理学部生命圏環境科学科

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初めての国際学会 ISPAC

柳下 真由子 (4年 / 大島研究室)

ナフトアントロンの蛍光増強

ナフトアントロンの蛍光増強01

 私の研究対象であるナフトアントロンは黄色い粉末状の芳香族化合物(ベンゼン環が幾つも重なった化合物)で、これがニトロ化するとディーゼル排ガスにも含まれている変異原性物質という発ガンの可能性を持った物質と類似したものになります。このニトロ化ナフトアントロンは「蛍光」が弱いことから検出するのが大変困難な物質であり、そこで私はこの物質の蛍光を使った検出方法を確立することでの大気汚染対策を研究の目標としています。

 ここまで読んで、蛍光とは?と思われた読者も多いと思います。蛍光という言葉は「蛍光灯」や「蛍光ペン」など身近でもよく耳にする言葉ですが、蛍光発現の原理について説明しておきます。
 一言で“蛍光”を説明すると、“電子の遷移に伴う発光”です。電子は、エネルギー的に安定な状態(基底状態と言います)とエネルギーが高く不安定な状態(励起状態と言います)の間を、光を吸収したり、放出したりして遷移します。基底状態から励起状態へ光を吸収して励起された電子はエネルギー的に安定な基底状態へ光を放出して戻ろうとします。そこで放出された光が蛍光です。
ナフトアントロンの蛍光増強02

 その蛍光が弱いナフトアントロンやニトロ化ナフトアントロンの検出を目的として、私たちはまずナフトアントロンについて研究を進めています。弱い蛍光を増強させ、検出する方法としてナフトアントロンの溶液を脱気(溶液中の空気を抜くこと)し、蛍光強度を測定する前に光を予め照射する、という方法が今までの先輩方の研究で明らかになっています。
 私は2年生のときからどのようにしたらこの物質の蛍光強度がより高くなるか、種々の条件の下で調べ、その結果として予め当てる光は強力なものでなければならないということを発見しました。この発見によって、今までの研究で再現性が低かったこの研究の再現性を高めることができ、その結果を2009年3月に開催された日本化学会でポスター発表しました。その日本化学会の帰り道で大島先生から、ISPACのお話を伺ったのです。ISPAC(International Symposium on Polycyclic Aromatic Compounds)とは芳香族化合物(ベンゼン環がいくつも連なった化合物)全般を研究対象としている研究者の国際学会です。

国際学会 ISPACへ

 私の父は研究者で、学会というといい格好をしていく場所、そしてお土産を買ってきてもらえるチャンスという認識でしたが、いざ自分が国際学会に参加し発表するという事になると不安でした。さらに、ポスター発表のつもりで応募したのですが、口頭発表に充てられてしまいました。一瞬ためらいましたが、大島先生から「せっかくの機会だからやってみたら?」という一言も後押しとなって、口頭発表する決意をしました。それからは、大島先生にたくさんのアドバイスを頂いて学会へ提出する論文や、口頭発表をするためのスライドを一生懸命作成しました。その準備はアメリカへ出発する前日まで続きました。
国際学会 ISPACへ01

 いよいよISPACへ出発する日がやって来ました。家族全員が成田空港まで見送りに来てくれ、「いざ出陣!」という感じでした。成田空港から13時間ほどかけてワシントンの空港へ順調に飛んだ私たちでしたが、ここでハプニングが起きました。学会の開催地まではワシントンから乗り換え、さらに2時間ほど国内線に乗るというところで、乗り換え時間が短すぎた為に空港で一泊することになってしまい予定の日のうちにチャールストンに着くことが出来なくなってしまいました。
 私の発表は到着予定日の次の日だった為、焦ってしまいましたが、「なんとかなる!」と言い聞かせ、次のフライトまで空港で映画"ターミナル"のように一夜明かすことになりました。

国際学会 ISPACへ02

 翌早朝、ワシントンからの飛行機で開催地に近い空港に到着し、そこから学会会場までタクシーを飛ばして、ホッとする間もなく私の発表の時間になりました。余計なことを考える時間がなかった為か、変に緊張しすぎることなく発表することが出来ました。質問をしてくださった先生とも、研究について様々な議論をすることが出来ました。
 国際学会"ISPAC"に参加して、やはり英語の壁は厚かったものの、自ら話しかけ一生懸命伝えようと思えば相手は理解しようとしてくれるということを感じました。また、国の異なる人々といろいろな話ができ、とても楽しかったです。

 「学会」と言うと固いイメージがあると思います。けれども、自分の研究成果を発表できる場であり、他の人に意見を求めることの出来る格好の場です。私の参加した今回の学会では、世界のさまざまな国の人が自分と同じものを研究対象として、いろいろな観点から研究していることを改めて知り、今後の研究の励みになりました。

最後に

最後に

 この研究で、最終的に私たちはディーゼル排ガス中のニトロ化ナフトアントロンなどといった変異原性物質をより簡便に検出することを目標としており、これらのことが可能になれば不用意にそれらを曝露してしまうことも減るだろうし、現在よりも排出量を抑えることが出来ると考えています。

 今回のISPAC珍道中では、日本で応援してくださっていた大島先生始め、学会中いつも励ましてくださった齋藤先生、小野里先輩、冨永先輩、そしていつも支えてくれている家族、といったさまざまな方にお世話になりました。

この場を借りて心よりお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。

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