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麻酔科学講座(大森)

所属教員名

落合 亮一    / 教 授
佐藤 暢一    / 准教授
寺田 享志    / 講 師
山内 麻衣子   / 講 師
武藤 理香    / 助 教
大岩 彩乃    / 助 教
出光 亘     / 助 教
下井 晶子    / 助 教
黒澤 暁子    / 助 教
勝井 真咲アン  / 助 教
サムナ ロバート / 助 教

運営責任者

講座の概要

東邦大学医学部麻酔科学講座は,初代教授・黒須吉夫先生により 1965 年に開講されました.
現在の講座責任者は,2003年に着任した落合 亮一です.
本講座は,麻酔科学を中心に集中治療医学や疼痛管理学と広い診療活動を行なっています.特に,麻酔科学は最近の動向をいち早く捉え,周術期医学へと発展してまいりましたが,我が国で初めての周術期センターを 2011 年に開設し,急性期医療の質的向上と効率化を図っています.この活動は日本麻酔科学会の『周術期管理チーム・プロジェクト』を代表するものでモデル施設として多数の見学者が訪れています.
麻酔科専門医制度に則り,認定施設として高度な医療と教育を提供しています.同時に,集中治療医学会とペインクリニック学会の認定施設でもあり,各専門医の教育を担当しています.麻酔科学会認定指導医・専門医がそれぞれ6名,16名,集中治療医学会専門医が3名,ペインクリニック認定医が2名で構成されています.
大学院生は現在,7名でそれぞれが連携しながら多数のテーマで研究を遂行しています.
麻酔科は初期臨床研修の必須科目として位置づけられ,毎月,3~5名の初期研修医がロテートしています.学部5年性の臨床実習と重複しながら当教室の方針である,『屋根瓦方式』で各世代が次世代を教育する環境を提供しています.

研究の概要

1. 非侵襲的心拍出量測定

従来,肺動脈カテーテルや侵襲的手技を必要とした心拍出量測定は,心臓カテーテル検査以外に臨床的有用性が認められていません.循環管理をする上で,基本的な情報であるにも関わらず有用性に疑問を持たれている理由として,即時性や連続性に問題があるからです.
心収縮から脈波が末梢動脈に到達するまでの経過時間・脈波伝搬時間(PWTT: pulse wave transit time)は,心収縮のエネルギーと相関することから血圧や一回拍出量と相関することを明らかにしてきました.その結果を用いた測定方法(esCCO: estimated Continuous Cardiac Output)は特許を得て臨床応用が可能となっています.最大の利点は,即時性と連続性が確認されていることで,最近の循環管理の基本である応答性の評価に利用できる点で期待が持たれています.
現在,大学院においては,1.精度評価,追随性評価,輸液応答性評価といった基本的な性能評価,2.医療経済的に高額医療を導入することが困難な新興国への導入法の検討,3.循環動態の評価や全身状態評価への適応を含む AI 化について,基礎研究を行っている.なお,新興国での展開については,厚生労働省の国際協力事業を担当し,ベトナムでの事業で具体化されています.

2. 急性腎障害におけるバイオマーカ

急性腎障害(AKI)は急性期医療を提供している麻酔科にとって,予後を極めて悪化させる要因の一つであり,早期診断・早期治療が必要な病態です.従来より,AKIの診断に用いられているクレアチニン値の変化は,発症後数日を要することから早期診断には不適当であることが確認されています.クレアチニンに替わり,腎機能の変化を早期に反映する新たなバイオマーカが求められています.
大森病院は,全国でも有数の腎移植術が行われている施設であり,腎臓の虚血再灌流障害モデルとして最適の環境といえます.また,関連施設では,全国でも有数の大動脈手術が行われており,大動脈遮断に伴う腎虚血再灌流モデルの一つといえます.
両手術後の AKI について,肝臓型脂肪酸結合タンパク(L-FABP: liver-type fatty acid binding protein) の変化を評価してきました.腎尿細管における酸化ストレスに反応して放出される L-FABP は再灌流直後から反応し,尿中で上昇することが確認されているバイオマーカで,様々な病態における変化の特徴について検討してきました.特に,循環器外科や腎移植時の腎保護をテーマに研究を進めています.

3. 末梢神経ブロック時の局所麻酔薬濃度

手術後の早期離床・早期退院は,総合的な疾病予後を改善するために必須のアプローチであり,ERAS (enhanced recovery after surgery) をはじめとして多くの試みが行われてきました.早期退院を妨げる原因の一つに術後鎮痛に用いられる麻薬に起因する悪心嘔吐(PONV) があります.PONV により経口摂取の開始が遅れることで,入院期間の延長につながり,PONV 対策は重要な課題です.
麻薬の使用を減ずる目的で様々な末梢神経ブロックを用いていますが,一方で局所麻酔薬中毒は重大な合併症です.各末梢神経ブロックについて,血中の総濃度で検討を続けてきましたが,今後の展開としてタンパク結合をしていない血中濃度の動態を解明することをゴールに研究を行っています.

