名)、日本神経消化器病学会(評議員2名)、日本大腸検査学会(理事1名)、日本大腸肛門病学会(評議員2名)。
  5. 臓器横断的学会:日本超音波医学会(専門医1名)、日本臨床生理学会(評議員1名)、日本平滑筋学会(理事1名)
  6. 日本腎臓学会:非常勤講師の永井洋子先生の指導で、専門医取得を目指している医師が毎年参加して、実績を重ねています。
  7. 循環器関連:日本循環器学会、日本心臓学会には、循環器をサブスペシャリティとしている医師が積極的に参加し、専門医取得を目指しています。
  8. 感染症関連:日本感染症学会には専門医の前田正先生を中心に演題を発表しています。また、日本臨床ウイルス学会においては、中嶋均先生が毎年発表しています。日本ヘリコバクター学会では代議員の瓜田純久を中心に、除菌認定医の取得を推奨しています。
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151