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麻酔科学講座(大橋)

所属教員名

小竹 良文 / 教 授
牧 裕一  / 助 教
豊田 大介 / 助 教
小野寺 潤 / 助 教
下井 晶子 / 助 教
冨地 恵子 / 助 教

運営責任者

講座の概要

東邦大学医療センター大橋病院における手術部での麻酔管理は、当院での手術開始当初(1970年代頃)は、院内外科系医師により、また、その後、東邦大学大森病院麻酔科からの出張、応援により行われていました。数年後には、大森病院麻酔科から、初代医長として内田隆治先生が赴任され、大橋病院麻酔科としての常勤体制が始まりました。1979年4月から初代教授として村山良介先生が京都大学から赴任され、新入医局員も毎年入局するようになり、教室も麻酔科学研究室としてスタートしました。その後1986年に浅利 遙先生が横浜市立大学より2代目教授として赴任され、さらに1997年に3代目教授として本学卒業生でもある大江容子先生が、東京女子医科大学から赴任されました。その間、研究室から麻酔科学第2講座に昇格し、大江教授退任後、小竹が4代目教授として麻酔科学講座(大橋)を主宰しております。
現在、日常臨床では、手術室の麻酔管理はもとより、集中治療に重点を置きながら、新時代の麻酔科学のニーズに対応できる教室を目指し、教室員一同、日夜努力を重ねています。

研究の概要

全身麻酔症例および集中治療室で治療中の症例を対象とした臨床研究を行っています。すでに倫理委員会での承認を取得し、研究準備段階、研究施行中および結果解析中の研究として以下のようなものがあります。

  1. 脈波信号による心拍出量の非侵襲的推定
    麻酔管理の要点の一つとして手術中の患者さんの血圧、脈拍、酸素飽和度などを持続的に看視することが挙げられます。但し手術に伴う合併症のリスクが高い患者さんでは心拍出量という指標も看視し、これを最適化することが推奨されています。本研究では腹部の手術を受ける患者さんを対象として動脈圧波形、脈波波形を解析し、これらから心拍出量を推定する方法を検討しています。本研究に関連する課題で平成24年から3年間、科学研究費補助金、基盤(C)を獲得しました。
  2. 全身麻酔中に投与する輸液剤が血行動態に及ぼす影響の比較
    上記の研究と関連して、心拍出量を最適化する手段として輸液剤の投与がしばしば行われていますが、複数存在する輸液剤を、どのように選択するのが最も適切か、については不明な点が複数あります。本研究では腹部の手術を受ける患者さんを対象として輸液剤毎の血圧、心拍出量に及ぼす影響を比較することを目的としています。本研究に関連する課題で平成28年度から3年間、科学研究費補助金、基盤(C)を獲得しました。
  3. 術中輸液が水分の体内分布および凝固機能に及ぼす影響
    輸液剤の選択には上述したような血圧、心拍出量以外に輸液剤の体内分布および凝固機能に及ぼす影響も考慮する必要があります。本研究では輸液剤が手術中の患者さんの水分分布および凝固機能に及ぼす影響を膠質浸透圧測定、血液粘弾性試験という手段を用いて解析することを目的としています。すでにデータの収集は終了し、現在解析中です。
  4. 非観血血圧測定の性能向上
    麻酔中の患者さんの血圧測はオシロメトリック法と呼ばれる方法で測定することが一般的です。より短時間に、少ない負担で血圧測定が可能となるよう、医療機器メーカーと共同して性能向上に関するデータを収集し、現在解析中です。
  5. 外科手術における術中筋弛緩モニタの実用性向上に関する研究
    全身麻酔中、とくに腹部の手術では手術操作を容易にする目的で神経筋遮断薬が用いられます。一方、手術終了時には神経筋遮断薬の作用が完全に消失している必要があります。しかし、主観的な神経筋遮断薬の効果判定は不正確で、筋弛緩モニタを用いた客観的評価が必要とされています。本研究ではより簡便かつ正確な筋弛緩モニタリングを可能にすることを目的とし、現在日本大学、旭川医科大学、川崎医科大学と多施設共同研究を実施中です。なお、本研究に先行する多施設前向き研究により2014年度日本臨床麻酔学会MSD awardを受賞しました。
  6. 麻酔中の積極的な無気肺防止による肺合併症予防効果の検討
    肺炎を含む術後肺合併症は喫煙、肥満、慢性閉塞性肺疾患などのリスク因子を有する患者を中心に発症すると考えられてきましたが、最近は健常な手術患者さんにおいても麻酔中の無気肺形成が合併症を引き起こしている可能性が指摘されています。実際に麻酔中の積極的な無気肺防止が肺合併症を予防しうるかどうかに関して腹腔鏡で腹部の手術を受ける患者さんを対象として、大阪大学と共同研究を行いました。現在結果解析中で近日中に公表予定です。
  7. 人工呼吸離脱時の呼吸仕事量の非侵襲的評価
    ICUにおける治療を必要とする重症患者さんの多くで呼吸不全が発生し、人工呼吸が行われますが、可能な限り早期に人工呼吸から離脱をはかることが推奨されています。過剰あるいは過小な呼吸補助を回避し、早期に人工呼吸からの離脱をはかるためには人工呼吸器による呼吸補助と患者さん自身の呼吸筋による仕事が適切に分配されている必要があります。これを評価することを目的として、ICUにおいて人工呼吸を受けている患者を対象として酸素代謝の観点から呼吸仕事量の定量的評価を試みています。
  8. 客観的運動予備能評価に基づいた高齢患者の全身麻酔リスク解析
    高齢の患者さんが全身麻酔下に手術を受ける際の術後合併症のリスクは術前の運動予備能と逆相関することが知られています。しかし、現時点での活動度評価は主観的で患者さんの自己申告に依存しており、客観的な活動度評価の確立が望まれる状況にあります。手術前の患者さんの酸素消費量および入院後の活動度が運動予備能の客観的指標となる可能性があることから、大きな手術をうけられる患者さんを対象として入院時の酸素消費量と入院から手術までの活動度を測定し、活動度の客観的指標となり得るかどうかを明らかにしようと考えています。本研究に関連する課題で令和元年度から3年間、科学研究費補助金、基盤(C)を獲得しました。

