社会医学講座予防医療学分野
所属教員名
朝倉 敬子 / 教 授
運営責任者
講座概要
本格的に高齢化が進む時代となりました。ただ長く生きるのではなく、健康で幸せに長く生きることを誰もが望んでいます。医療費や社会保障費の観点からも、病気になってから治療するのではなく、病気にならない方が望ましいことは明らかです。そういった背景から、当分野は令和5年度に新たに設置されました。疾病の発症予防(一次予防)および重症化予防(二次予防)に関わる因子の研究・教育を行うとともに、行動変容につながる効果的な介入法や社会環境・制度整備の方向性についても積極的に情報の収集と発信を行っていきます。ふつうに(場合によっては、曲がりなりにもふつうに)暮らしている人の健康について、ちょっとした疑問や改善のアイデアをお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に活動したいと思っています。
研究の概要
食と健康を主な研究テーマとしていますが、運動や休養など、疾病発症と関わるそのほかの生活因子も広く研究対象としています。
- 栄養素摂取量の記述疫学研究
詳細な食事調査に基づき日本人成人、小児の栄養素摂取量を推定し、その適切性を検討する研究を行っています。各年代・性別における栄養素摂取量を正確に記述することで日本人の食習慣の良い点・改善の必要な点を明らかにし、今後必要な対応について検討しています。スマートフォンアプリやモニタリングデバイスなどを用いた新しい食事調査法の利用可能性の検討も行っています。
- 食習慣改善に関する研究
予防医学の観点から、食習慣改善に資する食育・食環境整備の研究を行っています。栄養学、医学、保健学、行動科学などに基づく食育教材とその教育効果判定方法の開発を進めています。物理的・社会的食環境を定量的に評価し食習慣との関連を検討、さらに食環境への介入の可能性についても検討しています。
- 母子保健・学校保健
幼児・小児とその保護者について、食を中心とする生活習慣に関する調査を実施しています。未成年者の適切な食・運動・休養に関わる家庭要因や社会環境要因、親子関係などについて検討しています。特に学校給食は食に関する介入ツールとして重要であり、その有効活用方法について検討しています。
- 地域保健
衛生学分野と協力し、地元大田区との共同研究を実施しています。区の保有する医療・保健関連データや区民対象の質問票調査結果を利用し、地域特性の把握および地域住民の健康増進を目的とした各種取り組みの実施に協力しています。さらに、区内事業所において食関連の調査を実施し、就労者における食の改善について検討しています。
- 臨床疫学研究
臨床医としての経験を活かし、臨床各科との共同研究を実施しています
代表論文
- Oono F, Murakami K, Fujiwara A, Shinozaki N, Adachi R, Asakura K, Masayasu S, Sasaki S. Development of a Diet Quality Score for Japanese and Comparison With Existing Diet Quality Scores Regarding Inadequacy of Nutrient Intake. J Nutr. 2023;153:798-810.
- Yu T, Oguma Y, Asakura K, Abe Y, Arai Y. Relationship between dietary patterns and physical performance in the very old population: a cross-sectional study from the Kawasaki Aging and Wellbeing Project. Public Health Nutr. 2023;26:1163-1171
- Mori S, Asakura K,Sasaki S, Nishiwaki Y. Misreporting of height and weight by primary school children in Japan: a cross-sectional study on individual and environmental determinants. BMC Public Health. 2023;23:775.
- Asakura K, Mori S, Sasaki S, Nishiwaki Y. A school-based nutrition education program involving children and their guardians in Japan: facilitation of guardian-child communication and reduction of nutrition knowledge disparity. Nutr J. 2021;20:92,
- Asakura K, Etoh N, Imamura H, Michikawa T, Nakamura T, Takeda Y, Mori S, Nishiwaki Y. Vitamin D Status in Japanese Adults: Relationship of Serum 25-Hydroxyvitamin D With Simultaneously Measured Dietary Vitamin D Intake and Ultraviolet Ray Exposure. Nutrients.2020;12:E743.
- Asakura K, Todoriki H, Sasaki S. Relationship between nutrition knowledge and dietary intake among primary school children in Japan: Combined effect of children's and their guardians' knowledge. J Epidemiol. 2017;27:483-491.
- Asakura K, Sasaki S. SFA intake among Japanese schoolchildren: current status and possible intervention to prevent excess intake. Public Health Nutr. 2017; 20:3247-3256.
- Asakura K, Sasaki S. School Lunches in Japan: Their Contribution to Healthier Nutrient Intake Among Elementary-School and Junior High-School Children. Public Health Nutr. 2017;20:1523-1533.
- Asakura K, Uechi K, Masayasu S, Sasaki S. Sodium sources in the Japanese diet: difference between generations and sexes. Public Health Nutr. 2016; 19:2011-2023.
- Asakura K, Uechi K, Sasaki Y, Masayasu S, Sasaki S. Estimation of sodium and potassium intakes assessed by two 24 h urine collections in healthy Japanese adults: a nationwide study. Br J Nutr. 2014;112:1195-1205.
教育の概要
学部
- 衛生学(3年生、衛生学分野と合同で実施)
環境保健、産業保健を主に扱う科目です。そのうち、生活環境・生活習慣に関連する講義、地域保健活動の制度的側面や企画立案ついての講義を担当しています。
- 統合型社会医学実習(4年生、社会医学講座他分野および他講座と合同で実施)
社会医学関連の講義で学んだことをベースに、学生が数名ずつに分かれてグループワークを行います。社会医学関連のテーマについて研究計画を立案し、調査研究を実施します。データを取りまとめて考察し、口頭発表および論文執筆を行います。社会医学的な課題を認識し掘り下げる経験をすること、研究実施に関する一連の流れを経験することを目的としています。
- 統合型社会医学演習(6年生、社会医学講座他分野および法医学講座と合同で実施)
医師国家試験で必要となる社会医学の知識を習得するための一連の講義・演習から成っています。また、EBM(Evidence-based Medicine)入門と称する一連の演習では模擬症例を基に、課題抽出から情報収集、情報整理、適切な治療選択に至る流れを経験します。
大学院
医科学専攻修士課程
医学専攻博士課程
※修士課程・博士課程ともに、社会環境医療系予防医療学専攻として令和6年度より開講予定。研究テーマは上記の通りです。
医学専攻博士課程
※修士課程・博士課程ともに、社会環境医療系予防医療学専攻として令和6年度より開講予定。研究テーマは上記の通りです。
その他
社会貢献
- 国、自治体などにおける活動 内閣府食品安全委員会専門委員、内閣府消費者委員会専門委員、厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会委員、東京都食品安全情報評価委員会・専門委員会委員など(いずれも令和5年度)を務めています。自治体において、日本人の食事摂取基準や学校給食摂取基準に関する研修会など多数実施しています。
- その他団体など NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ およびアストラゼネカ株式会社が共同で実施しているYoung Health Program(※こども食堂における食育活動)にボランティアとして参加、食育教材の作成支援をしています。
学会活動
主に活動している学会は以下の通りです。
- 日本疫学会
- 日本公衆衛生学会
- 日本衛生学会
- 日本産業衛生学会