薬理学講座
所属教員名
運営責任者
講座の概要
薬理学講座は、帝国女子医学専門学校の開校から2年経過した1927年4月に開講されました。初代教授久保田實(1927年4月~1940年3月)、2代教授松田勝一(1940年4月~1944年3月)、3代教授祖父江勘文(1944年5月〜1945年3月)、4代教授戸木田菊次(1945年4月~1964年7月)、5代教授伊藤隆太(1965年3月〜1987年3月)、6代教授内山利満(1984年9月〜2004年12月)、7代教授水流弘通(1996年6月〜2010年3月)が講座を主宰してきました。2010年4月に8代教授として杉山篤が着任し、2017年には開講90周年を迎えました。輝かしい伝統を守りながら、新時代のニーズにも対応できる薬理学講座を目指して教室員一同、日々努力しています。
研究の概要
遺伝子-臓器・器官レベルで得られた情報を生体に反映させ、統合的に解釈し、医療の現場に貢献できる研究を展開しています。研究対象も薬物の動態や作用機序に限定せず、再生医学に基づいた治療手段や医療機器の開発など、幅広い研究を総合的に推進しています。
- 薬物誘発致死性不整脈の予知システム
薬物治療に起因する致死性不整脈を回避することは、創薬における最優先課題の一つになっています。「ヒトiPS由来心筋細胞オンチップモデル」および「In vivo不整脈検出モデル動物」を用いた新規候補化合物の不整脈惹起性を推定する評価システムの開発を行い、国際標準化を目指した活動を展開しています。 - 超小型ミニブタの開発・応用
「ブタ」の実験モデル動物への応用研究を進め、成豚でも体重10 kg程度の世界最小サイズの超小型ミニブタ(登録名:マイクロミニピッグ)の開発に成功しました。慢性心不全、QT延長症候群、動脈硬化、糖尿病、薬物代謝・動態など、様々な分野の研究への応用が進められています。 - 腎動脈周囲交感神経アブレーション術の心血管系に対する作用メカニズム
腎動脈周囲交感神経アブレーション術の治療抵抗性高血圧症に対する臨床的有効性は未だ確立されていません。慢性心不全/重症高血圧/致死性不整脈を呈するモデル動物を用いて、腎除神経の血圧、心室頻脈性不整脈、心房細動および催不整脈性に対する作用を評価し、その臨床応用を検討しています。 - 拡張不全型心不全の治療戦略
収縮不全型心不全(HFrEF)に対してはエビデンスに基づく治療ガイドラインが確立されていますが、拡張不全型心不全(HFpEF)に対する有効な薬物療法は未だ不明のままです。この課題解決のため、新規HFpEFモデル動物を用いたEP4受容体刺激薬やリアノジン受容体機能修飾薬の薬効評価試験が進行中です。また、がん分子標的薬で惹起される左室拡張不全の機序解明と治療法の研究にも着手しています。 - 心肺蘇生時の心血行動態・病態薬理
心肺蘇生に関するMechano-physiology研究を展開しています。心肺蘇生補助器具(カーディオポンプ・インピーダンス閾値弁装置)の有効性を高める心肺蘇生法の考案、胸部叩打による心臓ペーシング法の開発、心肺蘇生時の心血行動態・病態薬理解明のための動物実験を実施し、研究成果に基づいた心肺蘇生トレーニング教材の開発や心肺蘇生講習会を実施しています。 - 心房細動の新規薬物療法
画期的な薬物療法が未だ開発されていない不整脈が心房細動です。治療対象である「発作性」および「慢性持続性」心房細動モデル動物の開発に成功しました。心房選択的イオンチャンネル修飾薬の抗心房細動作用を総合的に分析することにより、有望な心房細動の治療標的分子を明確にし、心房細動に有効かつ安全な薬物療法の確立を目指した研究を推進しています。 - 薬物を用いた冠動脈バイパスグラフト手術時のスパズム回避戦略の構築
移植したバイパスグラフトのスパズムによる心筋梗塞は、200~400例に1例発生するといわれており、発生した場合の致死率が20-50%と非常に高い致死的合併症です。冠動脈バイパスグラフト手術を受けた患者の内胸動脈の一部を活用してスパズム回避に有効な治療戦略の探索研究を行っています。 - げっ歯類(マウス・ラット・モルモット)を用いた薬物の心血管作用
古典的な実験手技と先端的科学技術を融合させた新規in vivo動物モデルおよび摘出標本(心房筋・心室筋マグヌス標本、ランゲンドルフ灌流心標本など)を用いて、薬物の心血管系への作用を総合的に評価・検討しています。 - 炎症・疼痛制御学講座(寄付講座種別B) 研究代表者:川合 眞一
近年の高齢化に伴う疾病構造の急速な変化から、炎症・疼痛に関わる諸疾患は国民の「生活の質」の維持・向上に大きな障害となっています。当講座は、免疫疾患治療薬や、ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬、また多様な作用機序の各種鎮痛薬を臨床応用する際に必要な基礎的・臨床的研究および教育を行っています。 - 加齢薬理学講座(寄付講座種別B) 研究代表者:松本 明郎
