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内科学講座神経内科学分野(大森)

所属教員名

狩野 修  / 教 授
川邉 清一 / 講 師
平山 剛久 / 講 師
柳橋 優  / 助 教
長澤 潤平 / 助 教

運営責任者

講座の概要

東邦大学における神経内科の歴史は非常に古く、昭和30年より東邦大学大森病院第二内科に神経グループが存在しておりました。当時の医局員には神経学のパイオニアである里吉栄二郎先生、田崎義昭先生(初代北里大学神経内科教授)、木下真男先生、古和久幸先生(二代目北里大学神経内科教授)など、日本神経学会を牽引してこられた重鎮が多数在籍されておりました。その後、里吉栄二郎先生が初代神経内科教授として東邦大学大橋病院第四内科を立ち上げられ、木下真男教授に引き継がれました。その後平成15年4月に大森病院にも新たに神経内科が創設され、岩崎泰雄先生が大森病院神経内科の初代教授として就任しました。
創設以来、国内にとどまらず海外との交流が活発で現コロンビア大学神経内科教授(本学出身で当科の客員教授)でおられる三本博先生の研究室、ベイラー医科大学神経内科、メソジスト神経研究所、ペンシルバニア大学、英国ノッチンガム大学との共同研究があり、毎年留学生を派遣しています。

研究の概要

私たちの研究室ではパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症,アルツハイマー型認知症といった変性疾患から脳卒中に代表される急性期疾患、そして頭痛、めまい、しびれといった一般的なものまで多岐にわたり研究を行っております。以下代表的な研究内容を記します。
  1. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)のバイオマーカー研究、モデルマウスを用いた研究
    ALSの原因究明、診断や治療の進歩に貢献できるよう臨床治験や基礎研究を積極的に行っております。現在私どもは北里大学、オタワ大学(カナダ)との共同で、ALSのバイオマーカーの研究を行っております。バイオマーカーとは血液中に測定されるタンパク質で、その濃度を通して病気の存在や進行度を確認するものです。またALSのモデルマウスを用いた研究では高容量のメチコバラミン投与が生存期間を延長させるとの研究結果も発表しました(Ikeda K et al. Journal of Neurological Science 2015, Ikeda K et al. PLoS One 2015)。
  2. ALS患者さんのQOLに関する研究
    臨床分野ではALSで観察される嚥下障害、呼吸機能障害、咳嗽反射低下の関連を経時的にとらえる研究を行っております。患者さんのQOL維持のためにどのようなタイミングで治療を行うのが最善かを提示していきます。また早期診断・治療開始に向けての啓発も行っております(Kano O et al. BMC Neurol 2013)。
  3. パーキンソン病の運動症状と非運動症状の研究
    従来パーキンソン病の診断では神経内科医の診察に加え、MIBG心筋シンチグラフィーという検査を参考に行ってきました。さらに当科ではDAT SCAN(ダットスキャン)という医薬品を用いたSPECT検査(画像診断)も行っています。
    パーキンソン病を含むパーキンソン症候群、レビー小体型認知症はドパミン神経細胞が変性する疾患であり、その神経終末に存在するドパミントランスポーター(DAT)が低下することが確認されています。これらMIBG心筋シンチグラフィーとこのDAT SCANを用いたSPECT検査を組み合わせることにより、より正確な診断を病気の早期に行えるとされております。パーキンソン病にみられる振戦、固縮、姿勢反射障害などの運動症状に加え、抑うつ、嗅覚障害、便秘などの“非運動症状”にも着目し、これら画像検査結果との関連を研究しております(Kano O et al. Journal of Neurologial Science 2014)。
    その他ALS同様、患者さんの血液を用いて診断や進行度のバイオマーカー探索の研究も行っております。
    治験も積極的に行っており2016年12月現在、パーキンソン病だけで3種類の治験を実施中です。
  4. 認知症(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など)に関する研究
    これまでアルツハイマー病の治療薬はドネぺジル(アリセプト)しかありませんでした。しかし2011年になり本邦でも相次いでメマンチン(メマリー)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(エクセロン)が認可され治療の幅が広がってきました。同じアルツハイマー病の患者様でもどの治療薬が適切でかつ効果的か、臨床研究を通して論文・学会などで発表しております(Kano O et al. Neuropsychiatr Dis Treat 2013)。
  5. 多発性硬化症に関する研究
    従来、日本では視神経と脊髄を病変の主体とする比較的症状の重い視神経脊髄型多発性硬化症が多いとされてきましたが、2004年に多くの視神経脊髄型多発性硬化症(OSMS、Japanese MS)の血液中に特異的な自己抗体が存在することが発見されました。その後、この自己抗体はaquaporin4という水チャンネルを認識することがわかり、現在、視神経脊髄型多発性硬化症は欧米の視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica:NMO)と同一病態と考えられるようになってきています。また、従来型MSに効果があるインターフェロンβの自己注射療法が効果的であるのですが、NMOに対するインターフェロン療法は効果が限定的であるとされ、早期からの免疫抑制剤の使用が勧められるようになってきています。当科でも抗aquaporin4抗体の値に基づいた診療を行っております。また、近年の神経免疫学の進歩は目覚ましく、病気の発症や治療に様々な免疫担当細胞やその細胞から分泌される物質との関連が明らかにされつつあります。これらの最近の知見に基づく診療やまた新たな治療法の開発等を行っております。

