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プレスリリース          発行No.266  平成23年10月5日

「次世代を担う創薬・医療薬理シンポジウム 2011」
薬学部6年生 優秀ポスター賞 受賞
〜心臓のミトコンドリアを用いたmPTP開閉観察系の確立〜

 

 東邦大学薬学部6年生の金澤温子さんが、2011年8月31日に行われた「次世代を担う創薬・医療薬理シンポジウム2011」(主催:日本薬学会薬理系薬学部会)においてポスター発表した「Mitochondrial Permeability Transition Pore (mPTP) 開閉観察系の構築」が優秀ポスター賞を受賞しました。金澤さんが行った研究、それを理解しやすく伝えるために制作されたポスターおよびプレゼンテーションが総合的に評価された結果です。

 

 

 心臓は一生の間、絶えず拍動し続けて血液を全身に循環させています。その心臓の細胞(心筋細胞)の収縮を引き起こしているのは、細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)であり、Ca2+濃度の増加・減少に伴い心臓は収縮・弛緩を繰り返しています。そのため Ca2+が心臓を動かしているとも言われており、その濃度は心臓に様々な影響を与えます。例えば不整脈は心臓の拍動が乱れる疾患ですが、その原因の一つが心筋細胞内で局所的に起きるCa2+濃度の異常な高まりだと考えられています。また、心臓は休むことなく働き続ける臓器であるため、そのエネルギー需要は高く、効率的なエネルギー(ATP)生産を行う細胞内小器官であるミトコンドリアは重要な役割を担っています。

 細胞が虚血(酸欠)状態になり細胞内のCa2+濃度が異常に上昇すると、ミトコンドリアは一時的な貯蔵庫としてCa2+を取り込み、緩やかに排出することで細胞内のCa2+濃度を一定に保つ働きをもっています。しかし、ミトコンドリア内のCa2+濃度が上昇しすぎると、ミトコンドリア膜にあるmPTP(mitochondrial Permeability Transition Pore:膜透過性遷移孔)と呼ばれる小さな孔が一時的に開きます。これは、異常なCa2+濃度の上昇を防いでいるのかもしれません。更に、Ca2+濃度の上昇が持続すると、長期的にmPTPが開いてしまい、Ca2+だけでなく内容物まで流失し、ミトコンドリアの機能障害、それに伴う細胞機能障害を引き起こすと考えられています。そのため、mPTP開口の仕組みと意味を理解し、さらに開閉をコントロールできるようになると、心機能保護に繋がることが考えられます。

 

 

 

 しかし、詳細については不明な点が多く残されています。そこで金澤さんの研究では、蛍光を発する物質(calcein /蛍光プローブ)をミトコンドリアに取り込ませ、画像解析することで、mPTPの開閉を観察する方法を確立しました。また、確立された方法を利用して、ミトコンドリア内のCa2+濃度の変化がmPTP開閉に与える影響を調べました。その結果、ミトコンドリアへのCa2+の流入を阻害する薬剤(ruthenium red /Ca2+unipoter阻害剤)を使用した時は、ミトコンドリア内のCa2+の上昇が抑えられたため、mPTPが開きにくくなったことが示唆されました。一方、Ca2+のミトコンドリアからの排出を阻害する薬剤(diltiazem /ミトコンドリアNCX阻害剤)を使用したときは、ミトコンドリア内のCa2+が上昇したためmPTPが開きやすくなったことが示唆されました。

 これらの知見は、心機能に関する新たな治療薬のみならず、ミトコンドリアが関連する疾患に対する治療薬の開発に応用されることが期待されます。金澤さんが所属する薬物学研究室(田中光 教授)では、これらの基礎的研究で得られた知見を応用した新しい治療薬の開発を究極の目標としています。

 

【参考】 東邦大学メディアネットセンターバーチャルラボラトリー内ウェブサイト
『心筋 ―心臓は電気とカルシウムイオンで動いている!―』
http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/shinkin/

 

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