急速に進展している高齢社会において今最も求められている高齢者、超高齢者の至適薬物治療のため、特に臨床における薬物治療の問題点に関して臨床機関と協力して情報収集し、その情報を元に薬力学的な実験解析を行い、更に、得られた基礎研究成果を元に、臨床における薬物治療の至適化を図るといった臨床薬物治療と基礎研究を相互に繋ぐ学際的取り組みを行なっています。 - 細胞治療学講座(寄付講座種別B) 研究代表者:武井 義則
臓器間ネットワークという観点から、個体全体の老化を改善する、全く新たな研究領域を開拓しています。老化遅延細胞の移植による老化改善をモデルに、老化を抑制・拮抗するメカニズムの解析を行い、老化改善が軽度認知障害や高齢者糖尿病などの加齢関連疾病への治療法となる可能性を検討し、健康寿命を延伸する老化制御法の開発を行っています。 - その他
移植用ヒトiPS由来心筋細胞シートの実用化に関する研究、患者iPS細胞を利用した個別化医療に関する研究、疾患iPS細胞を利用した創薬研究、ヒト由来脈管細胞を用いた人工血管の薬理学的特徴に関する研究、心電図の比較病態生理学に関する研究が進行中です。
代表論文
- Izumi-Nakaseko H, Fujiyoshi M, Hagiwara-Nagasawa M, Goto A, Chiba K, Kambayashi R, Naito AT, Ando K, Kanda Y, Ishii I, Sugiyama A. Dasatinib can impair left ventricular mechanical function but may lack proarrhythmic effect: a proposal of non-clinical guidance for predicting clinical cardiovascular adverse events of tyrosine kinase inhibitors. Cardiovascular Toxicology 2019 (in press)
- Matsukura S, Nakamura Y, Hoshiao K, Hayashi T, Koga T, Goto A, Chiba K, Lubnaa NJ, Hagiwara-Nagasawa M, Izumi-Nakaseko H, Ando K, Naito AT, Sugiyama A. Effects of moxifloxacin on the proarrhythmic surrogate markers in healthy Filipino subjects: Exposure-response modeling using ECG data of thorough QT/QTc study. J Pharmacol Sci 2018;136:234-241.
- Cao X, Wada T, Nakamura Y, Matsukura S, Izumi-Nakaseko H, Ando K, Naito AT, Sugiyama A. Sensitivity and reliability of halothane-anaesthetized microminipigs to assess risk for drug-induced long QT syndrome. Basic Clin Pharmacol Toxicol 2017;121:465-470.
- Wada T, Ohara H, Nakamura Y, Cao X, Izumi-Nakaseko H, Ando K, Honda M, Yoshihara K, Nakazato Y, Lurie KG, Sugiyama A. Efficacy of precordial percussion pacing assessed in a cardiac standstill microminipig model. Circulation J 2017;81:1137-1143.
- Sugiyama A, Duval S, Nakamura Y, Yoshihara K, Yannopoulos D. Impedance threshold device combined with high quality cardiopulmonary resuscitation improves survival with favorable neurological function after witnessed out-of-hospital cardiac arrest. Circulation J 2016;80:2124-2132.
