理学部生物分子科学科

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葉緑体 (chloroplast)

 葉緑体は、植物の細胞に含まれる色素体が分化した、光合成を行う細胞小器官である。半自立的な小器官で、新規に形成されるのではなく色素体の二分裂によってのみ数を増やす。細胞当りの数は、1個(ゼニゴケ)のものから、数万個(シャジクモ)など、種により大きく異なる。タバコでは葉の成長の初期に、葉緑体に分化する前のプロプラスチドとよばれる時期に盛んに分裂する。
 陸上植物、たとえばホウレンソウやタバコの葉肉細胞を電子顕微鏡で観察すると、葉緑体は包膜とよばれる二重の膜に包まれている。全体の形は薄い凸レンズや厚めの円盤によくたとえられる。細胞壁側にはり付いているのは、細胞壁を通って拡散してくるCO2を効率よく取り込むために必要ことと考えられている。
 葉緑体の内部は扁平な袋(チラコイド)で構成されている。チラコイド膜の厚さは6~7 nmである。この膜には光合成のためのアンテナタンパク質複合体・光化学系Ⅰ複合体・光化学系Ⅱ複合体・電子伝達成分、そしてATP合成酵素などが組み込まれている。 基本的には生体膜なので流動モザイクモデルでよいが、グラナとストロマの部分で含まれる複合体は大きく異なっている。光化学反応によって駆動される電子伝達反応によって、袋の外側でNADPの還元がおこる。同時にチラコイドの外側にATPが合成される。 酸素発生系はチラコイドの内側にある。袋の内部の幅は10~30 nmと狭い。
 電子顕微鏡の像で、チラコイドとチラコイドの間のうすく染色される部分はストロマとよばれる。ストロマには、カルビン-ベンソン回路(CO2固定反応)に関わる全酵素が含まれている。デンプン粒が観察されることもある。
 葉緑体では豊富なエネルギー(ATPと還元力)を用いて色素合成・脂肪酸合成・亜硝酸還元・アミノ酸合成などさまざまな合成反応が行われている。ストロマにも独自のDNA(核様体)とリボソームが存在しタンパク質を合成する。しかし独自の遺伝子の数は藍藻の遺伝子のおよそ10%にすぎず、ほとんどは核に移行している。葉緑体で進行する反応に関わる多くの酵素の遺伝子は核に存在する。
 葉緑体は必ずクロロフィルaとβ-カロテンを含む。緑藻と緑色植物の葉緑体は、さらにクロロフィルbをもつため緑色に見える。キサントフィルとしてルテイン・ビオラキサンチン・ネオキサンチンを含んでいる。紅藻はクロロフィルa以外のクロロフィルを持たないが、フィコビリタンパク質によって紅色にみえる。 褐藻はクロロフィルcを含み,フコキサンチン-クロロフィルa/cタンパク質複合体を含むため褐色に見える。コンブを熱湯にいれると鮮やかな緑色になるが、これはフコキサンチン-クロロフィルa/cタンパク質が変性したためである。植物体の外見の色調は、多量に含まれる色素で決まるだけでなく、少量含まれる色素によっても変化するし、植物体の表面に含まれる物質や毛などの構造が複雑に関係して変わる。

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