4. 帝王切開時の循環動態評価

帝王切開術は,特殊な病態であり,特に母子が同時にリスクに曝されることと,変化が急速に起こることに特徴があります.一方で,母子にリスクが加わる原因は脊髄くも膜下麻酔による循環動態の変化が非常に早いことにありますが,侵襲的なモニターは不適切であり,従来,十分な検討が行われきませんでした.
最近は,非侵襲的に心拍出量を測定することが可能となり,この問題を解決すべく研究を遂行中です.

5. その他

呼吸不全の原因の一つに横隔膜の収縮不全があります.これは,人工呼吸管理に伴う廃用性萎縮ならびにサイトカインをはじめとする炎症性物質が原因として考えられていますが,機能不全を定量化することが臨床上難しいために十分な検討が行われていません.最近,超音波装置を用いることで横隔膜の収縮能を定量化する試みが始まっていますで,当教室においても検討をはじめました.

代表論文

  1. Akashiba T, Ishikawa Y, Ishihara H, Imanaka H, Ohi M, Ochiai R, Kasai T, Kimura K, Kondoh Y, Sakurai S, Shime N, Suzukawa M, Takegami M, Takeda S, Tasaka S, Taniguchi H, Chohnabayashi N, Chin K, Tsuboi T, Tomii K, Narui K, Hasegawa N, Hasegawa R, Ujike Y, Kubo K, Hasegawa Y, Momomura SI, Yamada Y, Yoshida M, Takekawa Y, Tachikawa R, Hamada S, Murase K. The Japanese Respiratory Society Noninvasive Positive Pressure Ventilation (NPPV) Guidelines (second revised edition). Respir Investig. 2017 Jan;55(1):83-92.
  2. Suga K, Kobayashi Y, Ochiai R. Impact of Left Heart Bypass on Arterial Oxygenation During One-Lung Ventilation for Thoracic Aortic Surgery. J Cardiothorac Vasc Anesth. 2017 Aug;31(4):1197-1202.
  3. Terada T, Oiwa A, Maemura Y, Robert S, Kessoku S, Ochiai R. Comparison of the ability of two continuous cardiac output monitors to measure trends in cardiac output: estimated continuous cardiac output measured by modified pulse wave transit time and an arterial pulse contour-based cardiac output device. J Clin Monit Comput. 2016 Oct;30(5):621-7.
  4. Sato N, Terada T, Ochiai R. MAC value of desflurane may vary for different machines. J Anesth. 2016 Feb;30(1):183.
  5. Ochiai R. Mechanical ventilation of acute respiratory distress syndrome. J Intensive Care. 2015 May 29;3(1):25.
  6. Oda S, Aibiki M, Ikeda T, Imaizumi H, Endo S, Ochiai R, Kotani J, Shime N, Nishida O, Noguchi T, Matsuda N, Hirasawa H; Sepsis Registry Committee of The Japanese Society of Intensive Care Medicine. The Japanese guidelines for the management of sepsis. J Intensive Care. 2014 Oct 28;2(1):55.
  7. Mori Y, Sato N, Kobayashi Y, Ochiai R. Low levels of urinary liver-type fatty acid-binding protein may indicate a lack of kidney protection during aortic arch surgery requiring hypothermic circulatory arrest. J Clin Anesth. 2014 Mar;26(2):118-24.
  8. Mori Y, Kamada T, Ochiai R. Reduction in the incidence of acute kidney injury after aortic arch surgery with low-dose atrial natriuretic peptide: a randomised controlled trial. Eur J Anaesthesiol. 2014 Jul;31(7):381-7.
  9. Terada T, Maemura Y, Yoshida A, Muto R, Ochiai R. Evaluation of the estimated continuous cardiac output monitoring system in adults and children undergoing kidney transplant surgery: a pilot study. J Clin Monit Comput. 2014 Feb;28(1):95-9.
  10. Sugo Y, Sakai T, Terao M, Ukawa T, Ochiai R. The comparison of a novel continuous cardiac output monitor based on pulse wave transit time and echo Doppler during exercise. Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. 2012;2012:236-9.

