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プレスリリース 発行No.798 平成29年7月25日

- 心臓病のケアと予防のポイント -
~ 突然死の6割は心臓病が原因 ~

 東邦大学医療センター大森病院循環器内科(大田区大森西6-11-1、主任教授:池田隆徳)では、虚血性心疾患、不整脈、高血圧、心筋症、心臓弁膜症、動脈疾患、静脈血栓症、先天性心疾患など、心臓と血管に関するすべての疾患の診療を行っています。

 心臓は、すべての生き物の生命活動の中枢となっている臓器です。そのため心臓病の多くは命にかかわる病気であるといえます。平成26年の国内死因別死亡数データでは、心臓病は全体の15.5%で、がんに次いで2番目に多い疾患です。当レポートでは、心臓病にならないためにどのようなケアや予防が必要かについてわかりやすくお伝えします。
  
 なお、狭心症や急性心筋梗塞に代表される虚血性心疾患や閉塞性動脈硬化症、または心房細動や心室頻拍などの不整脈のどちらにおいても、独立した部門で専門的な診療を行っている医療機関は全国的にも数が限られています。虚血性心疾患と不整脈の双方の専門的部門を開設して、高度な医療を提供している施設は、日本では当院のみとなっています(2015年3月現在)。

1.循環器疾患の検査

 循環器疾患には心臓の病気、血管の病気そして高血圧症の3つに大別されます。こうした病気を正しく診断し、治療方針を決めるには、何より正しい検査が不可欠です。循環器疾患が疑われる場合に行う検査として代表的なものは以下のとおりです。

●採血(血液検査)
 心筋への血流が阻害されている虚血状態や身体全体に血液を回すことができなくなる心不全状態を見極めるのに適しています。代表的な検査値としてはトロポニン-I、CK-MB、BNPなどがあります。

●胸部レントゲン(胸部X線)
 心臓や縦隔(じゅうかく:左右の肺に囲まれた胸部の器官の集まった部分)の大きさ、そして石灰化などの動脈硬化の有無などを確認するのに適しています。

●心電図(12誘導心電図)
 心臓に流れる微弱な電流を波形として記録したものです。中でも12方向から電流をとらえたものを12誘導心電図といい、不整脈、虚血性心疾患、心筋症、心肥大の診断に用います。

●心臓エコー(心臓超音波)
 心臓に超音波を発信し、返ってくるエコー(反射波)を受信して画像に映し出して、心臓の機能、厚み、大きさ、構造異常などを確認します。またこの検査によって、左室駆出(くしゅつ)率を測定することができます。左室駆出率とは、心臓の左心室の収縮力を示すもので、心臓の機能を示す値として最も活用され、予後指標として確立しています。

●ホルター心電図(24時間心電図)
 小型の測定装置を身につけることで日常生活中の心電図を記録することを目的としたもので、突然の不整脈など短時間の心電図検査では診断が難しい場合に用いられます。
 上記以外にも、心臓核医学検査、心臓CT検査、心臓MRI検査、特殊解析心電図検査などがあり、心臓病の精査目的で行われます。

2.突然死の原因の6割は心臓病

 発症から24時間以内に死亡することを「突然死」といいます。原因の6割以上を心筋梗塞や心筋症などの心臓病で占め、そのほとんどが心室で生じる致死的な不整脈に起因します。いわゆる「心臓突然死」は発症から1時間以内で死亡するケースが多く、日本では年間に約7万人いるといわれます。

 突然死は就寝中が最も多いといわれますが、入浴中や休息・休憩中にも発症するほか、スポーツ中のケースなどもあります。突然死は動脈硬化や高血圧といった生活習慣病とのかかわりが指摘されていますので、日常的なケアがとても重要です。「寒暖の激しい時の過度な運動を控える」、「飲酒直後の入浴や過度ないきみを避ける」、「適度な運動を心がける」そして「動脈硬化、血圧などを定期的に確認する」ことが突然死の予防につながることを覚えておきましょう。

 心肺停止状態で唯一有効な治療法は除細動器による電気ショックです。除細動を実施するまでの時間が1分遅れるごとに生存率が約10%低下するといわれることから、短時間でこれを実施することが極めて重要です。AED(自動体外式除細動器)が2004年7月から民間人でも使用できるようになりましたが、その使い方の理解だけでなく、心肺蘇生法を併せて身につけることが大切です。

3.心血管の「コモン疾患」とは?

