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プレスリリース          発行No.046 平成21年4月20日

超伝導と磁性の奇妙な関係
〜磁場誘起超伝導体 λBETS2FeCl4〜

λBETS2FeCl

 

 「磁場誘起超伝導体λBETS2FeCl4にある鉄の電子が、実際は極低温まで常磁性状態にあること、また強磁場下で超伝導を担う有機分子BETSの電子自体が弱磁場下の反強磁性秩序も担っている」ことを、東邦大学大学院理学研究科 物性物理学教室 西尾 豊 教授、秋葉 宙 大学院生らの研究グループが明らかにしました。この研究論文が、日本物理学会 欧文誌「Journal of the Physical Society of Japan」 2009年3月号に掲載され、注目論文(Paper of Editors’ Choice)に選ばれました。

 

 超伝導に磁場をかけたり、磁性(磁石)をもつ不純物を混入させると超伝導は壊れてしまうため、超伝導と磁性の共存は難しいとされてきました。しかし、近年 強い磁場をかけてはじめて超伝導状態になる物質(=磁場誘起超伝導体λBETS2FeCl4)が発見されました。これは、この物質のもつ性質が学術的に興味深いことはもちろんのこと、より強磁場を必要とするところ(MRIなどの医療機器やリニアモーターカー開発など)で実用するといった見地からも重要であると考えられています。

 

 λBETS2FeCl4は、磁場がない状況において常温では金属(常磁性)であるが、低温(8K(-265℃)以下)で絶縁体(反強磁性状態)になります。また、温度を下げたときに最も安定する状態(基底状態)でこの物質に外部から磁場(以下、外部磁場)をかけていくと金属(常磁性状態)になり、さらに強く磁場をかけて30テスラ(地磁気の約100万倍)程度になると超伝導状態となります。本来、磁場をかけると超伝導が破壊されるはずなのに、むしろ超伝導になるのは、λBETS2FeCl4に含まれるFeのもつ磁場が外部磁場を打ち消すことによって、λBETS2FeCl4超伝導部への磁場の侵入を防いでいるためです。

 

 

 本研究では、この外部磁場を防ぐ機構が従来考えられていた機構と異なっていたことを明らかにしました。λBETS2FeCl4に含まれるFeが“反強磁性”(隣り合う磁石が反対向きに並ぶ状態)によって、外部磁場を打ち消していると考えられてきました。しかし、実際は、このFeが“常磁性”(磁場がない状況では磁石の向きがバラバラで、磁場があるとその向きと同じ向きになる)であることで外部磁場を打ち消していたのです。すなわち、より外部磁場を打ち消しやすい状況となっていたことになります。このようなλBETS2FeCl4の基底状態にみられる奇妙な現象は、この物質に現れる特異な伝導状態の理解のみならず、超伝導と磁性の共存が難しいといった競合関係に新たな知見を与えるものとして注目されています。

 物性物理学教室では、「なぜ超伝導になるはずの伝導電子がここでは絶縁化して磁性まで担うのか」「伝導電子の物理的性質をここまで替えてしまうFeの本当の役割は何なのか」など本成果から新たにでてきた課題の解明に取り組んでいく予定です。

 

〈論文タイトル〉 
Mysterious Paramagnetic States of Fe 3d Spin in Antiferromagnetic Insulator of λ-BETS2FeCl4 System
〈  著 者  〉
Hiroshi Akiba, Shinto Nakano, Yutaka Nishio, Koji Kajita, Biao Zhou, Akiko Kobayashi, and Hayao Kobayashi

 

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