医学部

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解剖学講座生体構造学分野

所属教員名

佐藤 二美 / 教 授
川島 友和 / 准教授
星  秀夫 / 講 師
須藤 則広 / 助 教

運営責任者

研究室概要

解剖学講座は、帝国女子医学専門学校創立の翌年1926年に、西成甫教授(~1946、1962~1966)、森於菟教授(~1961)によって開講されました。その後2つの講座に分かれ、解剖学第一講座として、幡井勉 (1962、1965~1983)、橋本長(~1990)、岸清(~2005)教授が主宰してきました。2005年、基礎医学講座再編により解剖学講座生体構造学分野となり、佐藤二美が着任し、現在に至っています。当分野は、教育として主に肉眼解剖学を担当し、分野内に東邦大学白菊会事務局があります。研究とともに、解剖学教育、そしてそれを支える遺体関係業務をこなしております。

研究の概要

大きく3つの柱(中枢神経系、肉眼解剖学、解剖学教育)に基づく研究を行っています。それぞれがいくつかのテーマに分かれています。

1)大脳基底核を中心とした神経回路網の解析

大脳基底核は、大脳皮質—大脳基底核—視床—大脳皮質という機能ループ回路を形成しており、感覚運動・眼球運動・前頭連合野・眼窩前頭皮質・前帯状回という5つの並列したループ回路に分類されています。これらのループ内の情報処理様式、各ループ間の相互作用について、軸索標識法を用い軸索分岐の多様性に注目し、単一軸索の解析を中心に行っています。

2)網膜神経回路のシナプスレベルでの解析

外界の視覚情報が網膜に入力されると、そこで何らかの情報処理が行われ、最終的に活動電位という形に変換されて脳に出力されます。網膜では約20種類の局所神経回路があり、視覚情報ごとに最適な局所神経回路を選び出して使用していることがわかってきています。しかし、これら多様性のある局所神経回路はごく少数の神経回路しか同定されておらず、① 新規の神経回路を発見・同定 ② 同定した神経回路と周囲環境との関連性の探索 ③ 同定した神経回路と行動との関連性の探索に関する研究を、共焦点顕微鏡を用いた形態学的アプローチとホールセルクランプを用いた電気生理学的アプローチを併用して、シナプスレベルで解析しています。

3)海馬台の細胞構築と線維連絡の解析

海馬台は、海馬体の出力部に位置し記憶形成にとって重要な部位で、情動記憶に関係が深い腹側海馬台と空間記憶に関係が深い背側海馬台に分けられています。これまで腹側海馬台を免疫組織化学によって細胞構築の解析を行い、腹側海馬台が遠位部と近位部に分けられ、近位部の内部が5つの層に区分できることを明らかにしてきました。今後は背側海馬台の領域区分を明確にし、新たに確立した領域区分を基に、領域毎の神経投射について軸索標識法を用いて解析し、海馬台の部位の違いに基づく空間認知や情動機能に果たす役割について明らかにする予定です。

4)D-アミノ酸の生体内解析

ペプチド鎖中のアミノ酸の配列と絶対配置を同時に認識できるキラルプローブの開発を試みています。今まで生体中には特定の組織にD-アミノ酸がいくつか見出され、その存在と生理機能(加齢や疾病)との関係が注目されてきています。D-アミノ酸の存在が未だ不明の神経細胞において、D-アミノ酸の生体内での微量センシングが実現すれば、今まで全く未開拓であったD-アミノ酸の関与する生理活性機能解明(皮膚組織の再生機構、アルツハイマー病発生の初期過程の解明など)の第一歩となり得ます。

5)局所における微小循環系の形態学的解析

リンパ管を含む微小循環系は組織の維持に重要な働きをすると共に、生体防御に関わるリンパ系細胞の通路としても重要な使命を持っています。また、浮腫の原因や悪性腫瘍の転移ルートとして、臨床的にも極めて重要です。そこで様々な炎症モデルにおける微小循環系を、多重免疫染色法とレクチン染色法を併せ、これを共焦点レーザー顕微鏡で3次元的に可視化することで、生体内の局所における変化を形態と機能の両面から解析しています。

6)心臓血管系の臨床解剖学

心臓血管系領域における低侵襲かつ機能温存を指向した術式検討のために、人体局所解剖学、組織学、画像解剖学的手法を用いて、心臓筋骨格、弁複合体、血管系、神経系、ならびに刺激伝導系などの心臓諸構造の臨床解剖学的基盤構築を行っています。

7)心臓制御構造の比較形態学

心臓制御構造である刺激伝導系ならびに自律神経系の形態学的普遍性と多様性について進化形態学的解釈や動物実験への応用解釈を目指して、脊椎動物の比較形態学的解析ならびに画像解剖学的解析を行っています。

8)運動器の機能解剖学

骨格、筋系、ならびにその支配神経の体性運動構造の相互関係に関する比較解剖学的精査に加え、画像解析や運動学的解析を併用し、脊椎動物の進化形態・環境適応変化に着目した機能解剖学的解析を行っています。