 「コモン(common)疾患」というのは、文字通り「一般的な病気」のことを指します。高血圧、不整脈(特に心房細動)、高脂血症などがそれにあたりますが、この中で最も一般的なのは高血圧です。わが国では約4,300万人の患者さんがいるといわれ、高血圧に起因する死亡者も年間約10万人にのぼります。心血管死亡の約50%、脳卒中疾患の50%以上が、至適血圧(収縮期血圧が120mmHg未満で拡張期血圧が80mmHg未満)を超える血圧数値、すなわち高血圧に起因するといわれます。
 高血圧との因果関係が指摘されている食塩摂取量はわが国では「1日11グラム」程度と高い状態が続いています。国民の収縮期血圧平均値を10年間で4mmHg低下させれば、脳卒中死亡数が年間約1万人、虚血性心疾患死亡数が年間約5千人減少するというデータもあり、食生活の改善は高血圧対策の喫緊の課題です。

 ちなみに、血圧数値の降圧目標を達成している患者さんと、達成していない患者さんを比較した場合、約6割の患者さんは治療を受けていながらも降圧目標が未達成ともいわれ、心血管疾患による死亡リスクも、降圧目標を達成した患者さんを1.00とすると目標未達成の患者さんでは1.74というデータもあり、「血圧数値の降圧目標を達成する」ための日ごろの努力が大切です。

 携帯型自動血圧計を用いて測定した血圧を24時間血圧といいます。この血圧計によって、一日の血圧のリズムなどがわかり、夜間や早朝に高血圧になりやすい患者さんを特定することができます。健康な人だと就寝後から少しずつ低下しますが、夜間高血圧の人はこうした変化がみられず、就寝中も血圧が下がらなかったり、昼間より夜間に血圧が上昇したりします。こうした夜間高血圧の人は特に注意が必要です。

 高齢者が発症しやすいコモン疾患の一つに心房細動があり、高齢化の進展に伴いその患者数は増えるものと予測されています。健康な人の心臓は規則正しく一定のリズムで拍動しますが、心房細動では心房の拍動が速く不規則になります。酒呑みの人、高血圧の人、体格がいい人に起こりやすい病気です。現在、心房細動は脳卒中の主な原因として知られるようになっており、治療の必要性が叫ばれるようになっています。

 心房細動の治療法の一つに「カテーテルアブレーション」があります。体内の太い血管にカテーテルを入れて、心臓内部の不整脈の原因となっている部分(心筋)を焼灼(しょうしゃく)する(やけどをつくる)ものです。薬による治療に効果がない場合や根治を希望する場合の治療法として近年注目を集めています。

4.循環器疾患の予防のポイント

 心臓の病気の多くが生活習慣病に関係しています。つまり、その生活習慣病の治療を行うことにより多くの心筋梗塞、心房細動、脳梗塞が予防できるということです。中でも、高血圧は致死性疾患を合併するため、早期治療がとても大切です。血圧の降圧治療(投薬、塩分制限、体重減少)は、心房細動などの上室性不整脈だけではなく、心室性不整脈や突然死の予防にも効果があります。
 正しい食生活と適度な運動を心がけるとともに、自分の体重と血圧を日々把握し、その変化を記録しておくことは、生活習慣病の発症予防、あるいは進行の抑制に大切です。日頃の生活の中で継続して行うことをお勧めします。
以上

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