アーカイブズとしての資料室

先週6月8日に全国大学史資料協議会東日本部会の総会に参加させていただきました。
会場は千葉県の淑徳大学さんで、大学としてのアーカイブズ事業は7年前(2010年)にスタートしたばかりとのことでした。
展示施設のある建物はキャンパス唯一の創立当初からのもので、実にユニークな外観をした円形の建物は仏教の世界観を表わしているとのことです。(写真参照)
淑徳大学の建学の精神は大乗仏教の「利他共生」という概念からきているそうで、
この「利他共生」を英語に訳すと、“together with him ”であり、この共生とは、人間と人間の共生にとどまるのではなく、人間と自然との、およそ「いのち」あるものすべてとの共生という意味だそうです。

本資料室のスタートも淑徳大学さんのアーカイブズ事業と同じく2010年で、展示空間が唯一の創立当初からの建物内にあることも同じです。
ここまでは偶然の範疇かもしれませんが、もっとも驚いたことは建学の精神が実によく似ているという点でした。
本学の創立者の一人である額田晉は医療者として自然科学的な視点から、本学のスローガンともなった『自然・生命・人間』を著しましたが、こちらは「生きとし生けるものすべてに向けられた、心ある科学」の実践を目指して今日まで続いています。
仏教と自然科学、全く異なった視点からスタートした両者ですが目指すべき理想は非常によく似ていて、共通点も多いように感じます。
教育者として次世代を育てるという精神がいかに普遍的なものであるかということを示しているように感じられました。

今回淑徳大学さんを見学させていただき本当に感心したのは資料が非常に丁寧に整理・保管されていた点です。
レファレンス等の対応も迅速に行える体制が整っているとの印象を受けました。
展示・保管のために建てられた建物ではないため、決して恵まれた環境とはいえないという点は本資料室と同じです。
同じく制約はありますが、本資料室はまだまだ整理が行き届いていない部分も多いため、大いに刺激を受けました。
理想を持つことも大事ですが、まずは今現在の環境において出来ることと出来ないことを見極めをしっかり行うことが本当に肝要であると気づかされました。
本資料室ももちろんアーカイブズのための機関であります。
資料室としての歴史はまだまだ浅いものの、次世代に歴史の重みや建学の精神を伝えていけるよう努力してまいります。

投稿者:スタッフ

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