理学部化学科

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おわりに

金の周りの元素でも相対論効果はみられる

金がハロゲン的な側面を見せるということは,とても示唆深いことです。というのも相対論効果により6s軌道が安定化して,[Xe] 4f14 5d10 6s2の電子配置があたかも閉殻−貴ガスと同じような状態−であるかのようになっているからです。水銀が液体であるのも,また水銀に続く元素のタリウムや鉛,ビスマスなどで6s電子が化学的に不活性となる現象(低酸化数の化合物が安定化する現象で,無機化学では不活性電子対効果とよんでいます)も,鉛が軟らかいのも先に述べた相対論効果によって理解することができます。図7は相対論効果の影響がどの程度かを見積もった図です。金だけでなく,その周辺の白金族元素や水銀,タリウム以降の典型元素も影響がありそうなことがわかるでしょう。
図7 第6周期の元素の6s軌道に対する相対論効果の大きさの見積もり値を原子番号に対して示した図。縦軸は6s軌道の大きさ<r6s>が相対論効果を考慮する(R)と,考慮しないとき(NR)の大きさと比べてどのくらい収縮するかを計算したもの。データはJ. P. Desclaux, Atom. Data Nucl. Data Tables, 1973, 12, 311による。
ここでお話した相対論効果は理論化学の専門家の間では40年以上も前から話題になっていたことですが,広く認識されるようになったのは比較的最近のことで,無機化学の教科書で相対論効果のことを取り上げているのは国外を見てもわずかです。相対論効果についてもっと知りたい方は,細矢治夫先生の解説をご覧下さい。
参考文献
  1. 細矢治夫,化学,60巻(12月号),p.32(2005年):アインシュタインに捧げる金と水銀の話
  2. 細矢治夫,化学と教育,60巻,p. 340(2012年):金と水銀の異常性をどう理解するか 第6周期元素は相対論とf電子の影響から逃れられない

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