理学部化学科

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新しいタイプの相転移の発見

分子が拓く物質科学の世界

持田智行助教授

食塩といえば「イオン性結晶」の代表例だ。食塩は、1価のイオンのNa+とCl-が集まってできた固体(1価固体)である。一方で、2価のイオンからできた固体も多数存在する。例えば、Mg2+とO2-からなるマグネシア(MgO)は、代表的な2価固体である。イオン性物質のイオンの電荷は物質に固有のもので、変化しないのが”常識”だ。

常識を覆す化合物

常識を覆す化合物

ところが最近、持田助教授はこの”常識”を覆す新しい物質を見つけ出した。温度が変わると、イオンの電荷が変わるのだ。持田助教授が発見したのは、図に示したような二つの有機分子を組み合わせて作ったイオン性の結晶、この結晶は、室温では左側の分子から右側の分子に電子が1個だけ移動して、食塩のような1 価の陽イオンと陰イオンからできた結晶となっている。ところが-170℃に冷却すると、電荷の移動が起こってマグネシアのような2価の陽イオンと陰イオンからできた結晶へと変化する(相転移)のだ。おもしろいことに、冷却によっていったん2価のイオン性結晶となっても、室温に温めるとまた元に戻ってしまう。つまり、1価固体と2価固体が、温度によって相互に転換できることがわかったのである。

普遍的な価値

こうした常識はずれの現象が、どのような意味を持つのだろうか。残念ながら、さしあたってはテクノロジーとしての実用的な応用はなさそうである。しかし、未来の物質設計の基本概念として、評価が高い。発見された現象はこれまでに知られていなかった原理によって起こっていて、その概念に普遍的な価値があるからだ。新しい現象や概念の発見と提示、これこそが理学としての研究の真髄であり、楽しみである。

不断の研究の成果

研究

持田助教授の研究室では、学部4年の卒業研究の学生や大学院生が主体となって、様々な有機分子と金属が組み合わさった分子(有機金属錯体とよばれる化合物群)の開発を進めてきた。今回の物質もその研究成果の一環であり、発見に至るまでは多くの地道な努力があったことを忘れてはならない。優れた研究成果は、鋭い洞察と不断の実験に基づいてこそ、あげられるものなのである。

さらに進む探究

いま化学科や物理学科の研究室との共同研究により、この相転移の原理が解明されようとしている。今年度、新たに設置されたハイテクリサーチセンター*が、その研究拠点となっている。そして早くも、この現象は1価固体と2価固体のごく単純なエネルギーバランスで決まっていることがわかってきた。持田助教授の研究室では、新たな可能性を秘めた未来材料の開発が、いまも進行中である。
ハイテクリサーチセンター
正式名称は「東邦大学 複合物性研究センター」。プロジェクト名は「新規多機能有機素材の創成と評価」。文部科学省に採択された研究拠点であり、物理学科と化学科のメンバーが中心となって、将来のデバイス材料の可能性を秘めた有機材料の基礎研究を行っている。化学科からは5人の教員が参画していて、持田助教授はそのスタッフの一人。

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