代表論文

  1. Kawashima T, Sato F. Clarifying the anatomy of the atrioventricular node artery. Int J Cardiol 2018; 269:158-164
  2. Ishihara Y, Fukuda T, Sato F. Internal structure of the rat subiculum characterized by diverse immunoreactivities and septotemporal differences. Neurosci Res 2019; pii: S0168-0102(18)30538-8
  3. Hoshi H, Sato F. The morphological characterization of orientaion-biased displaced large-field ganglion cells in the central part of goldfish retina. J Comp Neurol 2018; 526:243-261
  4. Sato H, Kawamura I, Yamagishi A, Sato F. Solid state VCD spectra of isoleucine and its related compounds: effects of interplay between two chiral centers. Chem Lett 2017; 46:449-452
  5. Kawashima T, Thorington RW Jr., Bohaska PW, Chen YJ, and Sato F. Anatomy of shoulder girdle muscle modifications and walking adaptation in the scaly Chinese pangolin (Manis pentadactyla pentadactyla: Pholidota) compared with the partially osteoderm-clad armadillos (Dasypodidae). Anat Rec 2015; 298:1217-1236
  6. Kawashima T, Sato F. Visualizing anatomical evidences on atrioventricular conduction system for TAVI. Int J Cardiol 2014; 174:1-6
  7. Hoshi H, Tian LM, Massey SC, Mills SC. Properties of the ON bistratified ganglion cell in the rabbit retina J Comp Neurol 2013; 521:1497-1509
  8. Murakami K, Ishikawa Y, Sato F. Localization of α7 nicotinic acetylcholine receptor immunoreactivity on GABAergic interneurons in layers I-III of the rat retrosplenial granular cortex. Neuroscience 2013; 252:443-459
  9. Kawashima T, Sato F. Detailed comparative anatomy of the extrinsic cardiac nerve plexus and postnatal reorganization of the cardiac position and innervation in the great apes: orangutans, gorillas, and chimpanzees. Anat Rec 2012; 295:438-453
  10. Hoshi H, Tian LM, Massey SC, Mills. Two distinct types of ON directionally-selective ganglion cells in the rabbit retina. J Comp Neurol 2011; 519: 2509-21
  11. Hoshi H, Liu WL, Massey SC, Mills SLON inputs to the OFF layer: Bipolar cells that break the stratification rules of the retina. J Neurosci 2009; 29: 8875-8883
  12. Sato F, Parent M, Lévesque M, Parent A: Axonal branching pattern of neurons of the subthalamic nucleus in primates. J Comp Neurol 2000; 424:142-152

教育の概要

学部

当教室はマクロ解剖学・神経解剖学の講義と実習を担当しています。
  1. 生体の構造1-②(運動器・末梢神経系ユニット、1年次Ⅱ期、11コマ、講義)
  2. 生体の構造1-②(呼吸・循環器系ユニット、1年次Ⅱ期、5コマ、講義)
  3. 生体の構造1実習Ⅱ(骨学実習、1年次Ⅱ期、12コマ、実習)
  4. 生体の構造1-③(消化器系、1年次Ⅲ期、4コマ、講義)
  5. 生体の構造1-③(内分泌・泌尿生殖器系、1年次Ⅲ期、2コマ、講義)
  6. 生体の構造2(局所解剖学、2年次Ⅰ期、11コマ、講義)
  7. 生体の構造2(感覚器・中枢神経系、2年次Ⅰ期、11コマ、講義)
  8. 生体の構造2実習(マクロ解剖学実習、2年次Ⅰ期、96コマ、実習)
  9. 選択制臨床実習(6年次Ⅰ期、120コマ、実習)
まず1年次において、生体のマクロ構造を系統(中枢神経系以外)別に学びます。また運動器系の講義と並行して骨学実習が行われます。
2年次では、1年次に講義で学んだ基礎知識に基づき、献体されたご遺体を約3か月間の期間をかけて解剖します。実習では人間の死および生命の尊厳について考え、医の倫理の根底を培うことを目的としています。これと並行して局所解剖学の講義で、系統別に学んだ知識を人体のそれぞれの部位において統合的に理解できるようにしています。さらに、中枢神経系についての講義と実習が行われます。
6年生では希望する学生を対象に、臨床解剖の実習が行われます。

大学院

  1. 医科学専攻修士課程
    共通必修医科学研究序論(2単位)(分担)
    共通選択人体構造機能学特論(2単位)
    専攻科目高次機能制御系人体構造機能学(演習4単位、実習12単位)
  2. 医学専攻博士課程
    共通選択生体構造コース(1単位)(分担)
    専攻科目高次機能制御系人体構造機能学特論Ⅰ・Ⅱ(4単位)、演習(12単位)、実習(4単位)
当研究室における研究活動に沿った領域を中心に、「解剖学」的考え方の基本を身につけます。構造の理解を基本として、研究テーマを定め、広い視野から多面的アプローチによって、分子・細胞・組織・マクロレベルで生物構造を理解し解析できる能力の獲得を目指します。

その他

社会貢献

定例で行っているもの
  1. 地域看護専門学校などの解剖見学実習
  2. オープンキャンパス、その他の高校生の実習室見学
過去の実績
  1. 第4回中学生夢スクール(2014)を開催

学会活動

2012年 日本解剖学会関東支部第100回学術集会を主催。
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151