教育の概要

学部

麻酔科学講座(大森)が担当している学部教育は,M4 の系統講義(18時間),M5 の臨床実習(1グループ3名,5日間)です.
系統講義については,麻酔・周術期関連が8時間,疼痛管理学(いわゆるペインクリニック)が4時間,集中治療医学が4時間であり,大森病院のスタッフに加えて大橋病院の小竹教授,佐倉病院の北村教授も講義を担当しています.手術症例の高齢化,重症化,複雑化の結果,麻酔科学は,入院前から退院後も含めた総合的なアプローチが必要となり,合併する慢性疾患のリスク評価・管理が国際的にも大きなウェイトを占めています.従来の生理学,薬理学的なアプローチに加えて多面的な内容となっているのが特徴です.
集中治療医学は,主に急性呼吸不全(ARDS)と敗血症を扱う総合医学であり,もっとも侵襲的な治療を紹介する講義になっています.同時に,高度に臓器機能不全を生じた状態であり,臨床倫理についても十分な理解が必要です.
疼痛管理については,術後疼痛を対象とした急性痛管理,原疾患が必ずしも特定できない慢性疼痛,そして緩和医療における鎮痛が含まれます.痛みのメカニズムを十分に理解した上で,それぞれの鎮痛法・除痛法の特徴について説明します.
このように,麻酔科学はすべての診療科のすべての疾患に関連して発展してきました.
そういった広がりを感じていただける系統講義です.
臨床実習は,上記特徴を十分に踏まえた上で,計画されています.特に,気道管理やモニター機器を用いた全身状態の評価を実際にベッドサイドで学習していただきますので手応えのある実習になります.

大学院

大学院における教育は,研究のプロセスを習得することが目的ですので,問題の抽出法,問題の研究への展開,研究の位置付け,プロトコールの作成法,倫理委員会への対応,研究の遂行と修正の仕方,データの扱い方・統計処理法,学会発表と論文作成法,など基礎的アプローチをステップ・バイ・ステップで学習しています.
現在,全員が社会人大学院生ですので,日常の診療に即した研究テーマを心がけ,一人当たり3つのテーマで研究を同時並行で行なっています.

診療の概要

周術期医学・麻酔科学:
手術を中心とした急性期医療は,大学附属病院にとって根幹に関わる部分を占めています.腹腔鏡や胸腔鏡などの内視鏡手術,ロボット手術など手術に伴う侵襲性が近年,大幅に軽減されている反面,手術症例の高齢化に伴い慢性疾患を合併することが多くなりました.実際に,診療報酬上『麻酔困難者』と呼ばれるハイリスク症例が急増しており,全体の20% 近くになっています.つまり,手術に際して考慮すべきリスクは,手術関連リスク,麻酔関連リスク,患者リスクを総合的に判断すべきであり,新しいアプローチが必要となってきました.
この新しいアプローチが『周術期管理チーム』という多職種連携による対応であり,当院はわが国でも最初に(2011年)臨床導入をしたことで特徴的な診療を提供しています.実際,過去5年間に外科系の平均在院日数が 2.5 日短縮されたことから必須の診療体制といえます.
集中治療医学は,当院の救急救命センターと連動した診療を提供しており,特に,ハイリスク手術の術後管理を提供しています.
疼痛管理については,まず,術後疼痛に対して acute pain service (APS) を提供しています.APS は周術期管理チームの一部ですが,特に,病棟看護師,薬剤師との連携が特徴です.慢性痛については主に,ペインクリニック外来で対応していますが,難治性の慢性痛については脊髄刺激装置を透視下に装着する新しいアプローチも積極的に採用しています.

その他

社会貢献

  1. 国際支援事業
    新興国の医療支援は,厚生労働省,外務省,経済産業省など,複数の省庁が継続的に,そして極めて強力に進めている事業です.我が国においても麻酔科医は決して充足しているわけではありませんが,新興国では致命的な状況にあります.
    そこで,現在はベトナム麻酔科学会と東邦大学が契約を結び国際医療センター(NCGM) の支援事業を行なっています.具体的には,毎月2名の麻酔科医を大森病院に招聘し,最新の麻酔管理についてベッドサイドで再教育を行なっています.また,ベトナム麻酔学会やベトナム各地での講演活動も定期的に行なっています.
  2. NPO 活動
    複数の学会にまたがる診療内容は特定の学会のみでは対応が難しいため,NPO 法人を母体とした教育活動を行なっています.具体的には,急性呼吸不全に対する ECMO の導入をゴールとした 『NPO ECMO Japan』,重症の急性呼吸不全の呼吸管理の方法をハンズオンのかたちで提供する『NPO 呼吸管理運営機構』などがあります.
  3. 講演会
    大森地区のみならず都内全域の麻酔科医,看護師を対象とした基礎セミナー『TOHO Weekend seminar』を年に4回開催しています.

学会活動

  1. 日本麻酔科学会
    教室代表者が学会理事として,麻酔科学,周術期医学の今後について積極的に参加しています.特に,新しい専門医制度,社会保険制度,標榜医問題について具体的な方策を考えています.
  2. 日本集中治療医学会
    教室代表者は,代議員として学会活動に参加していますが,最近では東京オリンピック,パラリンピックに対応するために Mass Casualty Incidents 委員会メンバーとしてテロ対策を担当しています.
  3. 日本ペインクリニック学会
    教室代表者は,認定施設の代表であり,ペインクリニック専門医の育成を図っています.
  4. 日本呼吸療法医学会
    教室代表者は,学会監事として学会の現在の活動や将来の方向性の適切性を判断しています.
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151