「今はあつくてたまりませんから」—額田豊の書簡より

厳しい暑さが続いていますね。日中の気温が37度というニュースを見かけて外に出るのが怖くなりました。資料室も温湿度管理がなかなか難しい時期です。今回は、こんな時期にピッタリの「暑い」つながりの資料でお送りしようと思います。

本学の創立者の一人である額田豊は、東京帝国大学医科大学を卒業した後の1907年よりドイツへ2年間留学しました。豊は神戸から出発した日本郵船の備後丸に乗り、欧州航路でドイツへと向かいました。出発した直後より大変多くの書簡を家族宛てに送っており、資料室で所蔵している弟の額田晉の遺品の中に、こうした書簡が多く含まれています。

途中の寄港地は上海、香港、シンガポール、マラッカ、ペナン、コロンボ、スエズ、ポート・サイード、マルセイユで、このマルセイユから陸路でパリを経由してドイツ入りしたことが推定できます。

途中、豊は香港のあたりで家族に宛てて以下のような文章を書いています。
「香港はずっと南で大変あついです。今日などは単衣です。またこれから四日程南に(シンガポールと申すところ)行きます。大変あついそうです。」

この書簡が書かれたのは3月20日、数日前に寄港した上海では雪がちらついていたとも言っています。船上ではこうした急激な気候の変化にも順応しなければならなかったことが分かります。

他にも、寄港地それぞれの様子や船の中での生活についても触れられており、仲が良くなった人の名前や、毎日3食とも西洋料理なので漬物とお茶漬けが食べたくなったことなどが綴られています。調べてみると分かりますが、当時から日本郵船の船内で出される料理は大変レベルが高いことで知られていました。羨ましいですね。

とはいえ、サービスの行き届いた船であったとしても、現代のように冷房は無かったはずです。南へ向かうにつれて蒸し暑さが増したのではないかと想像できます。いつの時代も暑い日はなかなか頭が働かないですよね。ちなみにこの書簡はこのように締めくくられています。「まだいくらも申し上げたい事もありますがまたこの次とします。今はあつくてたまりませんから。」皆さまも暑さに気をつけてお過ごしください。

投稿者:スタッフ

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