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プレスリリース 発行No.753 平成29年1月16日

- がんと診断されても自分らしく生活するためのヒント-
~ がん看護の現場からのレポート ~

 東邦大学医療センター佐倉病院看護部(佐倉市下志津、副院長・看護部長:髙橋初枝)では、患者さんやご家族にとって最も身近な存在として“心によりそう”ことを目指し、日々の看護を振り返り仲間と共有する「看護を語る会」や、「看護ケアを考える公開講座」などを行っています。

 当レポートでは、“がんと診断されても自分らしく生活するためのヒント”について、現場での知見・経験を通じ「がんと診断されたら」、「がんの治療が開始されたら」、「がんの辛い症状が出てきたら」の3つの観点からわかりやすくお伝えします。

 「がん」は、日本人の2人に1人がなるといわれています。部位別の患者数上位は、男性が1位:胃、2位:大腸、3位:肺、女性は1位:乳房、2位:大腸、3位:胃となっています。
また、その死亡者は、男性が1位:肺、2位:胃、3位:大腸、女性は1位:大腸、2位:肺、3位:胃となっています。(国立がん研究センターがん対策情報センター最新がん統計2016年より)
 遺伝に関連するがんは、がん全体では5%程度です。症状がないうちにがん検診を受け、がんを早期に発見することが大切です。

1.がんと診断されたら

 がんと診断されると「まさか自分ががんになるなんて」、「なにがいけなかったのだろう」など、一時的にダメージを受けて心と体のバランスが乱れることがあります。
 がんの辛さは人それぞれです。がんと診断されたら、がんの辛さを早期から和らげていくことが大切です。専門スタッフがご本人とご家族をサポートします。一人で抱え込まないようにしましょう。

 がん診療は多くの専門家によるチームで行われています。ご自身・ご家族もそのチームの一員であり、ご自身には、自身の治療や療養生活についての要望をしっかり伝えるという役割があります。つまり、ご自身の治療方針の決定に主体的に参加することが大切です。

 自分らしい治療を選択するためには「自分の病気を知ること」、「標準治療(科学的根拠に基づいた治療)を知ること」、「医師の説明を聞く際に、事前に質問を整理しておくこと」、「必要に応じて冷静な立場の人に一緒に聞いてもらうこと」、「最優先したいことなどを自己分析すること」、「セカンドオピニオンなど他の治療の選択肢を模索・確認すること」、「自分の希望を伝えること」といったプロセスを経て、治療の目的やゴールについて十分に検討することが大切であると言われています。(最良の医療を受けるためのコミュニケーション法監修:テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンター上野直人より一部抜粋)

2.がんの治療が開始されたら

 がんの主な治療法には「手術療法」、「放射線治療法」、及び「化学治療法」があります。
 手術療法では、がんの病巣を切除し、周辺組織やリンパ節に転移があれば一緒に取り除きます。
放射線治療法は、がんの病巣部に放射線を照射してがん細胞を死滅させる局所療法です。放射線療法は手術療法と比較して全身への侵襲が少ないため、高齢の方でも治療を行うことができます。
化学療法は、抗がん剤によってがん細胞を死滅させたり増殖を抑えたりする治療法です。化学療法には、吐き気・嘔吐、食欲不振、下痢、便秘、しびれ、脱毛、味覚障害などの副作用があります。

 副作用には、骨髄機能の抑制によって生じる貧血、白血球減少、血小板減少など、自覚症状がなく血液検査でわかるものもあります。副作用の発現時期は治療当日から数週間後まで幅広く、また、症状の程度にも差がありますので、それぞれの症状に応じたケアが必要です。
 副作用と上手に付き合っていくためには「患者さんご自身の自己管理」が大切であり、当院の外来化学療法室では通院中の「自己ノート」に日々の血圧や体温、そして気になる症状を記入することをお薦めしています。副作用の症状が強ければ薬の量を減らしたり、一時的に休薬することもできます。

3.がんの辛い症状が出てきたら

 がんの症状の中でも「痛み」が出てくると、患者さんのQOL(生活の質)に様々な影響がみられます。体の不調だけでなく、心にも負担が現れ、日常生活に支障が出ることがあります。しかしそのような時、痛みや心身の不調を我慢してはいけません。「痛みは主観的なもの」であり、がんの痛みは体験している本人にしかわからないため、我慢するのではなく、自分もチームの一員として“痛みの強さや状況を共有する”という役割を担っていただきたいのです。

 痛みを医療者に伝えるときは、「いつから」、「どこが」、「どのようなときに」、「どんなふうに」、「どのくらい」、「日常生活への影響は」、「痛み止めの効果は」など具体的に表現すると対処法を導きやすくなります。例えば、「朝から、下腹部に鈍い痛みがあります。動くと痛みが強くなります。一番強い時の痛みを10としたら、今の痛みは7ぐらいです。鎮痛剤が必要な痛さです。薬を使った後は2ぐらいになりました」などと伝え方を工夫してみましょう。

 がんの痛みに対しては「WHO方式がん疼痛(とうつう)治療法」があります。これは痛みの強さに従って段階的に痛み止めを使うもので、強い痛みにはモルヒネなどの医療用麻薬が使われます。医療用麻薬と聞くと怖いと思う方もいるかもしれませんが、医師の指示に従って使う限りは安全でとても効果的な薬です。
 このほか、痛みを和らげる因子として、「気持ちが落ち着くこと」、「楽しいと思えること」、「幸せを感じること」などがあり、こうしたことを生活の中に積極的に取り入れてみましょう。

 以上のように、がんと診断されても自分らしく生活するための方法には様々なものがあります。
悩みや痛みを抱えたり、我慢したりせず、医師・看護師をはじめとした医療チームに相談し、ご自身の状態や治療の状況を共有しながら、QOLを高めていただければと思います。

以上

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