- Wada T, Ohara H, Nakamura Y, Yokoyama H, Cao X, Izumi-Nakaseko H, Ando K, Murakoshi N, Sato A, Aonuma K, Takahara A, Nakazato Y, Sugiyama A. Impacts of surgically-performed renal denervation on the cardiovascular and electrophysiological variables in the chronic atrioventricular block dogs -comparison with those of amiodarone treatment-. Circulation J 2016;80:1556−1563.
- Uda Y, Xu S, Matsumura T, Takei Y. P2Y4 Nucleotide Receptor in Neuronal Precursors Induces Glutamatergic Subtype Markers in Their Descendant Neurons. Stem Cell Reports. 2016;6:474-482.
- Hasunuma T, Tohkin M, Kaniwa N, Jang IJ, Cui Y, Kaneko M, Saito Y, Takeuchi M, Watanabe H, Yamazoe Y, Uyama Y, Kawai S. Absence of ethnic differences in the pharmacokinetics of moxifloxacin, simvastatin, and meloxicam among three east Asian populations and Caucasians. Br J Clin Pharmacol 2016; 81:1078-1090.
- Yagi Y, Nakamura Y, Kitahara K, Harada T, Kato K, Ninomiya T, Cao X, Ohara H, Izumi-Nakaseko H, Suzuki K, Ando K, Sugiyama A. Analysis of onset mechanisms of a sphingosine 1-phosphate receptor modulator fingolomod-induced atrioventricular conduction block and QT-interval prolongation. Toxicol Appl Pharmacol 2014;16:39-47.
- Whalen EJ*, Foster MW*, Matsumoto A*, Ozawa K, Violin JD, Que LG, Nelson CD,Benhar M, Keys JR, Rockman HA, Koch WJ, Daaka Y, Lefkowitz RJ, Stamler JS. Regulation of beta-adrenergic receptor signaling by S-nitrosylation of G-protein-coupled receptor kinase 2. Cell 2007;129:511-22.
教育の概要
学部
領域:病態の科学
サブ領域:病態の科学②、ユニット:薬理学
(対象学年 2年、授業期間 2期、ユニット時限数 30、分類 講義)
サブ領域:病態の科学実習、ユニット:病態の科学実習II
(対象学年 2年、実習期間 2期、担当ユニット時限数 21、分類 実習)
病気の治療、予防、診断に薬物の果たす役割は非常に大きなものです。薬物は正しく用いることによって初めて「くすり」となり、適正な薬物療法が可能となります。基礎薬理学、臨床薬理学および薬物療法学は、基礎医学と臨床医学の両分野にまたがりますが、互いに密接に関連しています。病態の科学②の薬理学ユニットでは薬理作用の基本原理について学びます。さらに、病態の科学実習IIにおいては、薬物と生体との相互作用を、生物学的見地から観察、理解し、科学的思考法を修得します。以上を通して、臨床医学における「薬物治療学」の基礎を学びます。これらの薬理学教育を受けるには自主学習の態度が重要です。また、薬理学の理解は、生化学、生理学、解剖学などの基本知識が十分に習得されていることを前提としています。薬理学は、臨床医学における「薬物治療学」を正しく理解・実施するための基礎として重要であるばかりでなく、生体調節機構の解明という自然科学的側面も有します。薬理学では、さらに新薬の開発、薬物の臨床試験に必要な「臨床薬理学」の基礎を学びます。臨床における適切な薬物使用のためには、薬物(化学物質)の生体における基本的知識を修得し、科学的思考法に則った臨床応用への根拠を理解することが重要です。
