理学部生命圏環境科学科

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「環境先進国」ドイツで田舎暮らし シリーズII(2016年10月)

生命圏環境科学科の鏡味です。2016年4月からドイツのベルリンから北80kmに位置する研究所、ライプニッツ淡水生態学・内水面漁業研究所(IGB-Berlin)、に研究滞在させていただいております。このドイツでの研究生活の様子をシリーズでお届けします。

研究所の桟橋からみたStechlinsee。中央にLake Laboratoryがあります。
研究所の桟橋からみたStechlinsee。中央にLake Laboratoryがあります。

「泳ぐ」カビの正体をさぐる:多様性と機能の解明

 今回の国際共同研究では、ドイツやオランダ、スウェーデンなどの研究者達と一緒に、DNA解析や顕微鏡観察、培養実験、化学分析を併用し、世界中の湖沼に出現するツボカビという菌類(写真)の多様性と物質循環における役割の解明を目指しています。
 海洋や湖沼の植物プランクトは、ウィルスやバクテリア(細菌類)、菌類、原生生物など様々な生物が寄生されます。なかでもツボカビ門に属する菌類は湖沼生態系において重要である事が明らかになりつつあります(写真)。植物プランクトンはツボカビに寄生されるとほぼ確実に死亡するため、植物プランクトンの個体群動態へ多大な影響を与えます。その死滅量は時として膨大で、水圏の物質循環を改変することもあります。
 いつ、どのような湖沼において、植物プランクトンへの菌類による感染症が蔓延するのかは、いまだ定かではありません。近年、世界中で様々な感染症が蔓延拡大しており、地球温暖化など環境変動と密接な関わりの可能性も指摘されています。植物プランクトンへの菌類による感染症の動態にも、地球温暖化に伴う水温上昇や富栄養化による栄養塩濃度や植物プランクトン密度の上昇が影響する事が予想されています。しかし、詳細なデータが不足しているため、感染症が本当に増加しているのか定かではなく、環境変動と植物プランクトンの感染症との関係性は明らかではありません。
Lake Laboratoryの隔離水界の1つ。中央にある桟橋から採水ができます。
Lake Laboratoryの隔離水界の1つ。中央にある桟橋から採水ができます。

 滞在している研究所(IGB-Berlin)にはLake Laboratoryと呼ばれる巨大な実験湖沼施設があります(写真)。栄養塩濃度や光強度、水温、有機物量、魚の量などを操作し、プランクトンや水質の変化を実験的に調べることができます。環境変動との関わりも操作実験で調べていきたいと考えています。これらの研究により、目に見えない微生物の生態系における役割が明らかになるだけでなく、湖の水質管理や、感染症の蔓延の予測など、人間生活にも関わる成果となると期待しています。

Stechlinseeの湖水(2016.6.15)。4種類の植物プランクトン全てがツボカビに寄生されています。
Stechlinseeの湖水(2016.6.15)。4種類の植物プランクトン全てがツボカビに寄生されています。

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