代表論文

  1. Ikeda K, Iwasaki Y, Kaji R: Neuroprotective effect of ultra-high dose methylcobalamin in wobbler mouse model of amyotrophic lateral sclerosis. Journal of the Neurological Sciences 354:70-74, 2015
  2. Ikeda K, Iwasaki Y: Edaravone, a Free Radical Scavenger, Delayed Symptomatic and Pathological Progression of Motor Neuron Disease in the Wobbler Mouse. PLoS One 10:e0140316, 2015
  3. Kano O, Yoshioka M, Nagayama H, Hamada S, Maeda T, Hasegawa T, Kadowaki T, Sengoku R, Terashi H, Hatano T, Nomoto N, Inoue M, Shimura H, Takahashi T, Uchiyama T, Watanabe H, Kaneko S, Takahashi T, Baba Y, Kubo S. Rhinorrhea in Parkinson's disease: A consecutive multicenter study in Japan Journal of the Neurological Sciences 343:88-90, 2014
  4. Ikeda K, Murata K, Kawase Y, Kawabe K, Kano O, Yoshii Y, Takazawa T, Hirayama T, Iwasaki Y: Relationship between cervical cord:1H-magnetic resonance spectroscopy and clinoco-electromyographic profile in amyotrophic lateral sclerosis. Muscle Nerve 47:61-67, 2013
  5. Kano O, Iwamoto K, Ito H, Kawase Y, Cridebring D, Ikeda K, Iwasaki Y: Limb-onset amyotrophic lateral sclerosis patients visiting orthopedist show a longer time-to-diagnosis since symptom onset. BMC Neurol 9;13-19, 2013
  6. Kano O, Ito H, Takazawa T, Kawase Y, Murata K, Iwamoto K, Nagaoka T, Hirayama T, Miura K, Nagata R, Kiyozuka T, Aoyagi J, Sato R, Eguchi T, Ikeda K, Iwasaki Y: Clinically meaningful treatment responses after switching to galantamine and with addition of memantine in patients with Alzheimer's disease receiving donepezil. Neuropsychiatr Dis Treat 9:259-265, 2013
  7. Kano O,Urita Y,Ito H,Takazawa T,Kawase Y,Murata K,Hirayama T,Miura K,Ishikawa Y,Kiyozuka T,Aoyagi J,Iwasaki Y: Domperidone effective in preventing rivastigmine-related gastrointestinal disturbances in patients with Alzheimer's disease.Neuropsychiatr Dis Treat 9:1411-1415, 2013
  8. Kano O, Beers DR, Henkel JS, Appel SH: Peripheral nerve inflammation in ALS mice: cause or consequence. Neurology 78:833-835, 2012
  9. Kano O, Ikeda K, Cridebring D, Takazawa T, Yoshii Y, Iwasaki Y: Neurobiology of depression and anxiety in Parkinson’s disease. Parkinson’s disease 143547, 2011
  10. Ikeda k, Hirayama T, Iwamoto K, Takazawa T, Kawase Y, Yoshii Y, Kano O, Kawabe K, Tamura M, Iwasaki Y: Pulse wave velocity study in middle-aged migraineurs at low cardiovascular disease risk. Headache 51:1239-44, 2011

教育の概要

学部

  1. 統合講義(2年次、Ⅱ期、2コマ、2017年〜)
    臨床医学を学ぶ前の2年生を対象に行います。症候学、診断学のみならず病理などの基礎分野からも病態を考え、より深い理解を目指します。
  2. 神経系臨床講義(3年次、Ⅱ期、60コマ)
    神経学の基礎から臨床まで幅広く習得します。本ユニットは主に脳神経外科学教室との分担により行われておりますが病理学、薬理学、リハビリテーション医学や栄養学も加え幅広い内容の講義を行っております。
  3. 脳神経学チュートリアル(3年次、Ⅱ期、6コマ)
    10名以下の1グループで症候学、診断学をチューター指導の元学びます。単に正解を導くことに終始せず、必要な診察や検査さらに鑑別疾患を挙げることに重点を置いています。本ユニットは脳神経外科学教室との分断で行っております。
  4. 診断学実習ならびに客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination:OSCE)(4年生、Ⅱ期、5コマ)
    神経の基本的診療技能・態度をOSCEの学習・評価項目に準じて実習を行います。5年生の臨床実習開始前に最低限の必要な知識・手技を習得します。
  5. 集中臨床講義(6年次、Ⅱ期、1コマ)
    主に卒業試験や国家試験対策を念頭に授業を行っています。近年の傾向に加え最新のトピックを理解し、またこれまでの講義で習得した知識を確実なものにします。
  6. 臨床実習時OSCE(6年次)
    模擬患者を設定し実際の問診から診察、診断までを行います。

大学院

高次機能制御系神経内科学として3コマ担当し、ALSをはじめとした運動ニューロン疾患、頭痛や認知症の講義を行っております。臨床で感じた疑問点をいかに研究に結びつけるか、基礎と臨床研究の両面から講義をしております。また神経系以外を専攻している大学院生にも理解しやすい内容を心がけております。

診療の概要

日本神経学会専門医の資格をもつ医師が中心となり、脳、脊髄、末梢神経や筋肉のさまざまな病気に対する専門的で高度な診療を行っています。また、神経内科以外の疾患でもみられる神経症状についての診断、治療も手がけています。担当する疾患はパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症,アルツハイマー型認知症といった変性疾患から脳卒中に代表される急性期疾患、そして頭痛、めまい、しびれといった一般的なものまで多岐にわたります。
神経難病を克服するといった情熱をもち診療や治験に取り組んでおります。
また患者さんの近隣の医療機関への逆紹介を積極的に推進しております。地域完結型医療は大学病院などの医療機関との共同作業によりはじめて可能になります。高度な専門性を要する疾患に関しては患者さんに定期的な通院をお願いしていますが、それ以外は紹介元の医療機関での診療を受けていただいております。

その他

社会貢献

2017年5月に患者さんも招待し、ALSのよりよい医療を目指したシンポジウムを当教室で主催する予定です。

学会活動

2017年5月にALSのシンポジウムを当教室主催で行う予定です。
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151