医学部

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医学情報学研究室

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運営責任者

研究室概要

医学・医療を取り巻く環境の変遷には目覚ましいものがあります。例えば,医学・医療の現場では様々な情報機器が利用されるようになりました。また,現代の医学・医療には,EBM(Evidence-Based Medicine)といわれるように,科学的根拠が強く求められるようになっています。医学情報学研究室は学術環境の変化に応じて,医学研究・教育を支える学術分野,具体的には情報理論,生体工学,数理生物学,データ解析法,数理統計学など,多岐にわたる分野で研究・教育活動を行ってきました。これからも時代の要請に応えるべく,様々な分野の研究・教育にかかわっていきたいと考えています。

研究の概要

最近の医学情報学研究室における主要な研究テーマ・業績は以下の通りです。

  • 行列型配列データを前提とした統計的モデルにかかわる推測方法と,その応用に関する研究
    共分散行列が未知の行列型正規分布モデルにおける平均行列の推定問題において,経験ベイズ法より導出される行列型縮小推定量を元にして,より広い推定量の族を考えました。この推定量の族は,平均行列のサイズや次元の大きさ(共分散行列のサイズ)のすべての大小関係を含む形で表現され,これまでに発見されている様々な縮小推定量を含むという特徴があります。また,その推定量の族のリスク関数が平均行列のサイズや次元の大きさに依存しない統一的な方法によって評価できるところも利点となっています。実際,そのリスクの評価式から不偏推定量を改良する推定量を導く統一的な方法をいくつか紹介しました。
    縮小型の推定量には,過度な縮小によって推定量の符号が変わってしまうという問題が知られています。この問題を克服する方法の一つである打ち切り手法について考察し,打ち切り型推定量が元の縮小推定量のリスクを減少させることを解析的に示すことに成功しました。また,数値実験を通じて,打ち切り型推定量が元の縮小推定量のリスクを大きく減少させることを示しました。
  • 制約のあるパラメータのベイズ推定法
    変量効果モデルにおける予測問題では,予測量の族を制限することによって,母数制約のある精度行列(共分散行列の逆行列)の推定問題に帰着できる場合があります。母数制約のある精度行列のベイズ推定のために,まず,制約された母数空間上の一様分布を事前分布(無情報事前分布)とする一般化ベイズ推定量(事後平均)が不偏推定量を改良することを証明しました。また,この一般化ベイズ推定量の改良を考え,階層的ベイズ推定量などの改良型推定量を導出することができました。この結果を利用して,母数制約のある精度行列の推定問題に関連する変量効果モデルの予測問題において,最良線形不偏予測量を改良する一般化ベイズ予測量を構成することに成功しました。
  • 統計的推測問題の縮約や分解による新たな推測手法の開発
    共分散行列のミニマクス推定量の構成は,正の対角成分をもつ下三角行列全体がなす変換群について不変な推定量を考えることによって達成されます。このミニマクス推定量の改良は直交行列全体がなす変換群について不変な推定量を考えることが一般的でした。これに対して,下三角行列の部分群に関する不変な推定量に着目し,この不変推定量の中からミニマクス推定量を見つけることを考えました。この不変推定量のリスク関数より,元の共分散行列の推定問題は複数個の分散の同時推定問題に縮約されることが言えます。したがって,この不変推定量を利用する推定問題を考える限り,複数個の分散に関する推定手法の改良を考えれば良いことになります。実際に,分散の改良型推定量を利用することによって,新たな共分散行列の推定量を導出しました。
     他方,共分散推定量の推定問題は複数個の平均ベクトルと分散の同時推定問題に分解できることもわかりました。この結果,平均ベクトルと分散の改良型推定量を使って,新しい共分散行列の推定量を構成することにも成功しています。
  • その他
    筋肉のイオンチャネル疾患の発症機序の解析を目的とした,筋細胞膜の電気活動を記述するHodgkin-Huxley方程式の振る舞いに関する非線形力学系の理論と数値計算手法を用いた研究や,数理モデルを用いた様々な生体機能の数理生物学的な研究なども行っています。

代表論文

  1. Tsukuma H. Estimation of a high-dimensional covariance matrix with the Stein loss, Journal of Multivariate Analysis 2016; 148: 1-17.
  2. Tsukuma H. Minimax estimation of a normal covariance matrix with the partial Iwasawa decomposition, Journal of Multivariate Analysis 2016; 145: 190-207.
  3. Tsukuma H, Kubokawa T. Unified improvements in estimation of a normal covariance matrix in high and low dimensions, Journal of Multivariate Analysis 2016; 143: 233-248.
  4. Tsukuma H, Kubokawa T. Estimation of the mean vector in a singular multivariate normal distribution, Journal of Multivariate Analysis 2015; 140: 245-258.
  5. Tsukuma H, Kubokawa T. A unified approach to estimating a normal mean matrix in high and low dimensions, Journal of Multivariate Analysis 2015; 139: 312-328.
  6. Tsukuma H, Kubokawa T. Minimaxity in estimation of restricted and non-restricted scale parameter matrices, Annals of the Institute of Statistical Mathematics 2015; 67: 261-285.
  7. Tsukuma H. Improvement on the best invariant estimators of the normal covariance and precision matrices via a lower triangular subgroup, Journal of the Japan Statistical Society 2014; 44: 195-218.
  8. Tsukuma H. Bayesian estimation of a bounded precision matrix, Journal of Multivariate Analysis 2014; 127: 160-172.
  9. Tsukuma H. Minimax covariance estimation using commutator subgroup of lower triangular matrices, Journal of Multivariate Analysis 2014; 124: 333-344.

教育の概要

学部

領域:医用理工学1
サブ領域:医用理工学1-①,ユニット:数理情報学I
(対象学年:1年,授業時期:I期,講義時限数:23,分類:講義)
サブ領域:医用理工学1-②,ユニット:数理情報学II
(対象学年:1年,授業時期:II期,講義時限数:7,分類:講義)
サブ領域:医用理工学1実習,ユニット:医用理工学1実習
(対象学年:1年,授業時期:II期,講義時限数:3,分類:実習)

 科学的根拠に基づいた医学・医療を行うためには,いかに情報(データ)を処理し利用するかが重要になります。数理情報学では,膨大な情報の背後に隠された構造を的確に把握するための「道具」となる微分積分学や確率論,記述統計学,推測統計学の基礎について学びます。

大学院

医学専攻博士課程
共通選択 環境社会医学コース(1単位)(分担)

その他

学会活動

所属学会:日本数学会,日本統計学会,応用統計学会
お問い合わせ先

東邦大学 医学部

〒143-8540
東京都大田区大森西 5-21-16
TEL:03-3762-4151