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ハワイ大学研究留学レポート Vol.1【理学部 齋藤敦子】

ハワイ大学研究留学レポート Vol.1【理学部 齋藤敦子】

【フィールド】アメリカ合衆国ハワイ

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ハワイ大学マノア校キャンパス風景

▲ハワイ大学マノア校。ワイキキビーチから山側に少し離れた場所にあります。
▲緑あふれる広大なキャンパスには、2万人以上の学生が学んでいます。
▲学内に植えられた椰子の木に、南国が感じられます。また、彩色豊かな花や鳥も多く見られます。
私たちは、日々数え切れないほど多くの化学物質を環境中に放出しています。しかし、それらの環境中での挙動(分解・循環・濃縮など)は、現在ほとんど分かっていません。これまで私は、水・土壌・生物など環境試料中の微量汚染物質の前処理・分析法の開発を行ってきました。多くの夾雑(きょうざつ)成分を含む環境試料から、極微量の目的成分を正確に定量することは非常に難しいのですが、このような定量を行うことは、汚染物質が環境や生態系に与える影響やその予防策についても考えるためにも重要です。

現在私は、平成23年10月1日より平成24年9月30日まで1年間の予定で、ハワイ大学マノア校に研究留学させていただいております。本校は、オアフ島ワイキキビーチより山側に徒歩1時間ほどの場所に位置し、緑あふれる広大なキャンパスには、学部・大学院生合わせて2万人以上の国際色豊かな学生が学んでいます。また、第二外国語や海洋分野の研究が活発で、全米でも屈指の評価を得ています。オアフ島の面積は東京都の約2/3程度であり、車を使用すれば1日で沿岸部を一周できることは、沿岸部の調査・研究を行うにあたり大変魅力的なことです。

ハワイ大学では、School of Ocean and Earth Science and TechnologyのRobert Bidigare先生、Henry Trapido-Rosenthal先生の研究グループと共に、オアフ島沿岸部における多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbons: PAHs(注1))の濃度や分布についての調査を行っています。工場からの煙や自動車の排ガスなどから、大気中に放出されるPAHsは、降雨により河川や地表面に降下し、最終的には河口付近沿岸部の底質に分布します。その後、底生生物(底質に生息する生物)や微生物の働きで、数か月から数年の期間を経て徐々に分解されることが知られています。PAHsの中でもベンゾ[a]ピレンは、強い発癌性を示すことから、環境中での濃度の調査が特に求められています。私たちは現在までに、主要な沿岸部を周り、底質の状態や生物の分布状況等の基礎的データを収集してきました。今後は、採取した底質試料の前処理を行い、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS) を用いてPAHs濃度の定量を行っていく予定です。

日本を離れ、海外から母国を思うとき、日本社会の秩序正しさや日本人の勤勉さ等、これまで当たり前と考えていた事柄が、世界に誇れる特質であることに気づかされます。一方ハワイには、ゆったりとした気持ちで生活を楽しむ文化があり、個々が仕事と同様に家庭での生 活をとても大切にしている姿は魅力的です。

今回の留学を通して多くの経験をし、研究において、また生活においても視野を広げることが出来ればと思っております。最後に、このような機会をいただけましたことに、深く感謝申し上げます。

注1:PAHsは、ベンゼン環を3つ以上持つ芳香族炭化水素の総称で、化石燃料の燃焼などにより日常的に大気中に放出される有機環境汚染物質の1つ。
▲Pacific Ocean Science & Technology Building。この建物の地下に、分析実験室があります。
▲PAHsの分析に使用するGC/MS。
▲ハワイ大学の研究者の方と共に。皆とても暖かく親切です。
▲Henry先生と底質試料のサンプリング。写真は全米で最も美しいと評価されたこともあるKailua Beach。白くきめ細かい砂と鮮やかな青い海がとても美しいです。
▲ハワイ大学海洋研究所のあるCoconut Island。宿泊施設もあり、長期で泊まりながら研究を行う研究者もいます。
▲ハワイでは雨上がりに、美しい虹が良く見られます。写真の様な二重の虹が見られた日は、少し幸せな気分になります。

プロフィール

齋藤 敦子(さいとう・あつこ)

1970年大阪府生まれ。博士(理学)。東邦大学理学部生物分子科学科卒業後、東邦大学大学院理学研究科課程に進学し、分光分析、分子軌道法計算、生物培養、生体分子の単離精製など、自然現象を生物及び化学的分野双方から探究するための手法を学ぶ。国立国際医療センター研究所研究員、千葉大学工学部博士研究員、日本大学生産工学部博士研究員を経て、2005年10月より東邦大学理学部生命圏環境科学科講師。現在の専門は環境分析。

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