サブ領域:病態の科学②、ユニット:薬理学
(対象学年 2年、授業期間 2期、ユニット時限数 30、分類 講義)
サブ領域:病態の科学実習、ユニット:病態の科学実習II
(対象学年 2年、実習期間 2期、担当ユニット時限数 21、分類 実習)
病気の治療、予防、診断に薬物の果たす役割は非常に大きなものです。薬物は正しく用いることによって初めて「くすり」となり、適正な薬物療法が可能となります。基礎薬理学、臨床薬理学および薬物療法学は、基礎医学と臨床医学の両分野にまたがりますが、互いに密接に関連しています。病態の科学②の薬理学ユニットでは薬理作用の基本原理について学びます。さらに、病態の科学実習IIにおいては、薬物と生体との相互作用を、生物学的見地から観察、理解し、科学的思考法を修得します。以上を通して、臨床医学における「薬物治療学」の基礎を学びます。これらの薬理学教育を受けるには自主学習の態度が重要です。また、薬理学の理解は、生化学、生理学、解剖学などの基本知識が十分に習得されていることを前提としています。薬理学は、臨床医学における「薬物治療学」を正しく理解・実施するための基礎として重要であるばかりでなく、生体調節機構の解明という自然科学的側面も有します。薬理学では、さらに新薬の開発、薬物の臨床試験に必要な「臨床薬理学」の基礎を学びます。臨床における適切な薬物使用のためには、薬物(化学物質)の生体における基本的知識を修得し、科学的思考法に則った臨床応用への根拠を理解することが重要です。
大学院
医科学専攻修士課程
共通必修 医科学研究序論(2単位)(分担)
共通選択 薬理学特論(2単位)
専攻科目 代謝機能制御系 薬理学(演習4単位、実習12単位)
医学専攻博士課程
共通選択 機能調節コース(1単位)(分担)
専攻科目 代謝機能制御系 薬理学 薬理学特論I・II(20単位)、演習(12単位)、実習(4単位)
共通必修 医科学研究序論(2単位)(分担)
共通選択 薬理学特論(2単位)
専攻科目 代謝機能制御系 薬理学(演習4単位、実習12単位)
医学専攻博士課程
共通選択 機能調節コース(1単位)(分担)
専攻科目 代謝機能制御系 薬理学 薬理学特論I・II(20単位)、演習(12単位)、実習(4単位)
その他
社会貢献
心肺蘇生講習会(小・中学生、一般人)
生涯教育セミナー(医師会・薬剤師会・学会)
市民公開講座
生涯教育セミナー(医師会・薬剤師会・学会)
市民公開講座
学会活動
日本薬理学会 http://www.pharmacol.or.jp
日本安全性薬理研究会 http://www.j-sps.org
日本不整脈心電学会 http://new.jhrs.or.jp
日本循環薬理学会 http://square.umin.ac.jp/jacp/
応用薬理研究会 http://www.che.tohoku.ac.jp/~scf/ouyouyakuri_top.htm
比較心電図研究会 http://hikakusinndennzu.kenkyuukai.jp/about/
日本循環器学会 http://www.j-circ.or.jp
日本毒性学会 http://www.jsot.jp
日本獣医循環器学会 http://www.jsvc.jp
日本生理学会 http://physiology.jp/
日本安全性薬理研究会 http://www.j-sps.org
日本不整脈心電学会 http://new.jhrs.or.jp
日本循環薬理学会 http://square.umin.ac.jp/jacp/
応用薬理研究会 http://www.che.tohoku.ac.jp/~scf/ouyouyakuri_top.htm
比較心電図研究会 http://hikakusinndennzu.kenkyuukai.jp/about/
日本循環器学会 http://www.j-circ.or.jp
日本毒性学会 http://www.jsot.jp
日本獣医循環器学会 http://www.jsvc.jp
日本生理学会 http://physiology.jp/
主催学会/研究会
第1回霧島会議(2014年1月)
第43回比較心電図研究会(2016年9月)
第20回応用薬理シンポジウム(2018年8月)
第28回日本循環薬理学会(2018年12月)
第10回日本安全性薬理研究会(2019年2月)
第141回日本薬理学会関東部会(2019年10月)
第43回比較心電図研究会(2016年9月)
第20回応用薬理シンポジウム(2018年8月)
第28回日本循環薬理学会(2018年12月)
第10回日本安全性薬理研究会(2019年2月)
第141回日本薬理学会関東部会(2019年10月)