代表論文

  1. Kimura Y, Maki Y, Toyoda D, Kotake Y.: Prediction of intraoperative pressure responsiveness by dynamic arterial elastance in patients undergoing major abdominal surgery. Toho J Med. 2019; 5:120-7
  2. Maki Y, Toyoda D, Tomichi K, Onodera J, Kotake Y: Association of oral intake and transient mixed venous oxygen desaturation in patients undergoing fast-track postoperative care after open-heart surgery. J Cardiothorac Vasc Anesth 2018; 32: 2236-40
  3. Kotake Y: The recent development about fluid management in patients under surgical stress. Toho J Med. 2016; 3: 73-9
  4. Kotake Y: Unmeasured anions and mortality in critically ill patients in 2016. J Intensive Care 2016; 4: 45
  5. Toyoda D, Fukuda M, Iwasaki R, Terada T, Sato N, Ochiai R, Kotake Y: The comparison between stroke volume variation and filling pressure as an estimate of right ventricular preload in patients undergoing renal transplantation. J Anesth 2015; 29: 40-6
  6. Toyoda D, Yasumura R, Fukuda M, Ochiai R, Kotake Y: Evaluation of multiwave pulse total-hemoglobinometer during general anesthesia. J Anesth 2014; 28: 463-6
  7. Toyoda D, Shinoda S, Kotake Y: Pros and cons of tetrastarch solution for critically ill patients. J Intensive Care 2014; 2: 23
  8. Kotake Y, Fukuda M, Yamagata A, Iwasaki R, Toyoda D, Sato N, Ochiai R: Low molecular weight pentastarch is more effective than crystalloid solution in goal-directed fluid management in patients undergoing major gastrointestinal surgery. J Anesth 2014; 28: 180-8
  9. Kotake Y, Ochiai R, Suzuki T, Ogawa S, Takagi S, Ozaki M, Nakatsuka I, Takeda J: Reversal with sugammadex in the absence of monitoring did not preclude residual neuromuscular block. Anesth Analg 2013; 117: 345-51
  10. Onodera J, Kotake Y, Fukuda M, Yasumura R, Oda F, Sato N, Ochiai R, Usuda T, Kobayashi N, Takeda S: Validation of inflationary non-invasive blood pressure monitoring in adult surgical patients. J Anesth 2011; 25: 127-30

教育の概要

学部

講義
第4学年を対象とした麻酔科学に関する系統講義のうち、当講座からは小竹が、周術期医学:麻酔法と麻酔薬:麻酔管理という概念、周術期医学:薬理学(麻酔薬,鎮痛薬,筋弛緩薬,局所麻酔薬)、集中治療医学:集中治療医学の紹介:総論を担当しました。

臨床実習
第6学年の選択実習を各学年2名程度受け入れています。実習では豊田助教、牧助教を指導者として、後期研修医と共に術前評価、術中管理および術後管理を行うことによって診療参加型実習を実践しています。

OSCE
豊田助教、牧助教が臨床実習前OSCEの評価者講習を受講し、評価者として参加しています。小竹は臨床実習後OSCEに評価者として参加しています。

大学院

医科学専攻博士課程
専攻科目 高次機能制御系 麻酔科学 麻酔科学特論I, II(16単位)、演習(12単位、分担)、実習(4単位、分担)
小竹は博士課程の社会人大学院4名を指導しています。

診療の概要

  1. 周術期管理
    手術室における麻酔管理および血管造影室における脳血管内治療、構造的心疾患に対するカテーテル治療の麻酔管理を行っています。2019年の麻酔科管理症例数は約2800症例でした。2013年より麻酔科管理症例に対して入院前に術前評価を行う体制を確立しました。2016年からは歯科衛生士による術前口腔ケアを開始しました。
  2. 集中治療
    2018年に開院した現病院の集中治療室は特定集中治療室として運用しております。麻酔科としては特定集中治療加算の要件である集中治療の研修を済ませた医師として小竹および牧助教が集中治療室専従医としてmorning conference司会および随時consultationによって関与しています。集中治療室での治療データを日本集中治療医学会の重症患者Database JIPADに登録しています。また、看護スタッフ、臨床工学技士および作業療法士と共に呼吸ケアサポートチームを組織し、一般病棟における重症患者の治療にも関与しています。
  3. ペインクリニック、漢方
    青山客員教授の指導の下、非がん性の慢性疼痛に対する外来診療を主体として診療を行っています。特に健康創成論に基づいた全人的医療の観点から、薬物療法、理学療法を組み合わせた治療を行っています。

その他

学会活動

小竹は日本麻酔科学会代議員、安全委員会部会員、日本麻酔科学会準機関誌編集委員、日本集中治療医学会代議員、日本集中治療医学会英文機関誌J Intensive Care編集委員を務めています。
青山准教授は日本慢性疼痛学会、日本実存療法医学会、日本疼痛心身医学会、日本心理医療諸学会連合の理事です。
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151